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【近代イギリス長編小説の頂点】ジェーン・オースティンの生涯

ジェーン・オースティンとは

※ジェーン・オースティンの肖像(姉、カサンドラ作)

ジェーン・オースティン(1775~1817)は、イギリスの小説家である。

主要作品には『高慢と偏見』、『エマ』などがあり、いずれも18世紀から19世紀における、イギリスの中流階級の女性たちの生活を描いている。

その作品は近代イギリス長編小説の頂点とみなされており、現代にもオースティン作品のファンは多い。

この記事は、そんなジェーン・オースティンについて追ってみた。

ジェーン・オースティンの生涯

ジェーンは、1775年12月16日、牧師の娘として生まれた。

ジェーンが生まれたのは、アメリカの独立戦争が始まった年であり、またイギリス国内では産業革命が起こるなど、激動の時代の黎明期でもあった。

ジェーンの兄たちはやがて成長し、海軍としてナポレオンとも戦ったが、ジェーンは女の子であるという理由から、あまり変わり映えのしない生活を送ったようである。

兄弟はみんな仲が良く、特にジェーンは2歳年上の姉・カサンドラと仲が良かったと言われており、現存するジェーンの手紙は、ほとんどがカサンドラに贈られたものだそうだ。

ジェーン・オースティンとは

※ジェーンから姉のカサンドラへ送られた手紙

カサンドラは上にも載せているジェーンの肖像画などを描いており、その絵は現在も、ジェーンの一族によって大切に保管されている。

1789年、14歳の頃には早くも小説を書き始め、友人や家族に詠み聞かせていたようだ。

1801年に父が退職し、一家は著名な保養地であったバースへと移住することになる。

このバースでの生活は、ジェーンの書く小説に大きなインスピレーションをもたらしたという。

父が亡くなってからは、兄エドワードの勧めでチョートンへと移住すると、1811年には『マンスフィールド・パーク』という小説を起稿、さらには『分別と多情』、『高慢と偏見』を次々に発表した。

なお、それらの作品はすべて匿名で発表され、ジェーン・オースティンの名は表舞台に出ることがなかったが、1815年、『エマ』が当時の王太子であるジョージ4世に献呈されることとなった。

ジョージ4世は、ジェーンの作品の愛読者だったのである。

ジェーンは1816年頃から体調を崩しがちになり、翌1817年に42歳で亡くなった。

ジェーンの生涯は、ただ一点、小説を書くということ以外にはとりたて特別なことやドラマチックなことはなく、当時の中流階級の女性によくある人生だったと考えられる。

だが、その平凡さが、リアリティをもった数多くの名作を生みだしたのだと言っても過言ではないだろう。

ジェーン・オースティンのおすすめ作品

ここからは、ジェーン・オースティンのおすすめ作品について調べてみたいと思う。

高慢と偏見」(1813年刊行)

ジェーン・オースティンの作品の中でも最高傑作と名高いこの作品は、ジェーンの2冊目の長編小説である。

ベネット家の次女エリザベスと、独身の資産家を友人に持つ青年・ダーシーが、誤解や周囲の偏見に邪魔されながらも、惹かれあい、葛藤を続けるという恋愛模様や、他の登場人物たちの結婚をめぐって大騒動が巻き起こる。

18世紀のイギリスでは、職業を持ち自立する女性がほとんどおらず、良い結婚相手を見つけることが最大のキャリアだとされていた。

そのため、女性にとって結婚とは、現代よりも切実な問題であった。ジェーンはそんな社会の様子を、皮肉を込めて描いている。

高慢と偏見』は6度映画化されており、最新の映画は2005年にキーラ・ナイトレイ主演の『プライドと偏見』である。

また、日本でも、宝塚歌劇団に舞台化され、上演されている。

エマ』(1814年刊行)

エマ』は、恋愛のキューピッド役を得意とする主人公エマが、ナイトリーという男性に出会ったことで自分を見つめ直し、そのことがきっかけで成長、やがては結婚にいたるまでのストーリーである。

この自信過剰で気の強いエマのことを、ジェーンは「私のほかには誰も好きになれない主人公である」と称しているそうだが、現代ではその自由奔放で、気の強さゆえに失敗してしまうところが、特に女性から愛されそうな魅力的なキャラクターである。

こちらも『高慢と偏見』のように、何度か映画化され、特に1996年製作のグウィネス・パルトロー主演『Emma』が有名である。

分別と多感』(年刊行)

分別があり忍耐強い姉のエリナと、情熱的でロマンチストの妹・マリアン。

この正反対の姉妹がそれぞれに恋をするが、その恋には障害があり、簡単には乗り越えられない。姉妹は恋を成就させるため、どうするのか?という話である。

この作品は、ジェーンの人間観察の鋭さが特に輝いており、正反対の性格である姉妹を通して、それぞれの登場人物の多面性が見えてくるという、面白い作品になっている。

ちくま文庫から新訳版が出版されているので、難しい言葉遣いを敬遠している方も、ぜひ読んでいただきたい。

ジェーン・オースティン 秘められた恋

この記事では、イギリスの近代小説を代表する小説家、ジェーン・オースティンについて調べてみた。

ジェーンの生きる時代には、女性にとって結婚は死活問題であり、また、ジェーン自身も、結婚を題材にした作品を多く執筆したが、彼女自身は生涯独身のまま過ごしたという。

それは、彼女が当時珍しい職業婦人であったことと、養い主であった兄が比較的裕福であったから、ということも考えられるが、ジェーンはきっと、“結婚”が女性の幸せのすべてではない、ということを感じ取っていたのかもしれない。

しかし、ジェーンの作品は、いつの時代も変わらない恋心や、人間が成長していく上での葛藤を深く描き、現代の私たちにも愛され続けている。

ジェーン・オースティンの生涯を映画にした『ジェーン・オースティン 秘められた恋』は、彼女の若い頃の知られざる恋について描かれている数少ないジェーンの伝記映画で、主演をアン・ハサウェイが務めている。

ジェーンの生涯に興味を持った方がおられたら、ぜひ、一度ご鑑賞願いたい。

 

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歴史小説が好きで、月に数冊読んでおります。
日本史、アジア史、西洋史問わず愛読しております。

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