2025年7月20日に行われた第27回参議院選挙は、自民・公明の与党が過半数を割り込む歴史的な結果となった。
一方で、国民民主党が17議席、参政党が14議席を獲得し、両党が予想を上回る躍進を見せた。
この背景には、国民の政治への不信感、SNSの戦略的活用、そして明確な政策訴求が絡み合っている。
政治不信と新たな選択肢への期待

画像 : 大通り公園で街頭演説をする国民民主党 玉木代表 wiki ©Noukei314
自民党は39議席、公明党は8議席と、与党は計47議席にとどまり、参議院での過半数(125議席)に届かなかった。
これは、2024年の衆院選に続く「2連敗」であり、国民の与党への信頼が大きく揺らいでいることを示す。
特に、自民党の「裏金問題」や経済停滞への不満が、若年層や中間層の票を他党に流した。
立憲民主党は22議席と横ばいにとどまり、野党第一党としての求心力不足が露呈。
こうした中、国民民主党と参政党は「新しい選択肢」として浮上した。
SNSなどの投稿では、「民意は新風を望んでいる」との声が上がり、両党の明確なメッセージが有権者の心を捉えたことがうかがえる。
SNS活用と若年層の動員
両党の躍進の鍵は、YouTubeやTikTok、XといったSNSの戦略的活用にある。
国民民主党は、玉木雄一郎代表や榛葉賀津也幹事長の街頭演説を、公式チャンネルや大手メディアを通じて発信。
政策重視の動画は「手取りを増やす」などの具体的な訴求で、20代~40代の現役世代に支持を広げた。
一方、参政党は一般ユーザーや切り抜き系チャンネルによる「炎上」や「衝撃」を煽る短尺動画を量産。
公式動画以外の視聴回数が国民民主党の3倍以上(約1億7,436万回)に達し、若年層を中心に爆発的な拡散力を発揮した。
特に参政党は、全国47都道府県での街頭演説をSNSで拡散させ、組織力とネット戦略を両立。
鳥海教授の分析では、参政党のXアカウントの拡散力は7月中旬に9万近くに達し、国民民主党を上回った。
政策の明確さと共感の構造
国民民主党は「手取りを増やす」「インフレに勝つ」をスローガンに、ガソリン減税や児童手当の拡充、103万円の壁の引き上げといった実利的な政策を打ち出した。
支持者の声からは、「若者の声を聞く」「対決より解決」といったメッセージが共感を呼んだことがわかる。
一方、参政党は「日本人ファースト」や民族主義的なイデオロギーを掲げ、感情的な訴求で支持を集めた。
特に、既存政党への不信感や「体制が古い」と感じる若年層に響き、TikTokを通じて支持を拡大。
両党の支持構造は対照的だが、国民民主党は「政策と説得」、参政党は「共鳴と反発」の双方を力に変えた。
投票率58.51%(前回比+6.46ポイント)の上昇も、両党が新たな有権者を動員した結果と言えるだろう。
今後の政治地図への影響

画像 : 参政党 神谷代表wiki © Mottinn
国民民主党は非改選議席と合わせ21議席を確保し、予算を伴う法案提出が可能な勢力に成長。
参政党も14議席に伸ばし、単独での法案提出が可能となった。
この「同時躍進」は、多党制の進展を示す一方、政治の多峰化を加速させる。
国民民主党は現実的な政策で中間層を、参政党はイデオロギーで若年層を取り込み、既存政党の枠組みを揺さぶった。
今後、両党が連立や政策協力を模索する可能性もあるが、理念の違いから対立も予想される。
いずれにせよ、2025年参院選は日本の政治に新たな風を吹き込み、国民の声が多様な形で反映される時代が到来したことを示した。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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