2014年、世界初の燃料電池自動車「MIRAI」がトヨタから発表、発売されました。→ TOYOTA公式ページ
充填した水素と酸素を化学反応させることで電気を生み出し、モーターだけで走行します。発生するのは水だけという環境的には理想の車ですが、様々な課題から普及するのはまだまだ先です。
しかし、燃料電池自動車の普及にとって別の大きな壁も存在していました。
MIRAI が見えてきた
MIRAIは発表の翌年、2015年に日本で400台、アメリカで200台、その他100台の計700台を販売。その後も年間販売数も目標を400台としていましたが、発売開始時点で約1,500台もの予約があったといいます。このことからも注目度の高さが分かります。
さらに環境面だけでなく、最高速度が175km/h、走行距離は約650km、水素の充填時間も約3分ということで、電気自動車よりも効率がよく、性能も申し分ありません。価格は、723万6,000円と高級外車なみですが、技術的なコストを考えるとかなり安いそうで、あるドイツの自動車メーカーは「一桁間違っているのでは?(7000万円じゃないのか)」と驚いたそうです。
専用の水素ステーションは、まず首都圏、近畿、中部などの大都市圏に約40ヵ所を設置予定。水素タンクを常備するという面から、一気に増やすことは難しいものの、着実に前進しています。
欧州ではディーゼル車が人気!
MIRAIが世界初の燃料電池自動車ということで、世界から注目されているのは間違いありませんが、日本の自動車がハイブリッドが中心となっているように、ヨーロッパではディーゼル車が人気となっています。ディーゼル車というと環境に悪いというイメージがありましたが、現在のモデルは改良されて有害物質の発生を抑えています。
なぜ、ヨーロッパでディーゼル車かというと、社会制度の違いがありました。それが「カンパニー・カー」制度です。
基本的にヨーロッパは税金が高いため、大企業では給与の一部として車を支給してもらうことができます。現金だと日本より所得税の割合が大きくなるので節税にもなります。しかし、車両本体は企業が負担しますが、燃料代は当然、自分で負担しなくてはいけません。そこで燃費のいいディーゼル車が選ばれています。ヨーロッパでは税率の違いから、ガソリンのほうが安いそうですが、長期的に見れば軽油を使うディーゼル車がいいということになるわけです。
ハイブリッドは高嶺の花
一方で、ヨーロッパは排ガス規制が厳しいことでも有名です。
日本の自動車メーカーはそうした点をクリアするために「クリーン・ディーゼル」という有害な排出ガスの発生を抑えた車を開発して輸出しています。特にマツダが力を入れてますね。だったら、ハイブリッド車のほうがいいのでは?と考えてしまいますが、そうなると今度は車体価格が高くなります。
必ずしもカンパニー・カー制度を利用できる人ばかりではないので、自己負担で車を買うなら、単純に安いほうがいいわけです。日本ではハイブリッドカーが普及していますが、トヨタの「プリウス」や「アクア」のような高性能車は少なく、日産の電気自動車「リーフ」も普及しているとはいえない状況です。これも車体価格の問題だけではなく、維持費が高いという理由もあるでしょう。
軽自動車が増えたのはそうした点をクリアしているからです。
欧州でMTが人気のワケ
燃費ということを考えると、日本とヨーロッパではもうひとつ違いがあります。
それは運転の仕方です。実はヨーロッパではマニュアル(MT)車のほうが人気があるって知っていますか?
構造がATほど複雑でないためMT車の本体価格は安くなっていますが、それ以外にも、交通渋滞の少ないヨーロッパではMTのほうが燃費もいいし、長距離を一定の速度で移動するなら、さらに燃費は向上します。頻繁にギアを変える必要も少ないですしね。逆に日本のように渋滞が多かったり、起伏が激しい場所ではATやCVT(無段変速)のほうがドライバーの負担も少ないわけです。
とはいっても、ヨーロッパは過剰なまでに環境に厳しいので、ディーゼル車に対する規制もさらに強くなっていくでしょう。
まだまだ理想的なのはハイブリッド?
では、世界的に見て理想的な燃料とはなんでしょうか?
2015年にアメリカでMIRAIが発売されたときは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマソングに合わせて大々的に販売プロモーションを行いました。劇中に登場する自動車『デロリアン』がタイムマシンになって活躍する姿に重ね合わせたわけです。「遂に未来が来た!」という感じですね。
予約台数もカリフォルニア州だけで2,000台も入ったことで、順調なスタートを切ったように見えました。でも、実際のところは多くの人がMIRAIを冷ややかな目で見ているんです。
確かに燃料電池車は理想的な未来の車ですが、本体価格よりも水素ステーションの建設に莫大な費用がかかるため、コストを回収するのが難しいというわけです。アメリカ政府としても、普及には積極的とはいえない姿勢です。日本ですら普及が難しいといわれているので、まだしばらくはハイブリッド自動車がシェアを伸ばしてゆくことでしょう。
まとめ
現実的には、まだまだハイブリッド車がコスト的にも人気がありそうです。他に電気自動車も日産、三菱などで開発中のため、いずれは「燃料電池VS電気自動車」の構造になるでしょう。ただ、どちらも燃料供給ステーションの数を増やすことが大きな課題として残っています。
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