朝の通勤時に貨物列車をよく見かけます。信号待ちで車から見ていると、ずーっと流れてく貨物列車。
長い、長すぎる!でも、積んでいる貨物にはかなり空きがあります。もっとまとめて運べばいいのに、とも思いましたが、行き先が決まっているから仕方ありませんね。でも、それで営業は成り立っているんでしょうか?
幻となった貨物駅
日本の貨物列車は、1987年の国鉄民営化により「日本貨物鉄道」、通称JR貨物での営業となりました。
国鉄時代は、高速道路網が整備されるまでは、船舶輸送と並んで、貨物輸送の主力だったそうです。鉄道が初めて開通した明治時代にはすでに新橋駅と横浜駅の間で貨物輸送が行われ、鉱山や工場などに専用の線路まで敷かれていました。鉄道が開通したときの新橋駅というのは、現在の汐留にあり、新橋駅が現在の場所に移動してからは、貨物駅や貨物ターミナルとして利用されてきました。
しかし、1980年代のトラック輸送の増加にともない汐留貨物駅は廃止となり、広大な跡地は空き地のまま、湾岸開発の流れと共に再開発されます。他にも都内には、秋葉原の貨物駅や、築地市場にあった東京市場駅、さらには5階建ての飯田町紙流通センターという貨物駅があり、そこから新聞などを輸送していたそうです。飯田町には新聞社や印刷業者が多かったため、最盛期には世界最大規模の貨物の取り扱いが可能でした。
貨物は赤字路線のまま?
貨物輸送が下火になると、国鉄の貨物事業も赤字となります。ただ、他のJRグループが地域によって6つの会社に分割されたのに対し、JR貨物は全国規模でまとめて貨物列車の運行をすることになりました。
確かに長距離を移動するわけですから地域で分けるのは難しいでしょうね。というより、赤字の事業だったため、他のJRにとってはお荷物だったのかな、なんて考えてしまいますが、JR貨物が会社として所有する路線は民営化の時に最小限に抑えられたそうです。例え貨物線であっても、旅客線につながっていたり、旅客列車が走る計画があった線などを含めて、その多くがその地域のJRのものとなりました。
そのため、いま貨物列車が走っているほとんどの路線は、他社の路線ということでJR貨物は線路利用料を払って「走らせてもらってる」状態です。
ここまで苦しい状況で倒産しないのかと思いましたが、国土交通省所管の「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」というものがあり、そこが全株式を保有していました。つまり、国がバックアップしているわけです。
地下を走る 貨物列車
色々と調べてゆくと、さらに面白いことが分かりました。
数少ない貨物線のなかでも、川崎から府中を結ぶ貨物線はそのほとんどが地下を通っているんです。下の地図で赤い区間がそうですが、かなり長いですね!
実は、この区間は川崎市から時計回りにぐるりと都心を囲んで千葉県船橋市まで続く武蔵野線の一部だったんです。といっても、赤い区間は「武蔵野南線」という貨物専用の区間で、府中本町から先が旅客線となっています。それというのも、元々はこの武蔵野線は、旧国鉄が貨物線として建設したものだったんです。都心部にはすでに山手線に沿って「山手貨物線」がありましたが、「東京外環貨物線」という名前で戦前に計画された路線でした。
地方から集まる貨物をこの線路を使って首都圏各地に分散させる目的があったそうです。
武蔵野線の役割
地図で見てみましょう。ぐるりと赤い武蔵野線が首都圏を囲み、千葉県の西船橋から青い京葉線に乗り入れて、中央の東京までつながっています。これは、当初は貨物輸送を目的としていましたが、高度経済成長期に郊外の人口が増えたため、旅客列車も走るようになりました。もちろん、今でも貨物列車は走りますが、貨物線として建設されたことを知っている人は少ないと思います。
ちなみに東京駅の武蔵野線地下ホームは、京葉線と同じホームになっていて、東へ向かうはずなのに行き先表示が23区の西にある「府中本町」になっていることに驚いた覚えがあります(笑)
貨物船の名残りとして、この武蔵野線には3つの貨物駅があり、そこで貨物の積み下ろしをしているそうです。私が知っている川崎市の「梶ヶ谷貨物ターミナル」は、トンネルとトンネルに挟まれた地上区間に建設された貨物駅ですが、これも最初に見たときは何の駅なんだろうと不思議に思いました。
未来へ向けて
武蔵野線のお話の中で「山手貨物線」というものが出てきましたが、山手線にも旅客用の線路の他に貨物線が並走しています。その線を利用して開通したのが、埼京線や新宿湘南ラインです。
特に新宿湘南ラインは新宿を出発すると、山手線の外側を走るようになっていて、品川の手前の大崎という駅の先は貨物線に乗り入れます。そのため、いきなり長いトンネルに入り、地上に出たら横浜だったということもあります。このように、貨物線はJR貨物だけが所有しない代わりに、色々な旅客線にも使用されるようになり、輸送力を高めてきたのです。
さらに2020年の東京オリンピックへ向けて、東京駅や新宿駅から直接、羽田空港に向かう路線も検討されています。こうした新路線も、貨物線を有効活用することで新しく建設する路線を減らしてコスト削減につながるというわけです。もっとも、あと2年後の話ですが、現実的には間に合いそうになく、実際の開通は2025年頃になりそうです。
まとめ
確かに貨物列車は赤字続きでしたが、最近になり明るい兆しも見え始めています。
環境に優しいことやドライバーの不足から、トラック輸送を減らして鉄道輸送に切り替えることが進んでいることもあって、2017年には初めて黒字となったそうです。他にも空き地となった貨物駅跡の不動産事業なども手がけているので、今のままなら倒産するということはないでしょうね。
そして、貨物線のおかげで色々な旅客線が新たに増えたことも分かりました。
関連記事:鉄道
「東京駅 の謎について調べてみた」
「万世橋駅と秋葉原貨物ホームについて調べてみた」
この記事へのコメントはありません。