不思議

おみくじの起源について調べてみた【元号もくじで決まった】

なぜ人はおみくじを引くのだろうか。当然、おみくじは非科学的である。無作為に選んだ紙に書かれた御神託が、そのまま自分の運命になるとは信じがたい。

しかし、凶を引いてしまうと、なんだか気になってしまう。だから樹木に結び付けて神仏の加護を祈ると言った風習も脈々と続いている。

そもそも、くじの結果を信じる、信じないではなく、自分への訓戒として受け取ればいいと考えている人も多いだろう。

では、一体こうした吉凶の占いは、いつどこからやってきたのだろうか。

おみくじの起源

おみくじの起源
【※江戸時代の元三大師百籤を紹介する本】

現在、神社やお寺などで親しまれるおみくじは「元三大師百籤(くじ)」が原型になっているとされる。これは第十八代天台座主・良源(通称:元三(がんざん)大師、912年~985年)が考案したもので百の漢詩によって吉凶を表したものである。

これを遡ると、中国から伝わった「天竺霊籤(てんじくれいせん)」に行き着くという。これは中国の南宋時代(1127年~1279年)のもので、平安時代か室町時代初期に日本に伝来した。

元三大師はこれを元に後世におみくじというものを残したのだろうか。

そして江戸時代、黒衣の宰相として知られる「慈眼(じげん)大師・天海」の枕元に元三大師が現れて「菩薩観音に祈念してもらった籤が信州の戸隠にある」というお告げを受けて、天海が百枚の籤を発見。

それぞれに番号をつけて現在の箱から棒を引くスタイルを確立したのだといわれる。これが「元三大師百籤」である。そして、大師への厄除け信仰と相まって全国へ広がっていったと推測される。

元号もくじ引きで決まった

おみくじの起源

そこで問題としたいのは、くじ引きというシステムである。おみくじに限らず「くじ」は古来、様々な人々が行ってきた極めて民主的かつ平和的解決策といえる。

例えば「明治」という元号は実は、くじ引きによって決まった。これは占いの理論と方法を説いた五経のひとつ「易経(えききょう)」のなかに登場する「聖人南面して天下聴き、明にむかいて治む」が由来である。

松平春獄(しゅんがく)が候補となるいくつかの元号を選び、慶応4年(明治元年)9月7日夜、宮中賢所(かしこどころ)において明治天皇がくじを引いて選んだ。

ちなみに「平成」は「史記」の「内平かに外成る」と「書経」の「地平かに天成る」が由来である。

くじ引き将軍の運命

おみくじの起源
【※足利義教】

また、くじ引き将軍と呼ばれる人物もいた。室町幕府六代将軍の足利義教(よしのり)である。応仁の乱が勃発する前、五代将軍の義量の急死に伴って誰を後継者とするかが問題となった。そこで石清水八幡宮においてくじ引きを行い、4名の候補者から将軍を選んだのである。

決まったのは僧侶となっていた足利義満の四男、「青蓮院門跡義圓」こと義教である。こうして還俗して征夷大将軍になった義教は、幕府の権威を復興させるために軍制改革などを断行していった。

幕府と対立していた鎌倉公方の足利持氏を滅ぼす(永享の乱)などの成果を挙げたが、最後は播磨・備前・美作(みまさか)の守護だった赤松満祐の下剋上(嘉吉の乱)によって暗殺されてしまう。

まさにくじ引きが、吉教の運命を決めてしまったのである。

民主的な解決方法

おみくじの起源

古来、様々な時代と場所で活躍してきた「くじ引き」という方法。多数決に比べて少数意見が通る余地があり、ある意味、民主的な解決方法といえるだろう。なぜなら、往々にして歴史で多数派の選択が間違っていることがあるからだ。近代では日本の太平洋戦争への突入がその例である。

日本の選挙制度でいえば小選挙区制は死標が多くなることが問題視される。多数決もくじ引きも、それぞれ長所と短所がある。

また、恒例の年末ジャンボ宝くじは1等が当たる確率は2000万分の1だというが、当たったからといって幸せになれるとも限らない。人生を狂わされたという話も多い。まさに、運命は神のみぞ知る、だ。

おみくじの正しい引き方がある?

おみくじの起源

江戸初期に書かれた「元三大師籤絵鈔」によれば、おみくじの引き方には決められた作法があるという。

まず、身を清めて口や手を洗い潔める。そして、法華経普門品(観音経)を3遍唱え、さらに33度礼拝して、初めておみくじを引くことが許されるのだという。

気の遠くなるような手順だが、はたして昔の人々はしっかりこの作法を守っていたのか。また、この仏教的作法は神仏分離令などの影響で忘れられたのか。いずれにせよ、気持ちだけでも神仏に感謝を忘れないよう引けばよい。

ちなみに占いではよく吉凶という言葉を聞く。これは運や縁起の良し悪しのことであるのはもちろんだが、現在は生活すべてに対する判断基準ともなっている。「四柱推命」などのもとをたどれば中国で生まれた陰陽五行説がその源となっている。森羅万象はすべて陰と陽に分かれるという陰陽説、またすべては木・火・土・金・水の5種類の元素から成るという五行説を組み合わせたもので、それらの相性によって吉と凶も判別される。

私たちの生活に今も息づく思想である。

最後に

くじ引きの結果は社会的地位や職業による差はない。ただそこには自らが持った運があるのみである。占いとは、統計学によりその人の人生や性格などを通して結果を導き出すが、おみくじはその真逆。

だが、凶だとしても運が悪いわけではなく、改善の余地がある、と前向きにとらえてみよう。

霊感霊視の電話占い 3回まで無料キャンペーン中!【恋愛応援スペーシア】
関連記事:占い
陰陽師・安倍晴明が一千年前の国家官僚だったという意外な事実について調べてみた
厄払いの側面から陰陽師を調べてみた【護符も自分で書ける】
関連記事:神社
神社の正しい祈り方について調べてみた

gunny

gunny

投稿者の記事一覧

gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 日本刀の歴史 について調べてみた【美しき刀剣の世界】
  2. 忍者はどのような存在だったのか? 「忍術と流派 ~現代の忍者 川…
  3. 「口裂け女」 の都市伝説はどうして生まれたのか?
  4. 本当は長いんです。昔の日本人のフルネーム 【名前、名字の由来】
  5. 【日本史を動かした異国の神様】 謎に包まれた八幡神とは?
  6. 戦国時代の女性の生活について調べてみた
  7. 【視聴率64.8%】伝説の時代劇「てなもんや三度笠」の内容と魅力…
  8. 【夜を統べる月の神】 月読命の謎 「なぜ三貴子の中で全く存在感が…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

バンドの方向性【漫画~キヒロの青春】㊳

音楽は今でも大好きです。最近の若いバンドではSHISHAMOとかフレデリック…

梶原景時の活躍を描いた「梶原平三誉石切」石を両断した天下の名刀…「鎌倉殿の13人」

平治の乱(平治元・1160年)に敗れ去り、伊豆国へと流されて20年の雌伏を余儀なくされた源頼朝(みな…

【巨大ヒグマで7人の犠牲者】 三毛別羆事件とは ~日本史上最悪の熊害事件

2023年は日本各地の人の居住地域で、例年よりも多くの熊の出没が確認されている。熊に…

豆腐と豆腐料理の歴史について調べてみた

豆腐の起源豆腐の起源 は、明の時代に書かれた「本草網目」(当時の百科事典のようなもの)に…

二千年の時を越えて生き返った兵馬俑 「一体の兵士が突然動き出した信じられない事件」

兵馬俑秦の始皇帝を守るように、共に埋められた兵馬俑(へいばよう)は、今でも多くの歴史ファ…

アーカイブ

PAGE TOP