
画像 : グリーンランドの位置 Connormah CC BY-SA 3.0
世界地図を眺めると、ある種の違和感に気づくはずだ。
北米大陸の北東に位置する世界最大の島、グリーンランド。
地理的にはカナダに隣接しているこの巨大な島が、なぜ海を隔てた北欧の小国デンマークの自治領となっているのか。
そこには、バイキングの足跡から始まり、植民地時代の確執、そして現代の地政学リスクに至るまでの、数千年にわたるドラマが隠されている。
氷の島への入植と北欧の野心
グリーンランドの歴史は、紀元前2500年頃から始まった先住民の移住に遡るが、デンマークとの関わりが生じたのは10世紀のことだ。
ノルウェー出身のバイキング「赤毛のエイリーク」がこの島を発見し、入植を開始した。

画像:1688年に出版されたアイスランドの本の表紙に描かれた赤毛のエイリーク(木版画)public domain
当時のグリーンランドはノルウェー王権の勢力圏に属しており、後にデンマークとノルウェーが同君連合を組んだことで、その統治権もデンマーク側へと引き継がれていく。
こうした同君連合体制のもとで、北欧諸国は北極圏を含む周辺地域への影響力を広げていった。
しかし、15世紀頃には小氷河期による気候悪化でバイキングの定住地は壊滅し、島は再び先住民イヌイットだけの世界に戻る。
その後もグリーンランドは長くヨーロッパ世界から切り離された存在となり、ノルウェー・デンマーク側の統治は名目的なものにとどまっていた。
転機となったのは18世紀。
デンマークの宣教師ハンス・エゲーデが「かつての入植者の子孫を改宗させる」という名目で再上陸を果たし、事実上の植民地化が再開された。
1814年のキール条約により、ノルウェーがデンマークから離脱した際も、グリーンランドの所有権はデンマークに留まった。
これが、現在の支配構造の決定的な礎となったのである。
グリーンランドをめぐる国家の争い

画像 : 氷山とグリーンランド Jensbn CC BY 2.5
20世紀に入ると、グリーンランドの価値は「資源」と「戦略的要衝」として再定義される。
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに占領された本国デンマークに代わり、アメリカ合衆国が島の防衛を担った。
この時期、島民は外部の世界、特にアメリカの圧倒的な物資と文化に触れ、それまでのデンマークによる閉鎖的な貿易統制に疑問を抱き始める。
戦後、デンマークはグリーンランドを「植民地」から「県」へと格上げし、近代化政策を強行した。
これに対し、独自の文化とアイデンティティを守ろうとするイヌイットたちの間で、自治を求める声が急速に高まった。
1979年には公選議会を持つ自治政府が発足し、さらに2009年の新自治法によって、天然資源の管理権や自決権が大幅に認められることとなった。
現在、グリーンランドは「デンマーク王国」の一部でありながら、外交と防衛を除くほとんどの権限を握る「自立した国家」に近い形態をとっている。
北極圏の地政学と未来の選択

画像 : デンマークとグリーンランド public domain
なぜデンマークは、維持費がかさむこの巨大な島を手放さないのか。
その理由は、地球温暖化によって氷が溶け、氷層下に眠る膨大なレアアースや石油資源へのアクセスが可能になったからだ。
また、北極海航路の重要性が増す中で、グリーンランドを保持することは、デンマークが国際政治における「大国」としての発言権を維持するための唯一無二の切札となっている。
一方で、島民たちの独立への志向は今も根強い。
しかし、年間予算の約半分をデンマークからの交付金に頼っているという経済的現実が、完全独立への高い壁となっている。
「自由への渇望」と、安定した「政府の統制(支援)」の間で、グリーンランドは今も揺れ続けているのだ。
参考 : グリーンランド自治法(Self-Government Act 2009)他
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
























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