最初に、言葉の整理をしておきます。
ニュースレターとメルマガは、よく混同されますが、本来は少し思想が違います。
一般にメルマガは、運営側が決めた内容を登録者全員に一斉配信するものです。
一方ニュースレターは、読者がテーマやカテゴリーを選び、自分が欲しい情報だけを受け取る設計です。
ただし重要なのは、この違いは「運用ルール」の違いであって、「メール基盤」の違いではない、という点です。
今回紹介する設計は、WordPressでニュースレターにもメルマガにも対応できる共通の土台を作る話です。
意外とコストがかかるニュースレター
ニュースレターやメルマガを始めようと思ったとき、最初に候補に挙がりやすいのが、いわゆる「ニュースレター配信SaaS」です。
専門知識がなくてもすぐ使え、登録フォームの作成から配信、簡単な分析まで一通り揃っています。
代表的なサービスを具体的に見てみます。
Mailchimp は、国内外で最も有名なニュースレターSaaSの一つです。
無料枠はありますが、実運用では有料プランに移行するケースがほとんどです。
登録者が500人を超えると、月額はおおよそ2,000円前後から始まり、規模が大きくなると数千円から1万円台に上がっていきます。
ConvertKit は、クリエイター向けで人気のサービスです。
UIは分かりやすいですが、無料枠はかなり限定的です。
有料プランは登録者1,000人程度で月額約3,000円前後、日本円換算ではそれ以上になることもあります。
Sendinblue(現在は Brevo)は、欧州系のメール配信サービスで、CRM機能もまとめて提供しています。
無料枠はありますが、配信数制限が厳しく、実用的には月額数千円コースに入ることが多いです。
日本国内向けでは、配配メールやブラストメールといったサービスがありますが、初期費用が数万円かかるケースや、月額固定費が数千円以上になることが一般的です。
これらのSaaSを使うメリットは明確です。
設定が簡単で、メールの専門知識がほとんど不要。
トラブルが起きたときも、基本的にはサービス側に任せられます。
ただし、デメリットもはっきりしています。
まずコストです。
登録者数が増えると、ほぼ確実に月額料金が上がります。
月3,000円から5,000円、規模によっては1万円を超えることも珍しくありません。
短期では気にならなくても、長期運用では固定費として地味に効いてきます。
次に、構造上のリスクです。
多くのSaaSは、Webサイトとメール配信を同じ文脈で扱います。
同じドメイン、同じ管理画面、同じ評価軸です。
その結果、
メールの到達率が落ちた。
スパム判定を受けた。
DNS設定を変更した。
こうした出来事が、Web側の挙動やSEO評価に影響する可能性があります。
さらに、やめにくさも問題になります。
登録フォーム、登録者データ、配信履歴がすべてサービス内に閉じているため、他へ移るときのコストが高いのです。
では、メールサーバーを自前で用意する、あるいはメール配信専用サービスを使う場合はどうでしょうか。
Google Workspace は、独自ドメインのメールが使えますが、1ユーザーあたり月額約700円前後かかります。
ニュースレター用途には割高で、送信制限も厳しめです。
Microsoft 365 も同様で、1ユーザーあたり月額数百円からですが、大量配信には向いていません。
ニュースレターやメルマガ用途では現実的とは言えません。
SendGrid は、開発者向けに人気のメール配信サービスです。
無料枠はありますが制限が厳しく、有料プランは月額2,000円前後から。
配信量が増えると、やはりコストは上がります。
Postmark はトランザクションメール向けとして評価が高いですが、ニュースレター用途では月額1,500円以上かかることが多いです。
つまり、「ちゃんとしたメール配信」をしようとすると、どこかで月額数千円クラスのコストが発生するのが普通です。
CloudflareとAmazonSES
ここで登場するのが、今回の構成です。
ポイントは非常にシンプルです。
同じドメインを使う。ただし、Webとメールの経路と評価を完全に分離します。
ここではCloudflareとAmazonSESを使います。
まず Cloudflare で何をさせるか。
Cloudflare は CDN やセキュリティの印象が強いですが、ここでは主にDNS 管理として使います。
ドメインのネームサーバーだけを Cloudflare に向けます。
Web用の A レコードは、オリジンサーバーの IP をそのまま指します。
つまり、Web通信は Cloudflare を通りません。
表示速度や SEO の評価は、従来どおりサーバー直結です。
一方で、メールに関する情報だけを Cloudflare の DNS に集約します。
SPF、DKIM、DMARC といった、メールの信用情報です。
このドメインから送ってよいメールはどれか、という宣言を DNS に書きます。
次に、実際のメール送信を Amazon SES が担当します。
Amazon SES は、メールボックスではなく送信専用のエンジンです。
WordPress から送られるメールを、SES 経由で外部に送るだけです。
SES は、先ほど Cloudflare の DNS に設定した SPF や DKIM を見て、このドメインからの正当なメールかどうかを判断します。
条件が合えば、普通のメールとして配信されます。
料金は非常に低価格です。
1万通でも約0.10ドルほど。
月に数百通から数千通程度であれば、請求額は数十円から数百円で収まります。
Cloudflare の DNS は無料枠で十分です。
この構成に固定費はほとんど発生しません。
見た目は、同じドメイン、同じサイトです。
しかし内部では、WebはSEO評価として独立。メールは送信評価として独立。
完全に切り離す構成になります。
メリットデメリット
この構成のメリットは非常に具体的です。
前述したようにまずコスト。
固定費はほぼ0円に近く、実質的には送信数に応じた従量課金だけです。
登録者が増えても、いきなり数千円に跳ね上がることはありません。
次にリスク分離。
メール側でトラブルが起きても、Webは無傷です。
大手がこの構成を取る最大の理由でもあります。
さらに、やめやすさ。
メール配信ロジックはプラグイン側にあります。
別の仕組みに切り替える場合も、Webを壊さずに済みます。
デメリットも正直に書きます。
最初の設定は、SaaSより少しだけ難しいです。
DNSとメール認証について、最低限の理解が必要になります。
ここでも長くなるので、具体的な設定の方法は書きませんが、近年のAIの発達によってこの設計を質問するだけで、具体的な方法を教えてくれると思います。
便利なのは設定画面を都度スクショして、chatGPTに投げるという技です。アプリを使えば右横に出るのでスクショ画像をドラッグしやすくなります。
また、最初から高度な分析機能はありません。
ただし、それは必要になった段階で後から足せます。
致命的な欠点はありません。
派手さはありませんが、長期運用で不利にならない設計です。
コスパの良さの具体例
ニュースレターか、メルマガか。
本当に重要なのは、その違いではありません。
どのサービスを使うかではなく、Webとメールをどう分けるか。
同じドメインのまま、評価と経路を分離する。
固定費ほぼ0円で、大手と同じ判断基準を採用する。
これは裏技ではなく、
規模が大きくなると必ず行き着く設計とも言えます。
今回は、CloudflareとAmazonSES、WordPressのNewsletterというプラグインで、ニュースレターでもメルマガでも両方できる機能を無料で実装できました。
私の場合だと、1日で送れるメールの上限は約50,000通です。
これは AmazonSES を通常の本番利用として使っている場合の、一般的な初期上限になります。
AmazonSES は、もともと大量送信を前提に作られた送信専用サービスです。
WordPress から送っているように見えても、実際に外部へ配信しているのは SES 側で、WordPress が 1 通ずつ配送しているわけではありません。
そのため、1日で数千通から1万通程度の配信は、設計上も実運用上もまったく問題になりません。
送信数は SES 側で自動的にレート制御され、サーバー負荷もほとんど増えません。
例として、登録者が3,000人ほどの媒体で、週2回配信を想定したとしても、月間でも、3,000 × 8 回 = 24,000 通、ほどなので、全然余裕です。
それくらいの規模の媒体でも、例え30,000通 送ったとしても、コストは円安の今でも約450 円前後です。
固定費はかからず、月に30000通送ったとしても500円以内で済むのです。もっと規模の小さな媒体であればほぼ無料と言えるでしょう。
具体的にやり方などのコンサルや、設定などを依頼したいという方は、お気軽に下記のメアドやSNSをフォローしてご連絡ください☺️
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