ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2024年報告書によると、世界の軍事費は前年比9.4%増の2兆7180億ドル(約390兆円)に達し、1988年以降で過去最高を記録した。
10年連続の増加は、米国、中国、ロシア、ドイツ、インドが牽引し、これら5カ国で世界全体の60%を占める。
軍事力の急激な強化は、第三次世界大戦の足音を近づける不気味な兆候である。
ウクライナ侵攻が決定的要因になった

画像 : 中国、ロシア、アメリカの軍事予算(2019年米ドル固定換算、単位:10億ドル)CC BY-SA 4.0
欧州の軍事費は、17%増の6930億ドルに急騰した。
ロシアのウクライナ侵攻が続き、NATO諸国が防衛強化に走る中、ドイツは28%増の885億ドルを計上し、新たな軍事計画を始動させた。
SIPRIはロシアの脅威に加え、米国が欧州防衛への関与を低下させる懸念が欧州の軍事費急増の背景にあると分析する。
ロシア自身も軍事費を38%増の1490億ドルとし、2015年の2倍に達した。
ウクライナは2.9%増の647億ドルを投じ、長期消耗戦に備える。ポーランドやフィンランドも軍備を急拡大し、NATO全体の結束が強化される一方、欧州は火薬庫と化し、ひとつの火花が大規模紛争を誘発しかねない。
アジアでも緊張が高まる。
中国は台湾有事を念頭に軍事費を増強し、2024年度で台湾の約17倍の規模に達した。
中国は最短1週間で台湾侵攻が可能な能力を備えているとの見解もあり、米軍の抑止力に疑問を呈する声が上がる。
北朝鮮やロシアとの連携強化も、東アジアを不安定化させる要因だ。
米国は軍事費で世界1位を維持し、フィリピンや日本での合同演習を拡大するが、複数の戦線での対応能力に限界があるとの指摘もある。
インドは南シナ海での中国の動きを牽制し、海軍力の増強に注力している。
軍事費の増強は、核兵器の近代化や新兵器開発を加速させる。SIPRIは2022年に運用可能な核兵器の微増を報告し、「危険な局面」を警告した。
ロシアの核ドクトリン見直しや中国の核戦力増強は、核戦争のリスクを高める。
同時に、ドローンやAI兵器の開発が進み、戦場の様相は一変している。
2024年には、AIを活用した無人戦闘機が実戦配備され、戦闘の自動化が進む。これらの技術が大国間の衝突に投入されれば、破滅的な結果を招く可能性は高いだろう。
世界で広がる軍拡 第3次世界大戦も現実味

画像 : イメージ キャッスル作戦・ブラボー実験のキノコ雲 public domain
中東やアフリカでも、軍事費の増強が顕著である。
サウジアラビアやイスラエルは、イランとの対立を背景に最新鋭のミサイル防衛システムを導入。
X上では、イランの代理勢力による攻撃がエスカレートするとの懸念が拡散している。世界は冷戦時代以上の軍事対立の瀬戸際に立つ。
ウクライナ戦争、台湾海峡の緊張、中東の不安定化は、局地戦が連鎖的に拡大する危険性を孕む。
SIPRIのデータは、軍事費の増大が平和への投資を圧迫し、国際協力を損なう現実を突きつけている。
大国間の不信感は深まり、偶発的な衝突が全球規模の戦争に発展するシナリオは、もはや絵空事ではないかもしれない。
第三次世界大戦の足音は、静かに、しかし確実に近づいている。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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