5月ごろになると、ベランダやコンクリートの壁、花などに「大量の小さい赤い虫」が湧いているのを見て、ぎょっとした経験はないだろうか?
筆者は今年引っ越ししたのだが、新居のベランダでなんとなく手すりの下のコンクリートを見たら、何匹もの小さな赤い虫が動いていてビックリした。
それほど素早い動きではないが色が真っ赤でちょっと気持ち悪いし、何よりなぜそこに発生しているのか理由がわからないことが不気味なのである。
花や生物の死骸などに湧いてるならまだしも、なんの餌もなさそうな無機質なコンクリートの上をなぜうろうろしているのか?
シロアリのように、建築物にとって良くない虫なのでは?と少し怖くなって、調べてみた。
正体はタカラダニというダニだった
結論から言うと、この小さな謎の赤い虫の正体は「タカラダニ」というダニであった。
ダニであるので昆虫ではなく、クモと同じ蛛形鋼(しゅけいこう)のダニ目 に属している。正確には、ダニ目前気門亜目タカラダニ科アナタカラダニ属のカベアナタカラダニ(Balaustium murorum)という種である。
ダニの中では比較的大きく、体長は1mm前後。
日本においては、北海道から沖縄まで全国に分布し、5月のGW明け頃から、日当たりの良い公園のコンクリート部分や階段やベランダ、花などに発生する。
しかし寿命は短く、7月頃には死んでしまい、ぱったり見かけなくなる。
生態はまだ不明
詳しい生態についてはまだ不明な点が多く、メスしか発見されていないことから。年1回の単為生殖と考えられている。
エサは花粉
餌についても詳しくは不明であるが、花粉を食べていることだけは確実なようである。
つまり、無機質なコンクリートの表面などに大量に発生していた理由は、コンクリートにくっついた花粉を食べていたのである。
筆者が危惧したシロアリのように、建造物に関わる何かを食べていたのではなく、タカラダニたちはただ表面にくっついた花粉を食べていただけなのであった。
人にも無害だった
しかもタカラダニは、マダニやイエダニように哺乳類にくっついて吸血したりもしない。ヒゼンダニやニキビダニのように皮膚にくっついて皮膚病の原因になったりもしない。
彼らはただ、コンクリートの上をうろうろして、花粉を食べているだけの人畜無害のダニなのであった。
とはいえ手で潰したりなどしてそのまま長時間放置すると、体液で皮疹を生じる恐れもあるそうなので、むやみやたらには触らない方が良さそうだ。
駆除したい場合は、コロコロなどで取ってしまうか、水で流してしまうのが良いだろう。
寄せられているタカラダニの被害についても、ただ「見た目が気持ち悪い、刺されないか教えてほしい」というのが大半だそうである。
つまり詳しい生態はまだ不明であるが、現状は「見た目が気持ち悪いだけで無害」というのが結論である。
見た目はグロいが、実はただ花粉を食べたくてウロウロしていただけなのだと知ると、印象も少し変わっていきそうである。
参考 : タカラダニをご存知ですか? 京都府保健環境研究所
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