13日、金杉憲治駐中国大使は、中国側の要請で孫衛東・外交部副部長と面会し、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁について申入れを受けた。

画像 : 金杉憲治(かなすぎ けんじ)在中華人民共和国日本国大使 外務省 CC BY 4.0
この一連の動きは、日中間の緊張が急速に高まっている現状を象徴している。
この緊迫した状況を、隣国である韓国はどのような視線で捉え、評価しているだろうか。
韓国政府の公式な外交姿勢は、歴史的に見て、日中両国の対立に対して戦略的な曖昧さを保ちながら、基本的には冷静な注視を続けるというものだ。
特に、日中間の領土問題や台湾問題を巡る軍事的な緊張に関しては、どちらか一方に肩入れすることなく、事態が朝鮮半島にもたらす影響を最大限に警戒している。
韓国にとって、中国は最大の貿易相手国であり、北朝鮮問題の解決に不可欠なパートナーである。
一方で、日本は同じ西側陣営に属する民主主義国家であり、安全保障上の重要な協力対象だ。
この二律背反的な関係の中で、韓国は両国の間でバランスを取ることを最優先する。
高市首相の発言が中国に「14億の中国人民は絶対に許さない」とまで言わしめたことは、韓国国内のメディアや専門家にとって、東アジアの安全保障環境が一段と悪化した、という認識を強める材料となる。
対立の根源への韓国の眼差し

画像 : 高市早苗氏 首相官邸 CC BY 4.0
高市首相の「台湾有事は存立危機事態」になり得るという認識は、日本が力による現状変更の試みを容認しないという、民主主義的な価値観に基づく防衛姿勢の表明である。
※「存立危機事態」とは、密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、その結果、国の存立や国民の基本的権利が根底から脅かされる明白な危険が生じる事態のこと。
これに対し、中国の内政干渉だとする強い反発は、台湾統一という国家目標と、核心的利益に対する譲歩なき統制的なアプローチの表れだ。
韓国は、民主化を成し遂げた歴史的経験から、自由と人権といった普遍的価値を重視する。
その視点から見れば、台湾の民主的な体制を維持しようとする動きには、一定の共感を抱く。
しかし、前述の通り、経済・安全保障上の現実的な利害がその共感を上回るため、外交的には慎重な態度に終始する。
韓国の報道は、この日中の緊張の高まりを、単なる二国間の対立としてではなく、米中の覇権争いの代理戦としての側面から分析することが多い。
日本の行動は、日米同盟を基軸とした西側の防衛ライン強化の一環であり、中国の反応は、そのラインを崩そうとする挑戦と捉えるわけだ。
朝鮮半島への影響の懸念

画像 : 李在明大統領 public domain
韓国にとって最も重要な関心事は、日中の緊張が朝鮮半島に波及し、北朝鮮の誤った判断を誘発することだ。
もし台湾有事が発生すれば、在韓米軍の動向を含め、朝鮮半島の安全保障環境は劇的に変化する。
このため、韓国は日中両国に対し、冷静な対応と対話による解決を強く促す立場を取る。
また、日中関係の悪化は、日韓関係の改善努力にも影を落とす可能性がある。
中国が日本への圧力を強める中で、韓国が日本との安全保障協力を深めることに対し、中国側がさらに敏感な反応を示すことが予想されるからだ。
韓国の外交当局は、台湾海峡の平和と安定の維持が、朝鮮半島の平和と繁栄に直結するという基本原則を繰り返し表明している。
この報道は、韓国がその原則を改めて強く認識し、地域情勢の安定化に積極的に寄与する外交努力を継続する必要性を再確認させるものとなった。
日中の対立激化は、韓国にとって「見過ごせないリスク」として認識されているといえる。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部























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