自然&動物

【4億5千万年前から存在した吸血魚】ヤツメウナギの生態 ~意外と美味しい

ヤツメウナギは、4億5000万年以上前のオルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)に恐竜や樹木よりも古くから進化してきた、世界で最も古い生き物の系統の一つだ。

過去4回の大量絶滅危機を生き延びた、驚異的な生命力に富んだ魚である。

世界中の海に、約40〜80種のヤツメウナギが生息しているといわれるが、近年、生息地の破壊や水質汚染などにより個体数が減少しており、太平洋ヤツメウナギにおいては、アメリカ連邦政府の絶滅危惧種に指定されているという。

なお、現生する顎を持たない魚は、ヤツメウナギ類ヌタウナギ類の2種類だけだ。

ヤツメウナギの生態

画像: ヤツメウナギは顎の代わりに吸盤のような口を持ち、それで獲物を捕らえる(写真は三歯ヤツメ)。 public domain

画像のように不気味な歯はあるが、肉は食べず、血液や体液を吸い取るのだという。

また、『ウナギに似た外見ではあるが、顎口類に属すウナギ類とは無縁と考えても良い動物であり、生物学的特徴も食味もウナギとは全くかけ離れた動物である』とされている。

今回の記事では、この不思議な魚・ヤツメウナギについて解説したい。

ヤツメウナギの種類

世界中では、40〜80種類存在するとされるが、日本国内では、カワヤツメ、スナヤツメ、シベリアヤツメ、ミツバヤツメの4種が棲息しているとされ、このうちカワヤツメと一部のスナヤツメは食べられるという。

ヤツメウナギの生態

画像 : 外部形態 public domain

特徴

ヤツメウナギの外見上で最も特徴的なのは、顎がなく代わりに吸盤状の口をもつ点と、7対の円いエラがある点だ。

また、ヤツメウナギは骨のない魚で、骨格はすべて軟骨でできており、脊椎動物の進化上「祖先的」とも見なされている。

そのため、一般的な意味では”魚”と見なされるが、その特徴も広くイメージされる「魚類」とは大きく異なり、非常に原始的であるといわれている。

体長は最大1メートルにもなる。

ヤツメウナギの生態

画像: 様々なヤツメウナギ類の口器形態 public domain

生息地

カリフォルニア州からアラスカ州、ベーリング海を越えてロシア、日本に至る太平洋に生息する。

幼魚期は淡水で過ごし、成魚になると海に移動する。

食事と寄生

ヤツメウナギは、魚、カニ、エビなどの生き物に寄生して、血液や体液を吸い取ることで栄養を得ている。

つまり、ヤツメウナギの食事は「獲物に噛み付いたままの状態で、長期に渡って体液や血液を吸い取り続ける」という、一種の寄生によって行われるのである。

画像: サケ科魚類に寄生したヤツメウナギ public domain

ヤツメウナギの食事と寄生は、次のように行われる。

獲物を見つけるために、視覚や嗅覚を使って獲物を探す。獲物を見つけると、口にある歯状の吸盤を使って、獲物の体に吸い付く。

次に、口から唾液を注入する。唾液には、血液凝固を阻止する成分が含まれているため、獲物の血液は止まらない。また、唾液には麻酔作用のある成分も含まれているため、獲物は痛みを感じないのだという。

そして、歯状の吸盤を使って獲物の血液や体液を吸い取るのだ。ヤツメウナギは、1回の寄生で獲物の血液や体液の約半分を吸い取ると言われている。

ヤツメウナギの寄生は獲物に大きなダメージを与えることも多い。獲物は血液や体液が失われることで衰弱したり死亡したりする。また、獲物の成長や繁殖に悪影響を及ぼすと考えられている。

生息地によって寄生する獲物が異なり、日本ではサケやマスなどの魚類に寄生することが多いとされている。

産卵とその後

メスは巣に最大20万個の卵を産み、淡水で3~4週間孵化させる。孵化した幼魚は底に潜り、最長で10年間埋まったままになる。

稚魚になると、餌をとるために下流の海へと移動し、数年後に繁殖のために淡水の生息地に戻ってくる。

体長33インチ(84センチ)にもなる成魚は、絶好の産卵・子育て場所を求めて何百キロも内陸を移動する。

産卵後には死んでしまうようだ。

ヤツメウナギはおいしい

太平洋のヤツメウナギは、サケの3倍から5倍のカロリーを含む非常に脂ののった肉質のため、多くの鳥類、哺乳類、魚類にとって非常に望ましい餌である。

もちろん、人間もヤツメウナギを食べている。
日本の場合、食用とされるのはほとんど日本産・カワヤツメである

画像 : ヤツメウナギの串焼き。カワヤツメ(Lethenteron japonicum)と思われる。東京、浅草の八ツ目鰻店にて。 wiki c

現代の日本では全国的に流通する食材ではないが、様々な文化圏で食べられている。

また滋養強壮としても古くから用いられてきた。

脂肪に富み、ビタミンAの一種であるレチノールを含むなど、栄養価は高いのである。

ヤツメウナギが乗り越えてきた絶滅の危機

ヤツメウナギは、4億5000万年以上前のオルドビス紀以降に出現し、地球史における大量絶滅を幾度も乗り越えて、現生まで進化してきた種だ。

ヤツメウナギが乗り越えてきた試練を簡単に見てみよう。

地球の歴史において、過去に5回の大量絶滅が起こったことが知られている。これらの大量絶滅は、地球上の生物の約75%が絶滅するほどの大規模な出来事だった。

* オルドビス紀末の大量絶滅:約4億4000万年前。原因は海水面の低下や海水の酸欠化など。
* デボン紀末の大量絶滅:約3億7000万年前。原因は火山活動や海水面の低下など。
* ペルム紀末の大量絶滅:約2億5190万年前。原因は大規模な火山活動や海水の酸欠化など。
* 三畳紀末の大量絶滅:約2億0130万年前に。原因は隕石の衝突や火山活動など。
* 白亜紀末の大量絶滅:約6600万年前。原因は隕石の衝突。

ヤツメウナギは、少なくともデボン紀以降4度の大量絶滅を生き延びてきたとされている。

生息環境の変化による影響

近年ヤツメウナギは、生息地の破壊や水質汚染などにより、個体数が減少している。

生息地の破壊は、ヤツメウナギの産卵場所や餌場を奪い、水質汚染は、ヤツメウナギの健康に悪影響を及しているのだ。

ヤツメウナギは、魚やカニなどの捕食者であり、これらの生物の個体数を抑える役割を果たしている。そのため、ヤツメウナギの個体数減少は、生態系に悪影響を及ぼす可能性があるとされている。

逆に、大型種のウミヤツメが魚類に寄生したため、漁業資源として重要なサケ科をはじめ、多くの魚類が激減する深刻な被害をもたらしたこともあった。

画像: ウミヤツメ。大西洋岸に生息する大型種。CC BY-SA 4.0 Deed

そのため、多くのウミヤツメのオスを捕らえ、不妊化処理を行って川に戻すことも行なわれていたそうだ。

筆者はヤツメウナギを食べたことがないが、かなり美味らしいので、いつの日か食べてみたいものだ。

参考 : Pacific lamprey: The jawless fish that survived 4 mass extinctions and sucks prey dry of blood and body fluids

 

lolonao

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
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コメント

  1. アバター
    • 名無しさん
    • 2023年 10月 28日 7:52pm

    この様な書込大変失礼ながら、日本も当事国となる台湾有事を前に 日本の国防を妨げる国内の反日の危険性が共有される事願います

    今や報道は無法国の代弁者となり、日本の国益は悪に印象操作し妨害、反日帰化の多い野党や中韓の悪事は報じない自由で日本人の知る権利を阻む異常な状態です。

    世論誘導が生んだ民主党政権、中韓を利す為の超円高誘導で日本企業や経済は衰退する中、技術を韓国に渡さぬJAXAを恫喝し予算削減、3万もの機密漏洩など韓国への利益誘導の為に働きました。

    メディアに踊らされあの反日政権を生み、当時の売国法や“身を切る改革”に未だ後遺症を残している事、今も隣国上げや文化破壊等、

    日本弱体と侵略に励む勢力に二度と国を売らぬ様、各党の方向性を見極め、改憲始め国の成長と強化が重要で、しかし必要なのは、
    日本人として誇りを取り戻し、世界一長く続く自国を守る意識だと多くの方に伝わる事を願います。

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