インターセクシャルとは
「あの人、男?女?」
「最近はLGBTとか、ジェンダーとか、よくわからん」
そんな会話を耳にしたことがある。
道行く人の性別を、われわれは無意識のうちに判別したがる。
「まだ結婚しないの?」
「子供いないと寂しいよ」
そんなふうに、ふつうの人間は「適齢期」になると恋愛をし、結婚をし、子供をつくることが世の中から期待される。
そんな世の中でひっそりと生きている「インターセクシュアル」な人々について触れていきたい。
知られざる疾患「インターセクシュアル」
セクシュアルと聞くと、何やらまたLGBTの話、あるいは興味本位のエロティックな話題と思う人も多いだろう。
しかし残念、これは全くそういう類の話ではない。疾患の話になる。
インターセクシュアルは正式にはDSD、性分化疾患と言われ、かつては半陰陽、ふたなりといった言い方もされてきた概念だ。
2009年の陸上世界大会で優勝した女子陸上選手キャスター・セメンヤ選手が有名な例だ。
「聞いたことある。男でも女でもない人のことでしょう」
という方がいたら、少し待ってほしい。それは正しい概念ではない。
定義としては「生物学的な性別の構成要素が、典型的な男と女どちらにも分類できない状態」、これがインターセクシュアル、DSDの人の状態である。
生物学的な性別とは
さて、生物学的な性別というと、「ついてるか、ついてないか」で簡単に片づけられがちである。しかし現実はもっと複雑な構成になっている。
人間の身体的な性を構成する要素は、性染色体、内性器、外性器、ホルモンに分けられる。この4要素がすべて男性あるいは女性として揃っている場合、典型的な男性・女性に発達するが、そうでないケースもある。それがDSDだ。日本では、新生児の2000人に1人が当てはまるといわれる。
性染色体について
典型的には、男性はXY、女性はXXの組み合わせの染色体をもち発達していくが、そうでないケースも存在する。
DSDの中でも有名なクラインフェルター症候群は、基本は男性でありながら染色体がXXYである(Xの数がXXXXY型まで存在し、Xが多いほど障害の度合いが強い)。この症例は日本では1000人に1人存在するとされ、精巣の発達不全や女性化乳房、骨粗鬆症へのかかりやすさ、といった症状を特徴とする。
次に有名なターナー症候群。このケースでは基本が女性でありながら染色体がXひとつだけしか持っていない。日本では2500人に1人いるとされ、卵巣機能不全を特徴とし、腫瘍や糖尿病のリスクが高い。場合によっては子宮が存在しないケースもある。
内性器について
通常、女性は内性器として子宮と卵巣を有する。
ヒトは受精後、妊娠第6週頃から性腺を分化させていく。
つまり、元々どちらでもなかったものが、精巣か卵巣に分かれていくのだが、この過程においては複雑な因子が関係しているため、何かの拍子で正しく分化しない場合がある。
外性器について
典型的男性は、睾丸と陰茎、女性は陰核や陰唇、膣口といった形状をもって生まれてくる。
DSDのうち、先天性副腎皮質過形成のケースは、性別が特定できないケースの七割を占めており、新生児の約5000人から15000人に1人という頻度で観察される。
これはホルモンをつかさどる副腎皮質の異常により色々なホルモン異常が発生することによるもので、男性ホルモンの一種であるアンドロゲンが過剰に分泌してしまうものだ。
ホルモンについて
染色体XYの場合、通常はアンドロゲンという男性ホルモンが作用し、性器が男性化していく。
しかしXY染色体を有しても、アンドロゲンの受容体(レセプター)が働かないアンドロゲン不応症のケースでは、性器が男性化することはなく女性型として生まれる。
この場合、女児として育ち本人もそのように思って成長するが、思春期になっても月経がないことをきっかけに検査をし、未発達な精巣が体内にあると判明する。
これらの例を含め、DSDの種類は60種類以上にものぼる。
非当事者ができること
このような複雑な障害・疾患を抱えているインターセクシュアル(DSD)の当事者を知り、非当事者はどうすればよいのだろうか。
それは、まず当事者を「ふつうの男女」として扱うことだ。
彼らの症例は世間一般の認知度が低い。その一方で、LGBT界隈の運動やジェンダー・フェミニズムの考えはかなり広まった。
見た目が中性的だからといって、勝手に「特殊な性の個性を持っている人」「性別なんて関係ない」という連想をするのはやめて欲しいと当事者は訴えている。
まれに「LGBTI」と表記されることもあり、LGBT側は良かれと思っているがIのIntersexual当事者たちは迷惑をしており「私たちは中間の性別なんかじゃない、病気なだけ」と考えているのだ。
次に、「体の性別は複雑に成り立っており、非典型的なケースもあると認識する」こと、これも大切だ。
世間では
「ついてれば男、ついてなければ女」
「男は射精するもの、女は妊娠するもの」
というシンプルな理解が一般的だ。
しかし、それは典型的で健康な男女のことであり、そうでないケースも少なからず実在していることは頭のどこかに入れておきたい。
さもないと、無知な言動によって、どうにもならない先天的疾患を否定され人生を投げ出そうとしてしまう人も生まれてしまう。
その人の主張に耳を傾ける
そして当然ながら、インターセクシュアル(DSD)をもつ当事者の中にも、更なるマイノリティとしてLGBTは存在しうる。
DSD当事者の大半は、自分たちの先天的障害をジェンダーや指向の問題と混同されることに困っており、ふつうの男女として生きていきたいと思っている。
しかし中には、あえて中性としての人生を楽しみたいという人や、「ストレート」ではない性的指向を持っている人もいる。
最終的には、目の前にいる個人がどのようなあり方を良しとしているか。そこに耳を傾けることが一番理解に近いのかもしれない。
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