レトロ車両とは?
最近の通勤車両の多くはJR発足後に開発された車両であり、安全面や快適性など様々な工夫が凝らされている。
一方で、鉄道会社のイベントなどでは国鉄時代に走行していた車両が用いられることもある。これらのイベントでは、レトロ車両に興味がある鉄道ファンが往年の雄姿を見ようと数多く訪れている。
前述のように、一般的にレトロ車両とは主に国鉄時代に製造され、現在では通常ダイヤでは使われていないような車両を指すことが多い。この中には寝台特急や地方の普通列車として活躍していた客車車両や、主に急行列車として走っていたキハ58系などの気動車車両があり、人気も非常に高い。
レトロ車両はなぜ人気が高いのか
レトロ車両の人気の秘密は、その車両が全盛を誇っていた頃を懐かしむことができる点にある。
鉄道車両は近年の急激な技術革新によって、新しい世代の車両がどんどんデビューをしていく状態になる。その陰で、今まで時代を背負っていった車両は、老朽化や、技術革新についていけなくなり、毎年少しずつ廃車されていく。
レトロ車両が全盛だったころを知る人には、その当時の車両に乗ることで、古き良き時代を懐かしむことができるといった点がある。また、レトロ車両は年ごとに鉄道会社が所有する本数が減っていくこともあって、乗れるうちに乗らないと将来は廃車されてしまって乗れなくなってしまうと考える人もいる。
また、レトロ車両というのは都心よりも、郊外で走っていることが多く、「田園風景に非常に映える」とも言われている。つまり都心の喧騒とした雰囲気から、郊外の静かな雰囲気へ憧れる人々の心のオアシスを象徴するものであるとも考えられる。
このようにレトロ車両は乗る人々の懐古的、車両の希少性、郊外への回帰などの要素を満たす鉄量車両として、イベントなどで今もなお活躍していると言って過言ではない側面がある。
レトロ車両のイベント
①蒸気機関車
JR各社では、イベントなどでの運行のため、蒸気機関車を動態保存している。イベントの多くは年間を通して不定期に行われている。例えば、JR東日本では、主に北関東や東北など、蒸気機関車となじみの深い路線で、「SLばんえつ物語」、「SLみなかみ」などを臨時列車を運転している。JR西日本では、新山口~津和野間で「SLやまぐち」を主に、行楽シーズンの土日に運転し、人気を呼んでいる。
また私鉄では、静岡県の大井川鉄道が4台の蒸気機関車を所有し、定期的に「SL急行」として運転を行っている。この大井川鉄道では、子供に人気の「きかんしゃトーマス」とコラボし、カラーリングや先頭部分をトーマスの形態にして「トーマス号」として運転している。車内放送では、トーマスの声を担当する声優さんによる案内があり、特に子供連れの旅行客には人気を博している。
②客車列車
日本で客車列車による普通列車の定期運用は2001年をもって全廃されたが、主力の客車である国鉄50系客車の一部は動態保存されており、イベントなどで臨時列車として運転されている。前述の蒸気機関車でのイベントのほか、電気機関車による牽引でも運転されている。
代表的なものでは、JR東日本が運転している快速「レトロ福島号」などがある。
こちらは、東北本線を経由し福島駅を中心とした運行を行っている。2016年6月には横浜~福島間を結んでおり、懐かしの客車列車の旅を楽しむ観光客で非常に人気のイベントとなった。なお寝台特急用の客車は、その特性から寝台特急として運転されることは殆どないが、昼行の臨時列車としてリバイバル運転されることもあり、寝台列車からの沿線の風景を楽しめるようなイベントも企画されている。
③いすみ鉄道の気動車による急行列車
千葉県にある、いすみ鉄道では、町おこしの一環として、JRではすでに廃止されてしまった気動車での急行列車を運転している。対象となる車両は、国鉄時代にも急行としての運転実績のあるキハ52形およびキハ28形である。運行は土日を中心に行われている。
いすみ鉄道は全線が田園風景となる場所が多く、都心から近いこともあって、鉄道での観光目的で訪れる人も多い。田園風景を眺めながら、レトロな急行電車に乗る気分は、さながら昭和時代にタイムスリップしたような感覚を味わうことができる。また、季節によっては「夜行急行」として運転されることもあり、深夜から朝にかけて全線を往復しながら、当時の雰囲気を堪能することもできる。
いすみ鉄道のこれらのイベントは、地元の産業ともタイアップしており、旅の気分を味わうに欠かせない千葉の名産品などを楽しむことも可能となっている。
まとめ
レトロ車両による旅行は、単に旅の手段だけでなく、車両そのものが醸し出す懐かしさなどを味わうことを目的とすることが多い。
現在では通常ではなかなか乗車できないだけに、イベント等の機会があれば利用してみるのも面白いだろう。
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