中国、ロシア、北朝鮮の三国が軍事同盟を結ぶ可能性は、しばしば国際政治の議論で取り沙汰される。
しかし、この三国による強固な軍事同盟の形成は極めて困難である。
本稿では、その理由を「歴史的背景、利害の不一致、内部構造の違い」の、三つの観点から分析する。
歴史的確執と信頼の欠如

画像 : 習近平 CC BY 3.0
まず、三国の間には深い歴史的確執が存在する。
中国とロシアは、冷戦時代に中ソ対立という深刻な分裂を経験した。
特に1969年の珍宝島事件では、国境紛争が武力衝突に発展し、両国関係は一時的に凍結状態となった。
その後、1990年代以降は経済協力や軍事演習を通じて関係改善が進んでいるものの、戦略的な相互不信は完全には解消されていない。
北朝鮮に関しては、中国もロシアも、その予測不能な行動に警戒心を抱いている。
特に北朝鮮の核開発は、中国にとって地域の安定を脅かす要因であり、ロシアもまた極東での不安定化を望まない。
このような信頼の欠如は、軍事同盟の基盤を築く上で致命的な障害となる。
利害の衝突と戦略の相違
次に、三国の国家戦略と利害が一致しない点が挙げられる。
中国は経済大国としての地位を固め、グローバルな影響力を拡大することを優先している。
そのため、軍事的な冒険主義は避け、安定した国際環境を求める傾向にある。
一方、ロシアはウクライナ問題や欧米との対立を通じて、軍事力を背景にした大国としての復権を目指している。
北朝鮮は体制の存続と核兵器による自衛に全力を注いでおり、国際社会との対話を軽視する姿勢が顕著である。
これらの異なる目標は、共同の軍事戦略を構築する上での大きな障壁となる。
例えば、中国が望む「安定」と北朝鮮の「挑発」は根本的に相容れず、ロシアの地政学的野心も中国の経済優先主義と衝突する。
内部構造と国際的孤立の違い

画像 : プーチン大統領 public domain
最後に、三国の内部構造と国際社会での立場が異なることも同盟形成の障害である。
中国は一党独裁体制だが、経済的開放を通じて国際社会に深く組み込まれている。
ロシアは強権的な統治を続けるが、エネルギー資源を背景に一定の国際的影響力を保持する。
一方、北朝鮮は完全な孤立状態にあり、経済的・外交的な余裕がほぼ皆無である。
この非対称性は、軍事同盟を運営する上での実務的な問題を引き起こす。
たとえば、共同軍事演習や情報共有には高度な調整が必要だが、北朝鮮の閉鎖性や技術的遅れがそれを困難にする。
また、中国とロシアは国連安保理の常任理事国として一定の責任を負う立場にあり、北朝鮮の無法な行動を公式に支持することは、国際的信用を損なうリスクを伴う。
以上の理由から、中国、ロシア、北朝鮮が軍事同盟を結ぶことは、現実的にはほぼ不可能である。
歴史的不信、戦略の不一致、内部構造の違いが複雑に絡み合い、三国を一つにまとめる力は存在しない。
国際社会がこの三国の動向を注視する中、表面的な協力は見られても、深い同盟関係に至る道は閉ざされていると言えよう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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