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生成AIは人類にとって希望か破滅か? サム・アルトマンが目指す未来像 「chatGPT、ワールドコイン」

サム・アルトマンが目指す未来像

画像:サム・アルトマン。彼が考える未来とは一体何なのか? public domain

サム・アルトマンとは?

サム・アルトマンは、ミズーリ州セントルイス出身の若き起業家であり、現在はオープンAIのCEOを務めています。アルトマンは、幼少期からコンピュータに興味を持ち、スタンフォード大学のコンピュータサイエンス科に入学しました。

しかしアルトマンは大学を中退し、自らの道を切り拓くことを選択しました。アルトマンは、位置情報ベースのモバイルアプリを開発する会社を創業し、ベンチャー投資ファンドや暗号通貨「ワールドコイン」の発行にも携わりました。

オープンAIは、マイクロソフトと提携して開発した対話型人工知能「チャットGPT」により、近年のAIブームを牽引しています。チャットGPTは、人間と区別がつかないほど自然な会話を行うことができ、様々な分野での活用が期待されています。

またアルトマンは、全世界の80億人に仮想通貨「ワールドコイン」を行き渡らせ、ベーシックインカム(BI)を支給するという壮大なビジョンも掲げています。

画像 : ワールドコイン ロゴ イメージ

ベーシックインカム(BI)とは、政府が国民全員に対して無条件かつ定期的に一定額を支給する制度です。

アルトマンは、AIの発展によって失業者が増加した場合に、ベーシックインカムが社会の安定に寄与すると考えています。

アルトマンのAI哲学

コンピュータの能力が人間の知能を超えるようになれば、ほとんどの労働は機械によって代替されると予測されるため、近未来の社会では多くの人々が職を失う可能性があります。

この失業問題を解決するために、アルトマンは「ベーシックインカム」の導入が必要だと主張しています。彼のビジョンは、AIがもたらす利益を社会全体で共有し、誰もが安心して暮らせる世界を創ることです。

またアルトマンは「プレッパー」としても知られています。プレッパーとは、世界の終末に備えて必要な物資を蓄えておく人々のことを意味します。

パンデミックや核戦争、AIの暴走といった世界的な危機に備えるために、アルトマンはカリフォルニア州に広大な私有地を購入し、食料や医療品、防護服などを備蓄しています。最悪の事態に備えることで、人類の未来を守ろうとしているのです。

オープンAIの設立と発展

オープンAIは、2015年に「人類の脅威にならないAI」を実現するために設立された非営利の研究機関でした。

設立当初は、イーロン・マスクリード・ホフマンといった著名な起業家たちが出資していました。

サム・アルトマンが目指す未来像

画像:イーロン・マスク。一時的ではあるが、彼もオープンAIに参加していた public domain

しかし高度なAIの開発には、多額の資金と膨大なコンピューティング能力が必要であることから、2019年にアルトマンは営利法人を設立。マイクロソフトから出資を受けることを決めました。この決定によってイーロン・マスクとは決別しましたが、AI開発は急速に進みました。

オープンAIはチャットGPTの開発だけでなく、自然言語処理や画像生成、ロボティクスなど、様々なAI分野で研究を行っています。彼らの目標は、人類に有益なAIを開発し、AIの恩恵を広く社会に行き渡らせることです。

アルトマンは、AIの発展によって人類が直面する課題を解決し、より良い未来を築くことを目指しています。

オープンAI内部の対立と、一時的なCEO解任

オープンAIの理事会には「AIの能力が高度化し続けると人類の存続にとって脅威になる」と考えるメンバーが含まれていました。一部のメンバーは、AIの開発を慎重に進めるべきだと主張したのです。

その一方、アルトマンを含む多くの社員は、AIの可能性を最大限に引き出すためには、積極的な開発が必要だと考えていました。

この対立が頂点に達したのが、2023年11月です。オープンAIの研究者の一部が、人類を脅かす可能性がある強力なAI「Q*(キュースター)」について警告する書簡を理事会に送ったことがきっかけです。

これを受けて社外取締役と創業メンバーが、アルトマンのAIに対する開発姿勢に反発し「クーデター」が起きました。アルトマンは一時的にCEOを解任されましたが、社員の大多数が復帰を求める文書を提出したことで、理事会は総退陣し、アルトマンはCEOに復帰しました。

この一連の出来事は、AIの未来をめぐる議論の複雑さを浮き彫りにしました。AIの開発を加速させることで、人類の発展に大きく貢献できる可能性がある一方で、制御不能なAIが人類に脅威をもたらすリスクも存在するのです。

加速主義者と破滅主義者の対立

AIの開発を極限まで推し進めようとする「加速主義者」と、加速した技術が人間の管理能力を超えることを警戒する「破滅主義者」の対立は、AIの未来を左右する重要な論点です。

アルトマンの一時的なCEO解任と復帰は、加速主義者と破滅主義者による対立構図の中で起きた出来事であり、最終的には加速主義者が主導権を握ったと言えます。

加速主義者はAIの急速な発展によって、人類が直面する様々な課題を解決できると考えています。彼らはAIを活用することで、医療、教育、環境問題など、様々な分野で革新的なブレイクスルーが起こると期待しています。

その一方である破滅主義者は、AIが人間の制御を超えて暴走する可能性を危惧しています。彼らはAIの開発を慎重に進めることで、人類の安全を確保すべきだと主張しています。

アルトマンは加速主義者の立場に立ちつつも、破滅主義者の懸念にも耳を傾ける姿勢を取り、AIの開発を進める中で、安全性や倫理的な問題にも十分に配慮することが重要だと考えています。

このような難しいバランスの上に立ちながらも、オープンAIは人類に有益なAIの実現を目指しているのです。

参考文献:橘玲(2024)『テクノ・リバタリアン − 世界を変える唯一の思想』文藝春秋

 

村上俊樹

村上俊樹

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“進撃”の元教員 大学院のときは、哲学を少し。その後、高校の社会科教員を10年ほど。生徒からのあだ名は“巨人”。身長が高いので。今はライターとして色々と。フリーランスでライターもしていますので、DMなどいただけると幸いです。
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