韓国の飲酒運転検挙率は、日本のそれと比較して約6倍に達すると報じられている。
韓国警察庁の統計によれば、2020年の飲酒運転検挙件数はおよそ11万5千件に上り、人口比で見ても日本を大きく上回る水準だ。
もっとも、日韓では取締りの定義や統計の集計方法が異なるため単純比較はできないが、いずれにしてもこの数字は、韓国社会に深く根付いた飲酒文化の一端を示しているといえるだろう。
韓国では、フェシク(会食)と呼ばれる職場の飲み会や、友人との集まりにおいて、大量の飲酒が半ば義務的に行われる文化がある。
特に焼酎(ソジュ)やビールを混ぜた「ソメク」は、手軽さと高いアルコール度数から広く親しまれ、短時間で酔いを深める傾向にある。
この「飲んでこそ親しい」という認識や、飲酒の場での「一杯でも断れない」空気感が、飲酒運転のリスクを高めている主な要因と考えられている。
厳しい規制と国民の葛藤

画像 : 韓国の伝統酒マッコリ Cytryna CC BY 2.0
韓国政府は、この深刻な飲酒運転問題に対し、厳しい法規制を導入してきた。
代表的な例が、2019年に施行されたユンチャンホ法である。
この法律により、飲酒運転の処罰基準が大幅に強化され、特に再犯者に対する罰則は極めて重くなった。
例えば、血中アルコール濃度0.03%以上で運転すると免許停止、0.08%以上では免許取り消しとなる。
日本でも0.03%相当(呼気0.15mg/L)以上で免停の対象となり、呼気0.25mg/L(およそ血中0.05%)を超えると免許取り消しになる場合が多いが、韓国では0.08%以上で自動的に免許取り消しとなるため、制度上は韓国のほうがより厳格といえる。
さらに韓国では、0.20%を超えると懲役2〜5年または罰金1,000万〜2,000万ウォンが科されるなど、再犯や高濃度運転に対して極めて重い刑罰が定められている。
しかし、国民の間には、この厳しい統制に対する「自由への渇望」、すなわち「少しの飲酒も許されない」という規制への反発や、昔ながらの飲酒文化を簡単には変えられないという葛藤が存在する。
週末の夜、ソウルの繁華街などで見られる賑やかな飲み会の光景は、規制の強化にもかかわらず、韓国の飲酒文化が依然として強力であることを示している。
変化の兆しと今後の展望 飲酒文化の未来図

画像 : ソウル特別市 Joon Kyu Park CC BY-SA 3.0
一方で、若い世代を中心に、韓国の飲酒文化にも変化の兆しが見え始めている。
過度な飲酒を避け、自分のペースで楽しむホンスル(一人酒)や、ソフトドリンクや低アルコール飲料を楽しむ「乾杯文化」が徐々に広がりつつある。
健康志向の高まりや、ワークライフバランスを重視する価値観の変化が、伝統的な強制的飲酒文化を見直す動きを後押ししている。
また、飲酒運転に対する社会的な非難も強まっており、芸能人や公人の飲酒運転は厳しく糾弾される傾向にある。
しかし、長年の習慣として根付いた文化を変えるには、法規制だけでなく、国民一人ひとりの意識改革が不可欠である。
厳しい取り締まりと罰則の強化は飲酒運転を減少させる上で効果的だが、真に安全な社会を築くためには、飲酒と付き合う新たなマナーや規範**が社会全体に浸透することが求められている。
韓国の飲酒文化は、現在、伝統と現代的な価値観の狭間で、大きな転換期を迎えていると言えるだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部























この記事へのコメントはありません。