まず最初に誤解を解かないといけない。
特殊部隊とは精鋭無比には違いないが、その国で最強だからこそ特殊部隊と呼ばれるのではない。ゲリラ戦、対テロ、救助など特殊な任務に特化した部隊のことである。当然そうした任務をこなすためには強靭な肉体と精神力が必要なため、最強の兵士だけが選ばれる。それが特殊部隊である。
特殊部隊は各国に存在するが、今回は世界最強の特殊部隊を擁するアメリカ軍にクローズアップして調べてみた。
グリーンベレー
特殊部隊の代名詞とも言える陸軍特殊部隊。正式名称はSpecial Force(通称SF)。
創設は1952年だが、1960年に当時のケネディ大統領によりグリーンのベレー帽の着用が認められ、正式に「グリーンベレー」と呼ばれるようになった。
※ケネディとグリーンベレー
ベトナム戦争において多大な功績を残したこの部隊のモットーは「抑圧からの解放」であり、記章にもラテン語で「de oppresso liber」という同じ意味の言葉が記されている。
この言葉通り、SFの主な任務は戦場での任務の他、現地のゲリラに対する戦闘訓練、現地人に対する医療活動などがある。こうした活動により現地人を心理的に親米に導くのである。
特殊部隊の中でも正規軍に近い存在であり、基本的には対テロなどの任務は行わない。主に戦場でのゲリラ戦など、少数精鋭での戦闘を得意とする。
なお、沖縄にもその一部が常駐しており、アジア・太平洋地域での活動を担当している。
デルタフォース
正式名称は1st Special Forces Operation Detachment Delta(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)と推測される。
というのも、アメリカ政府はこの部隊の存在を公式には認めていないからだ。デルタフォースは通称だが、「デルタ」や陸軍内では「D-Boys」とも呼ばれる。
1977年にチャールズ・ベックウィズ大佐により対テロ専門部隊として創設された。ベックウィズ大佐は英国陸軍の特殊部隊SAS(特殊空挺部隊)で訓練を受けたことがあり、対テロ部隊の必要性を痛感したという。
SASは世界最強の特殊部隊とも言われ、初期のデルタ隊員はSASで訓練を受けるのが通例だった。隊員の中には帰国する際にSAS隊員から贈られた寄せ書きにこんな言葉が記されていたという。
『こいつがデルタでいらなくなったら、いつでもうちで引き取るぞ』
世界最強の特殊部隊からお墨付きをもらうような猛者が揃っているというエピソードだ。
※私服姿のデルタ隊員
現在では情報収集のため、イラクやアフガニスタンなどに民間人を装って潜入している。
そのため、頭髪や髭、服装などの自由度が高く、戦闘時の装備もある程度は個人で選ぶことが出来る。(グリーンベレーは正規軍と同じ装備で、髭は禁止)。近年では映画「ブラックホーク・ダウン」のモデルにもなり、その存在は公然の秘密となっている。
ネイビー・シールズ
1962年に設立された海軍の特殊部隊。正式名称は United States Navy SEALsである。
第二次世界大戦からベトナム戦争にかけて活躍した水中破壊工作部隊(UDT)が前進であり、その後、あらゆる任務に対応できる特殊部隊としてシールズとなった。
名称の由来はSE(SEA=海)、A(AIR=空)、L(LAND=陸)の頭文字であり、環境を問わず作戦行動が出来ると言う意味である。なお、担当地域の異なる全10チームから構成されているため、複数形の「s」が付く。
最近では海軍でもその存在を前面に押し出しており、認知度は非常に高い。戦場での作戦の他、グリーンベレーとデルタの任務まで兼務するような部隊のため、陸軍からはライバル視されている。
※Navy SEALsの隊員
選抜訓練の過酷さでも有名だが、中心メンバーのリチャード・マーチンコによれば、海軍の優秀な兵士を次々とスカウトしたため、他の部隊からクレームが耐えない状態だったらしい。
近年ではシールズを題材とした映画も多い。ウサマ・ビン・ラディンの殺害を描いた「ゼロ・ダーク・サーティー」や「ローン・ザバイバー」、「アメリカン・スナイパー」などがある。
アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド
正式名称はUnited States Marine Corps Forces Special Operations Command : U.S.MARSOC、通称マーソック。
設立は2006年と特殊部隊の中では新しい。
というのも、米海兵隊はそのものが特殊部隊のようなものだからである。その任務は開戦とともに敵地に向かい、後続部隊が到着するまで橋頭堡を確保するというものだ。通称「殴りこみ部隊」と呼ばれるのもそれが所以である。
※CQBの訓練を行う海兵襲撃隊
その海兵隊の中でも近年の対テロ作戦を重要視して、より小回りの利く襲撃隊として組織されたのがマーソックだった。
そのため、現在でも際立った戦闘記録はないが、大規模戦闘となれば活躍するだろう。
最後に
現在、世界各国で特殊部隊の重要性は高まっている。自衛体内にも創設されたばかりだ。それもこれまでの正規戦(大規模戦争)から不正規戦(対テロ活動)に戦いの様相が変化したためである。
母国を守る切り札である特殊部隊は心強いものだが、願わくば活躍の場がなくなることを願うばかりだ。
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