ミリタリー

世界の特殊部隊 について調べてみた「SAS、スペツナズ、フランス外人部隊」

特殊部隊というとアメリカの十八番のように思うが、実際はそうではない。

もともとは、アメリカの特殊部隊もイギリス陸軍の特殊部隊から知識や技術を学び、さらにそのノウハウは合同訓練などにより、世界各国の特殊部隊に広がっている。

各国の置かれた状況により、特殊部隊も様々だ。特に北朝鮮問題、アフリカの内戦、対テロ戦など、とかくクローズアップされることの多い特殊部隊。時代は彼らの能力を欲していた。

SAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)

世界の特殊部隊
【※ランドローバーに乗るSAS隊員】

Who Dares Wins(危険を冒したものが勝利する)」をモットーに活動するSASは、世界で始めての特殊部隊といわれる。

第二次世界大戦中、アフリカでのドイツ軍との戦闘において、敵軍の航空機や基地などを奇襲攻撃するための小規模部隊として編成された。SAS(Special Air Service)はその名称から空軍特殊部隊と訳されることがあり、これを誤訳とする説もあるが、当時はドイツ軍に対する欺瞞工作として「Air」の文字を入れたという説もある。

いずれにせよ「特別な目的のために創設された部隊」、特殊部隊の始まりがここにあった。

その後は、世界のイギリス領や国内での治安維持に貢献し、1980年の駐英イラン大使館占拠事件において全世界にその対テロ能力を示した。

あまり映画の題材として扱われることはないが、湾岸戦争時の実話を基にした「ブラヴォー・ツー・ゼロ」は、その苛酷な任務をまざまざと見せ付けた。そして、現在でもアメリカのデルタフォースやネイビーシールズに勝るとも劣らない世界最強の特殊部隊として君臨している。

スペツナズ

世界の特殊部隊
【※アルファ部隊の訓練】

ロシアのスペツナズは、SASのように部隊の名称ではなく、ロシア語で「特殊任務部隊(Spetsnaz)」を意味するが、東側の特殊部隊のなかでは知名度、実力共に抜きん出ている。

1950年に創設されたが、旧ソ連という国柄もあって、その数は少数精鋭とはいえない状態だった。多くの優秀な兵士を集めて広大な国土に割り振るため、養成プログラムが短縮されたおかげで、その実績が認められるには1979年のアフガニスタン侵攻まで待たねばならなかった。

同時に、旧ソ連の諜報機関「KGB」にもスペツナズは設立された。上記のスペツナズは陸軍の特殊部隊であるのに対し、こちらは国内での活動を主目的とした少数精鋭部隊で、編成や性質はアメリカ軍のデルタフォースなどに近い。現在は「ロシア連邦保安庁(FSB)」の指揮下にあって、要人警護、施設防衛、人質救出などを行う。

FSBのスペツナズには「アルファ部隊」と「ヴィンペル部隊」が存在するが、アルファ部隊でも隊員数は約400人ほどといわれており、アメリカ海軍ネイビーシールスの約2,500人と比べてもかなり規模が小さい。また、チェチェン紛争では両部隊ともその知識と技術を必要とされ、前線にも投入された。

第2外人落下傘連隊


【※一般のフランス外人部隊兵】

フランス外人部隊のなかで唯一の空挺部隊が第2外人落下傘連隊である。外人部隊そのものが特殊部隊のようなものだが、そのなかでも最精鋭。

もともと空挺部隊はどの国でもエリート部隊だが、第2落下傘連隊は潜入情報行動コマンドーグループ(GCP)という少数精鋭の部隊を擁している。市街地、寒冷地、山岳など活動の場所も問わず、爆破や狙撃などのあらゆる作戦行動に対応できる。

しかし、その創設は1948年と歴史は古く、第一次インドシナ戦争アルジェリア戦争と激戦の連続であった。当時は第1落下傘連隊も存在したが、1961年にシャルル・ド・ゴール大統領の退陣を迫る反乱に参加、これに失敗したため解隊となる。以後、外人部隊唯一の落下傘連隊として精鋭の名を欲しいままにした。

旧殖民地での紛争鎮圧や、湾岸戦争、PKO、近年ではアフリカでの紛争などに介入し、アメリカ軍よりも軽いフットワークを見せている。

特殊作戦群

世界の特殊部隊
【※アメリカで合同訓練を行う自衛隊の一般隊員】

2004年に創設された陸上自衛隊唯一にして、初の特殊部隊。「 Special Forces Group」から通称「S(エス)」とも呼ばれる。

それまで陸上自衛隊の精鋭部隊といえば千葉県習志野駐屯地の第一空挺団だったが、これは他国の空挺部隊と変わらず、有事の際に活躍するものであった。しかし、世界的に対テロ戦、ゲリラ戦が重要視されるようになり、自衛隊内にもあらゆる状況に柔軟に対応できる特殊部隊が必要とされ、アメリカ陸軍のデルタフォースやグリーンベレーを手本とした同部隊が設立された。

その内容は、高度な情報管制により明らかにはされていないが、情報収集や外国での要人警護など、自衛隊の他の部隊と連携して行われると想定される。装備も個人所有が厳しい自衛隊において、自費で光学照準機を購入したり、特殊部隊出身者が教官を務める海外の「民間軍事会社」で研修を受けるものもいる。銃器にしてもアメリカ軍制式採用のM4カービンや、12,7mm対物狙撃銃など通常の部隊では考えられない海外製のものを多数採用していると考えられる。

自衛隊という性質上、他国の特殊部隊のように海外で軍事作戦を行うことはないが、万が一に備えて厳しい選抜と訓練を欠かさないといわれているのだ。

最後に

このように特殊部隊はアメリカだけのお家芸ではない。今日では自衛隊にも創設されたことからも、いかに国際情勢が緊迫しているか分かるだろう。

しかし、一方で特殊部隊の存在は抑止力としても働くことがある。我々が知ることのできる部隊は、国がその存在を認めたか、わざとリークされたものに過ぎない。

恐らくは、世界の多くで存在すら明かされていない特殊部隊が活躍しているはずだ。

関連記事:特殊部隊
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