日本国内の自衛隊基地や米軍施設周辺における外国人の土地利用は、安全保障上の重要な課題である。
近年、外国人や外国資本によるこれらの重要施設周辺の土地取得が注目され、政府は法整備を進めてきた。
ここでは、現状を概観し、安全保障上最悪のシナリオを考察する。
現状:外国人による土地取得の実態

画像 : 陸上自衛隊 久留米駐屯地 wiki c Akash Shrestha
自衛隊基地や米軍施設の周辺では、外国人や外国系法人による土地・建物の取得が確認されている。
特に中国籍の個人や法人が関与するケースが多く、マンションやアパートの購入が主な用途とされる。
政府は2022年、重要施設周辺や国境離島を「注視区域」に指定し、土地売買に事前届け出を義務づける法律を施行した。
この法律は、外国資本による不適切な土地利用を抑止する狙いがあるが、施行後数年で重大な懸念事案は確認されていないとされる。ただし、調査の透明性や監視体制の実効性には課題が残る。
地方自治体からも懸念の声が上がっている。
複数の県議会が、外国人による水源地や自衛隊施設周辺の土地買収への対策を求める意見書を国に提出している。
しかし、具体的な規制強化には至っていない。
野党や一部与党議員からは、外国人土地取得の制限に反対する意見もあり、立法のハードルは高い。
国民の間でも、SNSを通じて外国人による土地買収への不安が広がりつつある。
安全保障上の最悪の懸念
自衛隊基地や米軍施設周辺の土地が外国人に取得されることのリスクは、平時と有事の両方で顕在化する可能性がある。最悪のシナリオを以下にまとめる。
情報収集・監視活動の拠点化
敵対的な国家や組織が、基地周辺の土地を取得し、諜報活動の拠点として利用する可能性がある。
ドローンや監視機器を用いた情報収集、通信傍受、基地の運用状況の把握が行われれば、日米の軍事機密が漏洩する危険が高まる。
特に、中国による土地取得が多い現状では、人民解放軍や関連機関が関与するリスクが懸念される。
有事における攻撃拠点の形成
有事の際、基地周辺の土地が攻撃の足がかりとして悪用される恐れがある。
コンテナや民間施設に偽装したミサイル発射装置やドローン基地が設置され、自衛隊や米軍の即応能力を無力化するシナリオが考えられる。
人口密集地に位置する基地は特に脆弱である。
インフラ・水源への影響
基地周辺の水源地や農地が外国資本に買収され、食料や水の安定供給が脅かされる可能性がある。
基地の運用に不可欠な電力や通信インフラが近隣の外国所有地に依存する場合、妨害工作のリスクも生じる。
特に水源地の買収は、長期的な安全保障に影響を及ぼす。
日米同盟への影響
米軍施設周辺の土地が敵対国に取得されれば、日米安全保障条約に基づく米軍の駐留や運用に支障が生じる。
米国側が日本の土地管理の甘さを問題視し、同盟関係に亀裂が入る可能性もある。
米軍基地は日米地位協定により日本の法令適用が制限されるため、事前規制が一層困難である。
社会不安の増幅
外国人による土地買収への懸念が国民の間で広がれば、排外主義やヘイトスピーチが助長されるリスクがある。
SNS上では、特定の国による土地買収を問題視する声が散見され、過剰な反応が社会の分断を招く可能性がある。
政府の情報開示不足は、こうした不安をさらに増幅する。
今後の課題と展望

画像 : アメリカ空軍基地 public domain
現状では、土地利用の監視体制が一定の抑止効果を持つものの、外国人の土地取得を全面的に制限する法整備は進んでいない。
国際法上の内外無差別原則や、経済的自由を重視する国内世論が、規制強化の障壁となっている。また、基地周辺の土地利用に関する情報公開が不十分で、国民の信頼を得られていない。
安全保障上の最悪のシナリオを回避するには、以下の対策が急務であろう。
第一に、監視区域の拡大と監視体制の強化。
第二に、土地売買の事前届け出を個人から法人まで拡大し、背後関係の調査を徹底する。
第三に、情報公開を透明化し、過剰な不安を抑制する。
最後に、日米間で土地利用に関する協議を深め、同盟の信頼を維持する。
自衛隊基地や米軍施設周辺の外国人土地利用は、表面的には小規模だが、潜在的なリスクは無視できない。政府は、経済的利益と安全保障のバランスを取りつつ、迅速かつ実効的な対応を講じる必要がある。
さもなければ、日本の防衛基盤が揺らぎ、地域の安定が損なわれる事態を招きかねないだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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