見逃されている栄養素 フィトステロール
皆さんはフィトステロールという栄養素を聞いたことがあるだろうか。
おそらく耳馴染みのないワードだと思われる。
一時期「ファイトケミカル」という単語が健康食品界隈で話題になっていたが、ファイトケミカル(植物由来の化学物質)のひとつであるこの成分について、今回は掘り下げてみたい。
フィトステロールとは
フィトステロールとは、簡単に言えば「植物のコレステロール」のようなものだ。コレステロールは動物の細胞膜に存在し、フィトステロールは植物の細胞膜に存在する。
フィトステロールは単一の物質ではなく、大豆油に含まれるシトステロールやシグマステロール、カンペステロール、ガンマオリザノールといった40種類以上の物質を指す総称だ。
つまり「ビタミン」や「ミネラル」といったような概念になる。
通常、動物性食品に由来するコレステロールは、過剰摂取すると体内で悪さをする悪者となることが有名だ。一方、フィトステロールはその正反対の役割をする。
通常、動物性のコレステロールは多くが小腸で吸収されるが、そこにフィトステロールが存在するとコレステロールの吸収を抑える作用があると1950年代に発見された。
このような働きから、有識者の間では「第7の栄養素」として密かに注目されている。
コレステロールの吸収が抑制されれば血中コレステロール濃度が低下し、動脈硬化や心疾患など循環器系のトラブルを予防することができる。そこまで健康診断結果が気にならない人にとっても、コレステロールが減るというのは嬉しいニュースだ。
他にも、免疫調節機能や前立腺肥大の予防にもエビデンスがあり、がん予防作用も期待されている。
外食や総菜などで多くなりがちなコレステロール摂取量。
この吸収を抑制し、健康的な食生活へ寄せていってくれるフィトステロール。
世にあまり知られてこそいないが、これを利用しない手はない。
フィトステロールを多く含む食品は?
一般的に、野菜を食べることが健康の維持に必要だと言われている。
野菜を食べて補給できる栄養素には、ビタミン類や食物繊維といったものがイメージされやすい。
けれどもいわゆる「野菜」以外の植物性食品に、このフィトステロールは多く含まれている。
フィトステロールを含む食品は
トウモロコシ、ゴマ、ピーナッツ、大豆
ごま油、コメ油、菜種油、コーン油
といった、マメ類・穀類とその油が挙げられ、
タマネギ、ニンジン、レタス、イチジク、バナナ、リンゴ
といった青果類にも少量ながら含まれる。
植物性に分類されるキノコにはエルゴステロール、海藻にはフコステロールといった固有のフィトステロールが含まれる。
また、「植物ステロール」の名称で販売されているサプリメントも存在する。
こんなにも多種多様なステロールが植物性食品に含まれることを知ると、菜食のメリットを見直す人も多いのではないだろうか。
ここで気をつけたいのは、「この成分が体に良いから沢山食べればいい」という認識だ。
一気に健康を得たいからといって、一つのものばかりを食べていると栄養バランスは崩れる。また、油の多量摂取カロリー過多に陥らないようにしたい。
体に良い油が牙をむく時
栄養バランスの他には、植物油を使用する際の変質に要注意だ。
いくら健康に有益なフィトステロールを多く含む植物油といっても、揚げ油などに使用すると高温の加熱により酸化する。
また、光の当たりすぎる場所に置いたり、開封後長期間保管したりすることでも酸化が進む。
酸化した油は風味が悪くなるだけでなく、過酸化脂質となって体にはっきりと害を与えることが明らかになっている。
例えば「コレステロールが高めの方に」といった特定保健用食品(トクホ)の植物油は好ましいものだが、それを揚げ物に使いまわししては意味がなくなってしまう。
理想的なのは、これらの油を適量、ドレッシングとして利用することだ。
もし揚げ物、炒め物に使う場合でも、温度は必要以上に上げず使いまわさないのがベター。
そして可能であれば、大きなボトルよりも小さいボトルで新鮮なものを使い切っていくことが奨められる。
なお、植物性油から作られる油脂食品「マーガリン」があるが、これは製造の過程でトランス脂肪酸という物質を含む。
このトランス脂肪酸は、専門家の間では悪玉コレステロール値を増加させるということで有名だ。
そのため、各社では製造時にトランス脂肪酸を0に近づけるべく工夫したり、健康に良い成分を添加してヘルシー方面に近づけようと努力している。
あまりマーガリンの使用はおすすめできないが、購入する場合は表示を見比べて、よりトランス脂肪酸の少なそうなものを選ぶと体にやさしい。
今まさに注目されるべき植物のチカラ
今年猛威を振るっている新型コロナウイルスだが、重症化リスクが高いとされる基礎疾患の中に「肥満」も含まれる。
BMIが30以上の新型コロナウイルス感染者は入院のリスクが2.1倍、死亡のリスクが1.5倍であるといわれている。
通常であれば体型に無頓着で好きに飲み食いしているような男性こそ、心を入れ替えて食生活を見直していく時期かもしれない。
飲食店や奥さんに食生活を丸投げするのではなく、自分の体は自分で守ろうとする習慣をつけたいものだ。
肥満対策と健康管理の強い味方、フィトステロール。
「植物なんて…穀物なんて…」と普段なら言っているあなたも、この機会に、フィトステロール生活はじめてみませんか。
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