古代文明

【近親婚】 兄弟姉妹や子供と結婚していた古代エジプト人

古代エジプトにおいて、ラムセス2世は娘と結婚し、クレオパトラ7世は兄と結婚したという。

古代エジプトの王族は、兄弟姉妹や時には子供と結婚することもあったと言われている。

果たして、本当にそのようなことが頻繁に行われていたのだろうか?

本記事では、古代エジプトにおける結婚慣習に焦点を当て、特に王族の結婚について詳しく掘り下げていきたい。

兄弟姉妹や子供と結婚していた古代エジプト人

画像: 古代エジプトの王朝 public domain

古代エジプトの結婚慣習

兄弟姉妹や子供と結婚していた古代エジプト人

画像: 近親婚の一例

古代エジプトにおいて、兄弟姉妹と結婚した王族の代表的な例としては、センウセレト1世(在位紀元前1961年頃〜1917年頃)、アメンホテプ1世(在位紀元前1525年頃〜1504年頃)、クレオパトラ7世(在位紀元前51年頃〜30年頃)が挙げられる。

センウセレト1世は姉のネフェルウ3世と結婚し、アメンホテプ1世は姉のイアフメス=メリトアメンと結婚し、クレオパトラ7世は弟のプトレマイオス14世と結婚したのだ。

古代エジプトの王であるラムセス2世(在位紀元前1279年頃〜1213年頃)は、娘の1人であるメリトアメンを妻に迎えた。これは、父娘婚の事例の1つだ。

ラムセス2世は、古代エジプト史上最も長く在位した王の1人であり、多くの妻との間に多くの子供をもうけた。メリトアメンは、ラムセス2世の19番目の子供である。

エジプトのファラオは複数の妻や妾を持つことが多く、近親婚によって子供が生まれることもあった。

こうした近親交配が、ツタンカーメンの身体的問題を起こした一因であったことを示唆する学者もいる。

王族の兄弟姉妹婚の一般性

このように古代エジプトの王族では、兄弟姉妹婚は一般的に行われており、王位や財産を血統内に保つための方法であった。

王族は自分たちの血統を純粋に保ち、王権を維持するために、兄弟姉妹と結婚することを奨励していたのである。また、子供の頃から結婚を約束させることもあり、これは子供たちの将来を保障する手段とされた。

ファラオが自分の娘と結婚したのは、娘に王権を与えるために行われたのである。

王族と一般人の結婚の違い

王族と一般人の結婚には、明確な違いが存在した。

王族は血統を保つ必要があったため近親婚が多かったが、一般人にはそれほど厳格な規則は適用されなかった。

一般人の間でも親族同士での結婚は行われたが、その頻度は王族よりもずっと低く約20%ほどだったとされている。

オシリス神とイシス神の神話的な結婚

兄弟姉妹や子供と結婚していた古代エジプト人

画像: パピルス製の巻物に書かれたエジプトの死者の書。オシリスの姿 CC BY-SA 1.0 DEED

画像: 女神イシス(紀元前1360年頃の壁画) public domain

古代エジプト神話において、オシリスイシスは特に重要な神々だった。

一般的には夫婦として表現され、豊穣や生命の象徴として崇拝されていた。しかし、エジプト神話においては、オシリスとイシスが夫婦であるだけでなく、兄妹とされることもあった。 つまり、彼らは夫婦であり兄妹でもあったのだ。

このように、オシリスとイシスの結婚が、エジプト王族の兄弟姉妹婚の理由を説明する上で、重要な手がかりとなった。

兄妹の結婚はオシリスとイシスの神話に由来し、神聖な秩序と調和を象徴していたことから、古代エジプト社会においても特別な結婚慣習として尊重されたのである。

画像: エジプト王ツタンカーメンは異母妹アンケセナーメンと結婚した。 CC BY-SA 3.0

ローマ時代における結婚慣習の変化

ローマの支配がエジプトに及んだ時期においては、結婚慣習に変化が見られている。

ローマ支配時代になってから、「兄妹間の結婚数がさらに増加した」という。

そして、その理由が注目されることになった。

養子縁組の役割と問題点

理由の一つとして、ローマ支配期においては、実際には「兄妹」の間で行われたわけではなく「男性が養子として迎えられた後の結婚」だったとされている。

この養子縁組の慣習は、男の子のいない親たちが、年を取るにつれて、経済的な安定を確保するために重要だったのである。

ただし、養子縁組が行われた場合、実際の兄妹との結婚ではないため血統的なつながりが希薄となり、家族の血統の純粋性を維持するという目的は達成されなかった。

財産の分割を避けるための結婚

他の理由としては「財産の分割を避けるため」という意図もあったという。

親が死亡した場合、財産や富は子供たちの間で均等に分割されるのが一般的だったが、兄妹の結婚を奨励することで、財産を家族内に集約することができたのである。

この結婚慣習は、特に貴族階級において広く行われた。

ギリシャ系エジプト人の影響

ギリシャ文化では兄妹の結婚がより一般的であり、エジプト社会にも取り入れられたと考えられている。

ギリシャ系エジプト人は、自身の文化やアイデンティティを表現する手段として、兄妹の結婚を行っていたという。

つまり、ローマ支配下でのエジプトの結婚慣習の変化は、文化的な交流や経済的な要因の影響を受けた結果であったと言えよう。

さいごに

古代エジプトでは、王族の兄弟姉妹婚や親族同士の結婚が一般的であったこと、兄妹の結婚が神話に由来し、血統の神聖視に関連していたこと、そしてローマ時代における結婚慣習の変化とその理由について、ざっくりとご理解いただけたのではないだろうか。

古代エジプトの結婚慣習は多様で複雑であり、時代や階級によっても異なっていた。

現代においても同性婚が認められたり、そもそも結婚しないなど、結婚の多様化は進んでいる。

やはり「結婚」というのは、時代や文化に大きく影響されるようである。

参考 : Did the ancient Egyptians really marry their siblings and children? | Live Science

 

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
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