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ディズニーのお話はどこの国の話か調べてみた 【白雪姫、シンデレラ、美女と野獣~他】

ディズニー映画を見ていると筆者はいつも「どこの国の話なのだろうか?」といった疑問が湧いてくることが多く、劇中に出てくる登場人物の衣装、名前、更には建物の建築様式から時代考証を考えるのが楽しみの一つである。

夢の詰まったディズニー映画の原作はどこの国の話なのか、原作との違い、劇中の時代はいつ頃なのかを調べてみた。

白雪姫

白雪姫は、ディズニーの長編アニメーションとして初めて作られた記念碑的作品である。

ディズニーのお話はどこの国の話か調べてみた

グリム童話 白雪姫

原作はドイツの「グリム童話」の中の「白雪姫」で、作者は「グリム兄弟」である。
作品の主人公「白雪姫」のモデルになったと思われる人物がいる。

16世紀のヴィルドゲン伯爵令嬢「マルガレータ・フォン・バルディック」である。

マルガレータは後のスペイン王「フェリペ2世(当時、皇太子)」と恋に落ちたという話が伝わっており、21歳の頃に2人の関係をよく思っていなかったスペイン王によって毒殺されたと言われている。

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スペイン最盛期の王 フェリペ2世

脇役で登場する「七人の小人」はドイツの民間伝承に出てくるドワーフで「小さいもの」を指す。
このことから、白雪姫はグリム童話を原作にした16世紀頃のドイツの話であると考えられる。

原作の大筋は比較的ディズニー映画と近い物になっているが、結末はなんと白雪姫が母親の魔女に復讐して魔女裁判にかけて拷問するといった過激な内容である。

シンデレラ

作者は17世紀のフランスの詩人「シャルル・ペロー
原作は「ペロー童話集」にある物語「サンドリオン(小さなガラスの靴)」である。

ディズニー映画の内容とサンドリオンは大筋がほぼ同じである。

靴がピタリと合ったシーン。ギュスターヴ・ドレによるイラストレーション

実はもう一つシンデレラは存在しており、グリム童話版のシンデレラ「灰かぶり」がある。

ディズニー映画の内容とは違い

・カボチャの馬車が登場しない
・ガラスの靴ではなく、金の靴と銀の靴になっている
・シンデレラの靴が脱げたのは偶然ではなく、王子が階段に靴が脱げるように粘着剤を撒いていた
・シンデレラの姉2人は最後自殺する

という、子供には見せることが出来ない内容のオンパレードである。

衣装と建築

映画に登場するシンデレラのドレスと王子様の服装は、20世紀初頭のデザインをモチーフにしている。
さらにシンデレラの普段着はペロー原作の17世紀のスカートにしては丈が短く、1940年代のアメリカの女性の服を参考にしているなど、時代考証よりも映画を観る人に親近感を感じてもらうためのデザインであった。

ディズニーのシンデレラは原作の時代をそのまま再現するのではなく、ファンタジーとしてより良い物を目指すために様々な要素を取り入れた世界観の作品である。

シンデレラ城のモデルになっているお城は一般的にはドイツの「ノイシュバンシュタイン城」と言われているが、実際はフランスに存在する複数のお城を参考にして考案されている。

・ユッセ城
・フォンテーヌブロー城
・シュノンソー城
・シャンボール城
・ショーモン城

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ノイシュバンシュタイン城 シンデレラ城のモデル

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フォンテーヌブロー城

ちなみにシンデレラの落としたガラスの靴は、左足の靴である。

美女と野獣

美女と野獣は1756年フランスの「ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン」が書いた物語「美女と野獣」がベースとなっている。

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ウォルター・クレインによる『美女と野獣』挿絵

「原作と映画の違い」

・ディズニー版ではヒロインのベルは貧乏人の設定であるが、原作は非常に裕福な家庭の娘である
・家族構成も映画では父親との二人暮らしであるが、原作は父親と兄弟3人姉2人である
・城の内部にある調度品の(燭台やティーポットなどの)のキャラクターは出てこない
・悪役は原作では姉二人であるが、映画ではオリジナルキャラクター(ガストン)

『衣装や建築』

お城の内装や、装飾品も18世紀のロココ様式を再現している。
ドレスに関しては19世紀のドレスデザイン(イブニングドレス)である。

原作が書かれた18世紀のドレスは「パニエ」といって、すそ広がりのデザインが基本であったがその服ではダンスをするシーンで映えないので、19世紀のドレスを採用しているとのことである。

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パニエ

イブニングドレスは舞踏会の時に着るドレスである

野獣の着ている燕尾服も19世紀のデザインである。

こうした事から建築や装飾品は18世紀のフランスロココ調デザインでありながら、主役の2人の衣装は19世紀のデザインである。
ここも映画として映えるようにアレンジされているようである。

リトルマーメイド

原作は19世紀デンマークの童話作家である『ハンス・クリスチャン・アンデルセン』の「人魚姫』である。

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人魚姫

『原作との違い』

・ディズニー版では地上に絶対上がってはいけない事になっていたが、原作は15歳になれば自由に地上にあがることが出来る
・セバスチャン、アースラなどの登場キャラクターはオリジナルキャラクター
・ヒロインのアリエルは声と控えに人間になるが、原作では人間になる為の薬と引き換えに舌を切られる
・原作では王子と結婚は出来ず、人魚姫は人魚にも戻れることなく泡になって死んでしまう

といったバットエンドの内容である。

『登場キャラクターや海』

デンマークは人魚の像でも有名な国であり原作はバルト海の話だが、ディズニー映画のリトルマーメイドの舞台「アトランティカ」は熱帯の海に生息しているはずのサンゴが映っていることから、温暖な地中海の海である。

登場する「アリエル」の父で海の王である「トリトン」はポセイドンの息子であり、三又の矛「トライデント」を持っている。

アラジン

原作は「千夜一夜物語の中の物語」の一つである「アラジンと魔法のランプ」である。

千夜一夜物語の別の名称は「アラビアンナイト」だが、アラブ地域の話だけでなく、ペルシャ、インド、ギリシャ、中国の説話も登場している。

魔法の庭園に佇むアラジン

『原作との違い』

・アラジンの原作での話は『アル・シン』という中国のお話である
・アラジンは中国で母親と貧困生活を送っていたところ魔法のランプを発見した、というのが原作での話

『建築、世界観』

ディズニー映画の「アラジン」は世界観がイラン(ペルシャ)とアラブの砂漠を舞台にしており、王女ジャスミンの住んでいるお城はインドにある「タージマハル」をモチーフにしている。

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タージマハル

空飛ぶ魔法の絨毯はペルシャ絨毯である。

ペルシャ絨毯

塔の上のラプンツェル

塔の上のラプンツェルは、ディズニー映画として初めてフルCGで描かれた作品である。

原作はグリム童話の「髪長姫」で原作者は「グリム兄弟」である。

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塔のラプンツェルを発見する王子

「原作との違い」

・この髪長姫の話は非常に残酷であり性的描写もあったので、修正が加えられて現在の形になっている。
・ラプンツェルとは妖精が育てていた野菜の名前
・ラプンツェルは貧しい夫婦の子供で妖精の育てた野菜「ラプンツェル」を勝手に食べたことで妖精が怒る
・夫婦から妖精はラプンツェルを取り上げ塔に閉じ込める
・塔に忍び込んだ王子との間に子供ができて妊娠する
・妊娠したラプンツェルに激怒した妖精によって長い髪を切られ塔から森へ捨てられる
・ラプンツェルがいなくなった事実に王子は悲しみ塔から身投げして自殺未遂、視力を失う
・視力を失った王子はそれでも森の中を探し回りラプンツェルと再会し、喜びの涙で王子は視力を回復して幸せな生活を送る

といった中々ハードな内容になっている。

「衣装や建築」

ラプンツェルという名前からドイツ方面の名前であり、金髪という特徴からゲルマン系民族であると推測される。

彼女の衣装パープルのドレスは16世紀のルネサンス時代の物と19世紀のデザインを取り入れているようである。
監督は時代設定は1780年としているが、時代考証を取り入れながら現代風にアレンジした物であると語っている。

作中に出てくる悪党や盗賊も、スカンジナビアのバイキングや中世のゲルマン人が多用した革製の防具やツノのついた兜など、北方ヨーロッパのイメージも強く影響を受けている。

ドイツのメルヘン街道にある古い城が映画の舞台のモデルである。

最後に

・白雪姫 原作ドイツ
・シンデレラ 原作フランス
・美女と野獣 原作フランス
・リトルマーメイド 原作デンマーク
・アラジン 原作ペルシャ(舞台は中国)
・塔の上のラプンツェル 原作ドイツ

このようにディズニー映画の原作は、世界中の童話や民話を元にしている。

原作の再現や時代考証より、ディズニーの世界観によってファンタジーや映画としていかに素敵な世界に見えるかが重視されている。

もし時代考証を忠実に守った映画であったならば、美女と野獣のベルはパニエでダンスをして、あの有名なダンスシーンはもっと地味な物であっただろうし、リトルマーメイドは青い海ではなく、氷の張るような寒い海で空も曇りがちのどんよりした海であっただろう。

各地の童話や民話を、より親しみやすい大衆向け作品として世界中に広めたのがディズニーなのである。

 

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