調べてみた

令和4年(2022年)は寅(トラ)年…ということで、虎に関することわざを紹介!

新年、明けましておめでとうございます。

令和4年(2022年)は十二支の寅年。日本には棲息していないため、日本人にはあまり馴染みのない筈なのに、ことわざや慣用句としてしばしば会話に出没する虎。

今回はそんな虎に関することわざを紹介。皆さんの会話には、何頭の虎が出没するでしょうか。

苛政は虎よりも猛し(かせいはとらよりもたけし)

意味:厳しい政治は人食い虎よりも害が大きい

出典は昔、泰山の麓で虎に家族を食い殺され、泣き暮らす婦人に対して、孔子が「なぜよそへ引っ越さないのか」と尋ねたところ「苛政がないからです」と答えた故事より。

人食い虎は防ぎようもあるが、悪しき政治からは逃れられない。考えさせられる話です。

騎虎の勢い(きこのいきおい)

意味:虎の背に一度乗ってしまったら、途中で下りることができない

途中で下りたら虎に食い殺されてしまうように、一度始めたら後戻りできない状況を指しています。

6世紀、北周の独孤伽羅が夫の楊堅にこの喩えを用いて叱咤激励し、隋王朝を建国させるに至ったのでした。

虎穴に入らずんば虎児を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)

意味:リスクを負わなければ、相応のリターンは得られない

イメージ

虎の子を捕まえるには、親虎がいるかも知れない虎の穴に入らなければなりません。

漢王朝の武将・班超が少数精鋭で匈奴の陣営に夜襲をかける際、仲間を叱咤激励した際の言葉です。

虎口を脱する(ここうをだっする)

意味:危ないところから逃げおおせる

文字通り虎の口から逃げ出すことが出来て一安心な状況を指します。

また城郭の正面出入口も虎口と言いますが、防衛上の重要地点であることから攻め込むには敵の抵抗も激しく、虎の口に飛び込むような覚悟を決めたことでしょう。

虎口を逃れて龍穴に入る(ここうをのがれてりゅうけつにいる)

意味:危ないところから逃げたと思ったら、そこも危ないところだった

虎の口から逃げ出した先は、龍が棲む洞穴だった……「一難去ってまた一難」と言ったところでしょう。

逃げ出す先も、しっかり吟味しなければなりませんね。

三人、市虎を成す(さんにん、しこをなす)

意味:嘘も大勢で言えば真実味をもって伝えられる

ふつう、人里の真っただ中に虎なんて言われても信じられませんが、そんな出鱈目も複数人で言い出せば、さも市中に虎がいるような気にさせられてしまうもの。

「嘘も百回言えば本当になる」なんてことわざもありますが、そうしたデマに惑わされないようにしたいものです。

前門の虎、後門の狼(ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ)

意味:前門から虎、後門からは狼が迫る危機的状況

後門より迫りくる狼(イメージ)

厳密には「前門に虎を拒(ふせ)ぎ後門に狼を進む」で、前門で虎の侵入を防いでいたら、後門から狼が入って来てしまい、挟み撃ちにされては太刀打ちできない状態を指します。

まさに絶体絶命のピンチ、あなたならどうしますか?

千里の野に虎を放つ(せんりののにとらをはなつ)

意味:危険なものを解き放つ愚行

虎は千里の野を自在に駆け巡ると言われ、そんなことをさせたら気が気じゃありません。しっかり閉じ込めておけばいいものを、あえてそれを解き放ってしまう愚行を的確に示しています。

危険人物を粛清せずに追放として、叛乱の機会を与えるような状況でよく用いられますね。

虎を描いて猫に類す(とらをえがいてねこにるいす)

意味:理想が高すぎて、かえって失敗してしまう

せっかく虎の絵を描こうと思ったのに、出来てみたら猫の絵だった……そんなガッカリ感がにじみ出ています。

これが猫じゃなくて狗(犬)バージョン「虎を描いて狗に類す」もあるようです。

虎に翼(とらにつばさ)

意味:危険なものをより危険にする行為

虎に翼を与えたら、どこまでも飛んで行って人を食い殺し、とても安心して暮らせないでしょう。

また、強いものをより勢いづけるニュアンスでも用いられます。

虎になる(とらになる)

意味:酒に酔って暴れる

暴れるのであれば熊でも狼でもよさそうなものですが、やはりここは酔っ払った威勢のよさを虎に喩えたいところ。

ちなみに、昔はよく酔っ払いが警察に捕まり、入れられた留置所を「虎箱(とらばこ)」なんて言ったそうですが、それもここから来ているようです。

虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)

意味:後ろ盾を恃みに威張り散らす

虎の威を借る狐(イメージ)

昔、狐が虎を「私の後について来て下さい。皆が私を恐れるでしょう」と騙してつき従わせ、他の獣たちが虎を恐れたのを、虎は「皆が狐を恐れているのだ」と誤解した故事より。

他人の力を利用して弱い者が威張り散らす様子は、いつの時代も見苦しいものです。

虎の尾を踏む(とらのおをふむ)

意味:とても危ない行為、またはあえてそれをする愚行

虎の尻尾を踏みつければ、踏まれた虎は痛さに怒り狂い、あなたを襲い殺すでしょう。

やめとけばいいのに、世の中にはあえてそれをやって痛い目を見る人も少なくありません。

虎の子(とらのこ)

意味:とても大事なもの、転じてへそくり

虎は自分の子供をとても大切に育てることから、しっかりと抱え込んだ大事なものを表すようになったと言います。

「虎の子の10万円、競馬ですっちゃうなんて……」最近は、そんな会話もあまり聞かなくなりました。

虎の巻(とらのまき)

意味:秘伝書

古代中国の兵法書『六韜(りくとう)』のうち、基本的戦術をはじめとする実戦の要諦をまとめた「虎韜(ことう。第二巻)」を指します。

特に大切なことが書かれているため、後に秘伝書全般を「虎の巻」と呼ぶようになりました。

虎の娘を狗には嫁れぬ(とらのむすめをいぬにはやれぬ)

意味:家柄が釣り合わないこと

関羽

ここで言う虎とは、三国志の名将・関羽のこと。孫権陣営から縁談があったところ、こう言って拒絶したそうです。

断るにしても、言い方ってものがあるでしょうに……。これに激怒した孫権らが、対立を深めたのは言うまでもありません。

虎は死して革を留め、人は死して名を残す(とらはししてかわをとどめ、ひとはししてなをのこす)

意味:人は命よりも名誉を重んじるべきである

虎はその毛皮ゆえに狩られ、人は名誉のために命を賭けるもの。どうせ死んでしまうのであれば、末代まで残る名誉をこそ重んじるべきと説いています。

虎は千里往って千里還る(とらはせんりいってせんりかえる)

意味:どれほど遠くにいても、我が子のためなら必ず戻ってくる

先ほども書いた通り、虎は非常に子供を大事にすることを表すと共に、それだけ生命力にあふれていることも意味しています。

ちなみに古代中国の一里は約400メートルで日本の一里(約4キロメートル)の1/10ですが、それでも400キロメートルですから、やはり凄いですね。

猫は虎の心を知らず(ねこはとらのこころをしらず)

意味:小人物に、大志を抱く者の思いは理解できない

燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや、と同じですね。同じネコ科であっても、猫と虎では見ているものや、考えることが違うのでしょう。

暴虎馮河(ぼうこひょうが)

意味:無謀、無鉄砲なこと

歌川国芳「和漢准源氏 唐土 行者武松」

血気に逸って虎を素手で殺そうと挑み、大河を泳いで渡ろうとする無謀な勇気を言います。

何でも向う見ずに突き進むばかりでなく、時には退くのも勇気ではないでしょうか。

牡丹に唐獅子、竹に虎(ぼたんにからじし、たけにとら)

意味:よく似合うものの組み合わせ

刺青のデザインなどにもよく使われる唐獅子牡丹、そして虎と言えば竹林がお約束。

古来虎は風を呼び起こすものとされ、ざわめく竹がその威厳を表現しています。

張り子の虎(はりこのとら)

意味:中身のない人物

張り子の虎

中が空洞で、いつも頭をゆらゆら上下させていることから「中身のないハッタリ屋」や「いつもへこへこしているイエスマン」を連想させます。

また、紙の重ね貼りで出来ていることから水に弱く(糊がとけて崩れてしまう)、雨で外出を嫌がる者に対して「張り子の虎じゃあるまいし、さっさと行け!」なんてやりとりもありました。

羊質虎皮(ようしつこひ)

意味:本質を隠して強がる様子、あるいはその者

本当は羊のように気弱なのに、虎の皮をかぶって外見ばかり豪傑気取りの者を指します。

化けの皮がはがれて恥をかくことも多々あるものの、無用の争いを避けられることもなくはないので、TPOと匙加減では、悪くない処世術かも知れませんね。

龍虎相搏つ(りゅうこあいうつ)

意味:強い者同士が激突する

天上の龍に対して地上の虎。好敵手が相まみえ、全力で演じる死闘を表すこの言葉からは、見守る者たちの興奮まで伝わってくるようです。

終わりに

伊藤若冲「虎図」

以上、虎に関することわざや慣用句を紹介してきましたが、皆さんいくつ知っていたでしょうか。

こうした言葉を会話に節々にサラリと使いこなせるよう、日頃から素養を培っておきたいものですね。

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角田晶生(つのだ あきお)

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日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。
(ほか政治経済・安全保障・人材育成など)
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