日本の政界に新しい風が吹いている。
長らく保守強硬派の代表格と目されてきた高市氏が、日本の新総理に就任した。
この人事が固まった際、多くの外交専門家がまず注目したのは「隣国である韓国との関係がどう展開するか」という点だろう。
歴史認識や領土問題など、根深い課題を抱える日韓関係において、保守派総理の誕生は緊張を高める要因と捉えられがちだ。
しかし高市新総理は、むしろ韓国との関係強化に積極的に努めると予測される。
その背景には、国際情勢の激変と高市氏が掲げる「真の保守」の戦略的柔軟性がある。
東アジアの不安定化と日米韓の安全保障

画像 : 高市早苗氏 首相官邸 CC BY 4.0
現在、東アジアの安全保障環境は、過去にないレベルで不安定化している。
中国の軍事力増強と台湾海峡を巡る緊張、そして北朝鮮の核・ミサイル開発の継続は、日本と韓国にとって共通の、そして最も差し迫った脅威である。
この現実を前にして、両国が個別の対応に終始することは、極めて非効率であり、また危険でもある。
高市氏が掲げる保守思想の中核には、「国益の最大化」というプラグマティズムが存在する。
国益とは、何よりも国の安全保障であり、国民の生命と財産の保護である。
この観点から見れば、日米同盟を基軸としつつ、日米韓の安全保障協力をより強固なものとすることは、不可避の戦略となる。
高市総理は、韓国を「自由と民主主義という普遍的価値を共有する隣国」として再定義し、共通の脅威に対抗するための実務的な連携を最優先事項とするだろう。
歴史問題を棚上げにするわけではないが、まずは安全保障という喫緊の課題で関係を深めるという、「戦略的接近」を選ぶ可能性が高い。
経済安全保障と半導体サプライチェーンの再構築
安全保障と並んで、現代の国益を左右するのが経済安全保障である。
特に、半導体を巡る国際競争とサプライチェーンの分断は、日韓両国に共通する重大なリスクとなっている。
日本は半導体製造装置・素材において、韓国はメモリー半導体・ファウンドリにおいて、それぞれ世界的な競争優位性を持つ。
高市氏の経済政策の柱の一つは、重要技術の保護とサプライチェーンの国内回帰、そして同盟国との連携強化だ。
この視点から見れば、半導体分野における韓国との協調は、単なる友好関係の強化ではなく、日本の経済安全保障そのものを強固にするための必須戦略となる。
中国依存度を下げるためにも、日米欧と日韓の技術・生産協力は不可欠であり、高市総理は経済界からのこうした要請にも真摯に応える必要がある。
歴史問題で関係を冷え込ませ、相互の経済的利益を損なうことは、「国益の最大化」という彼女の原則に反する。
国際社会における日本の地位向上と外交力の証明

画像 : 李在明大統領 public domain
高市総理が韓国との関係強化に努める最後の理由は、国際社会、特にG7などの主要国における日本の指導力の証明という点にある。
長らく日韓関係の不安定さは、東アジアにおける「民主主義陣営の結束の弱さ」として、西側諸国から懸念されてきた。
新総理が、保守派という自身の政治的立ち位置にもかかわらず、韓国との関係改善に成功すれば、それは国際社会に対して「日本が歴史問題を乗り越え、地域の安定に積極的に貢献するリーダーシップ」を発揮しているという明確なメッセージとなる。
これは、国連安保理常任理事国入りを目指すなど、国際的な地位向上を図る日本にとって、極めて大きな外交的資産となる。
高市総理は、自身の「真の保守」としての実力と柔軟性を、日韓関係改善という成果で示そうと動くと断言できる。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
この記事へのコメントはありません。