中国と北朝鮮の関係は、複雑かつ戦略的な利害が絡み合う。
北朝鮮は中国にとって、単なる隣国以上の存在であり、その関係は国際社会における中国の立場を強化する要素となっている。
2025年9月には、北京で習近平国家主席と金正恩総書記が会談し、中朝関係の改善と戦略的協力の強化で一致した。
この会談は2019年6月以来およそ6年ぶりで、両首脳は朝鮮半島情勢の安定に向けて緊密な連携を進めることで合意している。
国際社会の中で中国が北朝鮮を必要とする理由は、大きく4つに分けられる。
それは、地政学、経済、歴史、そして外交に深く関わる要素だ。
その4つの理由を探ることで、中国が描く東アジア戦略の輪郭が見えてくるだろう。
1. 地政学的な緩衝地帯としての役割

画像 : 北朝鮮の地図 public domain
北朝鮮は中国にとって、米国やその同盟国に対する地政学的な緩衝地帯である。
朝鮮半島は歴史的に大国間の勢力争いの舞台であり、北朝鮮の存在は中国東北部と西側諸国との間に壁を形成する。
特に、在韓米軍の存在を考慮すると、北朝鮮は中国の安全保障上、重要な障壁となる。
もし北朝鮮が崩壊し、統一朝鮮が米国寄りの政権となれば、中国は直接的に西側と国境を接することになり、軍事的緊張が高まる。
中国は北朝鮮を支援することで、このリスクを回避し、地域の安定を維持する。
とはいえ北朝鮮の核開発は、中国にとって二重の意味を持つ。
まず、核保有国としての北朝鮮は地域の力の均衡を複雑化させ、米国の影響力を牽制する。
一方で、中国は北朝鮮の核開発を完全に制御することは難しく、一定のリスクも抱える。
それでも、北朝鮮の体制を維持することで、中国は自国の安全保障を間接的に強化している。
2. 経済的利点と資源の確保

画像 : 鴨緑江断橋と中朝友誼橋 xue siyang CC BY-SA 3.0
北朝鮮は、中国にとって経済的な利点も提供する。
北朝鮮は豊富な鉱物資源を有しており、特にレアアースや石炭は、中国の産業にとって重要である。
中国企業は北朝鮮の資源開発に投資し、低コストでこれらの資源を入手している。
また、北朝鮮の労働力は安価であり、中国企業は北朝鮮での製造や建設プロジェクトに労働力を活用することで、コストを抑えている。
さらに、北朝鮮は中国にとって重要な貿易相手でもある。
中国は北朝鮮に対する最大の貿易国であり、食料やエネルギー、工業製品の供給を通じて北朝鮮経済を支えている。
この関係は、北朝鮮の依存度を高め、中国の影響力を強化する。
中国は経済的支援を通じて、北朝鮮の体制を安定させ、自国の戦略的利益を確保している。
3. 歴史的・イデオロギー的な結びつき

画像 : 朝鮮戦争 public domain
中国と北朝鮮の関係は、歴史的・イデオロギー的な結びつきに根ざしている。
朝鮮戦争(1950-1953年)では、中国は「抗米援朝」の名の下に北朝鮮を支援し、数十万人の兵士を派遣した。
この歴史は両国間に強い絆を生み、中国共産党と朝鮮労働党の間には、社会主義イデオロギーを共有する意識が残る。
現代においても、中国は北朝鮮の社会主義体制を支持することで、自身の政治体制の正当性を間接的に強化している。
また、北朝鮮の存在は、中国国内の民族主義的な世論を満足させる役割も果たす。
中国政府は、北朝鮮を支援することで「反帝国主義」の姿勢を示し、国内の支持を集めることができる。
このイデオロギー的な結びつきは、両国の関係を単なる利害を超えたものにしている。
4. 国際社会での影響力の維持
北朝鮮は中国にとって、国際社会での交渉カードでもある。
国連安全保障理事会での北朝鮮関連の議論では、中国は制裁の緩和や調整を通じて自国の影響力を発揮する。
北朝鮮問題を通じて、中国は米国や日本、韓国との外交交渉で有利な立場を確保できる。
また、北朝鮮の挑発行動は、中国が地域の安定を求める「責任ある大国」として振る舞う機会を提供する。
これにより、中国は国際社会での発言力を高め、自身の外交戦略を展開する。
しかし、北朝鮮の予測不可能性は中国にとっても課題である。
ミサイル発射や核実験は、地域の緊張を高め、中国の意図しない形で国際的な批判を招くことがある。
それでも、中国は北朝鮮を完全に切り捨てる選択は取らず、戦略的な関係を維持する道を選んでいる。
このように、中国が北朝鮮を必要とする理由は、地政学的、経済的、歴史的、外交的な要素が絡み合った結果である。
北朝鮮は中国にとって、単なる問題児ではなく、戦略的なパートナーであり続ける。
この関係は、国際情勢の変動に応じて今後も進化するだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
この記事へのコメントはありません。