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【ケネディ大統領暗殺事件のカギを握る謎の女】「バブーシュカ・レディー」とは何者なのか

画像:バブーシュカを被った女性 photo by コットンブロスタジオ

バブーシュカ・レディー」とは、ある大事件の現場に居合わせたことで世界中にその存在を知られながら、正体不明とされる人物の通称だ。

ある大事件とは、1963年11月22日に起きた「ケネディ大統領暗殺事件」である。

アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディは、テキサス州ダラス市内で行われたパレードの最中に頭部に銃撃を受け、多くの観衆の目の前で白昼堂々暗殺された。

事件発生当時の映像や写真に映る「バブーシュカ・レディー」は、ケネディ大統領暗殺の瞬間を最も間近で撮影していた人物と考えられているが、重要な証言者となり得る彼女の正体は終ぞ判明しなかったのである。

この謎多き人物は、その場に居合わせた多くの人間が突然鳴り響いた銃声に、驚いて身を伏せたり逃げ惑ったりする中で、動じる様子も見せずに冷静に、狙撃された大統領や狙撃犯がいた方向にカメラを向けて撮影を続けていた。

その異様な行動ゆえに「ケネディ暗殺計画を事前に知っていた人物」、「未来からタイムトラベルしてきた人物」といった説までもが、まことしやかに囁かれているのだ。

今回は、謎に包まれ続ける「バブーシュカ・レディー」の人物像に迫っていこう。

映像に残されたバブーシュカ・レディーの姿

バブーシュカ・レディー

画像:矢印で示されている人物がバブーシュカ・レディー fair use

「バブーシュカ・レディー」の「バブーシュカ」とは、ロシア語で「おばあさん」を意味する言葉であり、ロシアの年配の女性が頭に被る装飾品の名称でもある。

「バブーシュカ・レディー」はバブーシュカのようなスカーフを被っていたことから、この名で呼ばれるようになった。

ケネディ大統領暗殺事件に関する重要な映像資料とされる「ザプルーダー・フィルム」にも、「バブーシュカ・レディー」の姿ははっきりと映っている。

映像や写真で確認できる「バブーシュカ・レディー」は、淡い色合いのスカーフに頭を包み、キャメル色のトレンチコートに見える衣服を着た中年女性のような出で立ちで、パレードの車列が通過していたエルム通りと、メイン通りに挟まれた芝生の上に立ってパレードの様子を撮影している。

ケネディ大統領が狙撃された後、エルム通りを横切って芝生の生えた小高い丘まで歩いていった彼女は、最後はエルム通りの東側に向かい、混乱する群衆の中に紛れこんで姿を消してしまった。

事件後、警察やFBIは、暗殺当日に現場で撮影された写真や映像を提出するよう写真家やマスコミに要請したが、「バブーシュカ・レディー」が撮影したと考えられるフィルムや写真は、ただの1つも発見できなかったのである。

バブーシュカ・レディーを名乗る女性の出現

画像:リー·ハーヴェイ・オズワルドを殺害したジャック·ルビーのマグショット public domain

ケネディ大統領暗殺事件から7年後の1970年、自分こそが「バブーシュカ・レディー」であると主張する女性が現れた。

彼女は1963年当時、ケネディ大統領暗殺容疑で逮捕されたリー・ハーヴェイ・オズワルドを射殺した、ジャック・ルビーという人物が経営していたナイトクラブで、シンガー兼ダンサーとして働いていた女性だった。

事件当時17歳だったビバリー・オリバーというこの女性は、大統領暗殺の瞬間をヤシカ製のスーパー8カメラで撮影し、まだ現像していない状態のフィルムをFBI捜査官を名乗る2人の男性に渡したと語った。

しかし、ヤシカのスーパー8カメラは事件当時にはまだ発売されていなかった機種であり、彼女が事件発生当時にいたと主張する位置についても矛盾があった。

オリバーは暗殺記録審査委員会で証言者となり、ケネディ大統領暗殺事件を題材としたいくつかのドキュメンタリー作品にも出演したものの、彼女が「バブーシュカ・レディー」の正体であると公的に認められることはなかったのである。

バブーシュカ・レディーは何者なのか

画像:暗殺数分前に撮影されたケネディ大統領とジャクリーン・ケネディ夫人 public domain

ケネディ大統領暗殺事件の重要なカギを握っている人物とされながらも、長年に渡り正体不明となっている「バブーシュカ・レディー」の正体は一体何者なのだろうか。

1979年3月、米国下院暗殺特別委員会は、「バブーシュカ・レディー」が撮影したと考えられるフィルムは一切発見できなかったと発表した。

それから15年後の1994年11月、暗殺研究家のゲイリー・マックは、コダックのダラス事務所の幹部から次のような話を聞いたと証言している。

「ザプルーダー・フィルムの現像を行っている最中に、暗殺現場を撮影したとされるフィルムを持ち込んだ30代前半の女性がいた」

その女性が撮影した写真は画質が非常に不明瞭で、コダックの幹部いわく「ほぼ役に立たない」代物であり、女性は身元を記録されることもなく帰宅したという。この女性が「バブーシュカ・レディー」である可能性が示唆されたものの、決定的な証拠は示されなかった。

様々な陰謀論が渦巻く謎多きケネディ大統領暗殺事件において、正体不明の「バブーシュカ・レディー」の存在は一際人々の興味を惹きつけた。

「スパイ説」「タイムトラベラー説」「政府側のSP説」など、現実的なものから非現実的なものまで、多くの説が真偽不明のまま、いまだに飛び交っている状態なのだ。

アメリカ当局の必死に捜査したにもかかわらず、事件から60年以上の年月が経過し、個人の特定がはるかに容易になったこの時代に至るまで、「バブーシュカ・レディー」の正体は判明していない。

「バブーシュカ・レディー」の正体と撮影物が明らかにされる時、それはケネディ大統領暗殺事件に関する重要な事実が解明される時なのかもしれない。

参考 :
土田宏 (著) 『アメリカの陰謀: ケネディ暗殺と『ウォーレン報告書』
文 / 北森詩乃

 

北森詩乃

北森詩乃

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娘に毎日振り回されながら在宅ライターをしている雑学好きのアラフォー主婦です。子育てが落ち着いたら趣味だった御朱印集めを再開したいと目論んでいます。目下の悩みの種はPTA。
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