国際情勢

トランプ大統領こそが世界最大の地政学リスク? 〜高関税 中国34% EU20% 日本24%

トランプ大統領の相互関税政策は、世界を混乱の渦に叩き込む時限爆弾である。

2025年4月2日に彼が発表した新たな関税プランは、中国に34%、EUに20%、日本に24%、ベトナムに46%という驚異的な高関税を課すもので、単なる経済政策の枠を超え、国際秩序そのものを根底から揺るがす危険性を孕んでいる。

この予測不能かつ強硬な手法は、既に世界各地で反発を招き、貿易戦争の域を超えた地政学的な危機を加速させている。トランプこそが、今この瞬間、世界を最も脅かす存在であると言わざるを得ない。

彼の政策がもたらす影響は経済的な混乱にとどまらず、同盟関係の崩壊や軍事衝突のリスク増大を招き、グローバルな安定を破壊する要因となっているのだ。

経済的混乱が「地政学リスク」を増幅する

画像 : トランプ大統領 public domain

まず、トランプの相互関税が引き起こす経済的混乱は、地政学的なリスクを飛躍的に増大させる。

各国が報復関税で対抗することは避けられず、既に中国とEUは具体的な対抗措置を宣言している。中国はアメリカからの輸入品に対する関税引き上げを表明し、EUも同様に報復的な貿易障壁を構築する意向を示している。

この応酬がエスカレートすれば、世界貿易は分断され、グローバルなサプライチェーンは深刻な寸断に見舞われるだろう。

例えば、半導体や自動車部品のような重要産業では、供給網の混乱が生産停止を招き、各国経済に壊滅的な打撃を与える可能性が高い。特にアメリカ経済自体がこの政策の影響を免れないことは明白だ。
高関税による輸入コストの上昇は物価を押し上げ、インフレを加速させる一方で、輸出産業は報復関税によって競争力を失い、経済成長は鈍化するだろう。

このような経済的苦境は、アメリカの「自縄自縛」とも言える状況を生み出す。トランプの掲げる「アメリカファースト」は、皮肉にも自国を国際社会から孤立させる自滅行為に他ならない。

また、経済が不安定になれば、各国は自国の利益を守るために軍事的な動きを強める傾向にある。歴史を振り返れば、経済的困窮が紛争の火種となる例は枚挙にいとまがない。

例えば、中東ではエネルギー資源を巡る対立が既に顕在化しており、アフリカでは経済的疲弊が内戦やテロ組織の台頭を助長している。

トランプの関税政策がこうした地域の不安定要素に拍車をかければ、局地的な紛争がグローバルな危機に発展する危険性すらある。

感情的な外交が同盟関係を破壊する

画像 : ホワイトハウス public domain

次に、トランプの感情的かつ恣意的な外交姿勢が、長年築かれてきた同盟関係を破壊する危険性を孕んでいる。

彼が日本や台湾といったアジアの重要なパートナー国に高関税を課し、「従わなければ見捨てる」と脅迫するような態度を取れば、地域の安全保障体制は瞬く間に崩壊するだろう。

日本はアメリカとの安保条約を基盤に防衛戦略を構築してきたが、トランプの強硬姿勢は日本に独自の防衛力強化や他国との新たな同盟模索を促すかもしれない。
その結果、中国や北朝鮮が勢力を拡大する余地が生まれ、アジア太平洋地域の緊張は一気に高まる。

同様に、NATO諸国に対する圧力も深刻な問題を引き起こす。
トランプが欧州諸国に高関税を課しつつ、防衛費の増額を強要するような態度を続ければ、NATO内の結束は瓦解し、ロシアが欧州での影響力を拡大する絶好の機会を与えてしまう。
既にロシアはウクライナ問題を背景に欧州への圧力を強めており、トランプの短絡的な行動は敵を利する結果にしかならない。

さらに、新興国への影響も見逃せない。

トルコやインドのような国々がアメリカとの関係を見直し、ロシアや中国との連携を深めれば、多極化した世界でアメリカの孤立は決定的となるだろう。

トランプの外交は、理性的な戦略に基づくものではなく、感情やその場の思いつきに左右されるものであり、その予測不能さが同盟国に不信感を植え付け、世界の安全保障を脆弱化させている。

予測不可能な最大のリスク

最後に、トランプの政策が持つ予測不能な性質こそが、最大の危険要因である。

関税率の決定には明確な基準や論理が欠如しており、彼の気分や政治的都合によって変更される可能性が高い。

例えば、ある日は中国への関税を34%と発表したかと思えば、次の日には40%に引き上げる、あるいは突然日本への関税を緩和するといった一貫性のない動きが予想される。

このような不安定な政策運営は、各国がトランプ政権への信頼を完全に失うきっかけとなり、国際社会全体に混乱をもたらす。各国のリーダーたちは、アメリカとの協調を諦め、自力での生存戦略を模索せざるを得なくなるだろう。

その結果、軍事衝突や地域紛争が頻発する世界が現実のものとなる可能性がある。

既にインド太平洋地域では、中国と周辺国との間で小規模な衝突が増加傾向にある。南シナ海での領有権争いや、台湾海峡での軍事的緊張は、トランプの関税政策が引き金を引く形で一気にエスカレートする恐れがある。
また、中東やアフリカでも、経済的混乱が紛争を助長するリスクは無視できない。

トランプは自らを「救世主」として位置づけ、アメリカを再び偉大にすると主張するが、その実態は世界を混沌へと突き進ませる破壊者かもしれない。

彼の再選がもたらした混乱は、アメリカ国内の政治的分断をさらに加速させ、対外的な波紋を広げる結果となっている。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

アバター画像

エックスレバン

投稿者の記事一覧

国際社会の現在や歴史について研究し、現地に赴くなどして政治や経済、文化などを調査する。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「マカオのエッグタルトとその歴史」 アンドリュー・W・ストウの遺…
  2. 中国が「小笠原諸島」を軍事的に重視する理由とは? ~その戦略的重…
  3. 『悪化する日中関係 』韓国は日中の緊張をどう捉えているのか?
  4. 金のために祖国を売ったCIA職員・オルドリッチ・エイムズ 【日曜…
  5. アメリカの政府閉鎖に関して調べてみた
  6. 黒人差別はどのようにして始まったのか?
  7. 今だからこそ分かる!ウクライナがロシアの侵略を受けた2つの決定的…
  8. アメリカで「梅毒」が急増中 【1950年代以来最高値に】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【イスラム教の合理性】 なぜ一夫多妻制を認めるのか?「豚肉食、偶像崇拝禁止の理由」

イスラム教は、日本から見ると地理的にも文化的にも遠い存在であり、一夫多妻制や食事の制限など、…

『衝撃の天皇暗殺事件』崇峻天皇を殺した蘇我馬子はなぜ許されたのか?

蘇我馬子に暗殺された崇峻天皇歴代天皇のうち、明らかに暗殺されたと伝えられる天皇は二人いる…

豊田商事事件 ~被害2000億円以上の日本最大の詐欺事件

日本最大の詐欺事件2019年現在でも、日本でも最大の約2,000億円の被害総額と言われて…

豊臣埋蔵金は現代の価値に換算するといくらだったのか?

日本には、三大埋蔵金伝説というものがあります。その3つとは、『徳川埋蔵金』『豊臣埋蔵金』、そして『…

楠本イネについて調べてみた【日本初の女性産科医】

楠本イネとは  (くすもと いね)、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した日本人医師である…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP