自然&動物

ドードー鳥絶滅の歴史 【伝説の飛べない鳥は再び世に現れるのか?】

飛べない鳥

ドードー鳥といえば「不思議の国のアリス」などフィクション作品で有名な鳥ですが、現在は「絶滅動物の代名詞」として有名な鳥です。

この鳥も以前紹介したステラーカイギュウと同じく、天敵が存在せず穏やかな性格が災いし絶滅してしまったのですが、ドードー鳥は現在も人気のある生物のため「一目見てみたい」という声が多くあります。

そのため、クローン技術を用いてドードー鳥を現世に復活させようという計画が世界各地で議論されています。

「伝説の飛べない鳥」の絶滅の経緯と復活の禁忌を交えてご紹介します。

生態について

ドードー鳥絶滅の歴史

画像:モーリシャスドードー wiki c

正式名はモーリシャスドードーと言います。(※以下有名なドードーにて記述)

生息地はマダガスカル沖のマスカリン諸島モーリシャス島。植物食性で果実や木の実などを主食にしていました。

頭部にある大きなクチバシは固い木の実の殻を砕くのに重宝し、嗅覚も優れていたため容易に餌を確保することが出来たと言います。

ドードーは長い間その特異な形態から分類項目が議論されてきたのですが、以外にも鳩(ハト)に近い生物であることが判明しています。

全長は約1メートルと意外に大きく、体重も20キロ近くあったとされます。また、ダチョウなどの鳥類と同じく翼が退化しているためドードーは飛行することが出来ず、さらに動くのが苦手という致命的な弱点を持っていました。

しかし、ドードーが住むモーリシャス島は世界から隔絶された孤島であり、天敵といえる生物が島に存在しなかったため、彼らはのんびりと生息することが出来たのです。

ドゥドオ duodo(のろま鳥)と呼ばれて

15世紀半ばにヨーロッパで大航海時代が幕を開けると、1507年にポルトガル人によってマスカリン諸島が発見されます。

上陸したポルトガル人らは奇妙な鳥を発見するのですが、そのあまりにもマヌケで鈍い動きを見て彼らをこう呼びました。

Doudo ドゥドオ(のろま鳥)

これが現在のドードーの名前の由来と言われています。

ドードー鳥絶滅の歴史

画像:オランダ水兵の島での生活を描いたスケッチ(左上にドードーが見える)wiki c

その後、1598年にオランダ人提督であるヤコプ・コルネリスゾーン・ファン・ネックが艦隊を率いてモーリシャス島に寄港すると、彼らの航海日誌によって初めてドードーの存在が公式にオランダ本国に報告されます。

また、船員らはドードーを食べてみるのですが、煮込むと肉が固くなり、臭いもきつかったため不評でした。

そのため、食事にドードー肉が出ると船員達はこれを「ヴァルクフォーゲル(walgvogel 嫌な鳥)」と呼び、ウンザリしたと言います。

皮肉にも食用として向かなかったため、乱獲されることはなかったのですが、それでも貴重な食料として重宝されたため、一日に200羽近くが捕らわれることがあったと言います。

モーリシャス島の開発

ファン・ネック提督の寄港後、モーリシャス島に続々と入植者が移住を開始します。

それにより、ドードーの住処である森林はサトウキビやパイナップルなどの農地に開拓され住処は減少、さらに移住者らが持ち込んだイヌやブタ、船に潜んでいたネズミなどによってドードーの卵やヒナたちは襲撃されてしまいます。空を飛ぶことが出来ないドードーは地上に卵を産むため、彼らにとって格好の獲物だったのです。

また、移住者らがドードーを捕食することが次第に常識化してきたり、おもしろがって殺したりすることが多々あったため、この頃からドードーは個体数を一気に減少させていきます。

絶滅

1681年、イギリス人ベンジャミン・ハリーの目撃を最後にドードーは姿を消します。

また、ヨーロッパで各地に見世物として持ち込まれた個体も環境に馴染めず、全て死に絶えてしまいました。

存在が正式に報告されてから83年後、「飛べない鳥」ドードーはこの世から絶滅してしまったのです。

ドードー鳥絶滅の歴史

画像:オックスフォードに現存するドードーの唯一の頭部剥製 wiki c

ドードーの唯一の剥製がイギリスのオックスフォードにあるアシュモレアン博物館に現存していたのですが、残念なことに管理状態の悪さから1755年に焼却処分されてしまい、標本は頭部、足などのごくわずかなものしか残されていません。

また焼却処分してしまった件に関しては、「ドードーの剥製はオックスフォード以外にもたくさんあるだろうと思っていた」「ドードーが既に絶滅してること自体知らなかった」など諸説あります。

ドードー復活計画

絶滅してしまったドードーですが、2005年に状態の良い化石が発見されDNAの採取に成功しています。

またDNAの解読により、現代の技術を用いてドードーを復活させようという遺伝子工学企業がいくつか名乗り出ています。

方法としてはドードーと近縁種であるミノバトの卵からドードーを誕生させるというものであり、もし復活に成功すれば、動物種同士の関係性や病気などの脅威から生物を守る方法を多く発見できるというのがドードー復活の見解でもあります。

しかし、ドードーの復活には以下のような否定的な意見も存在します。

・あくまで類似種の復活であり、完全な種の復活ではない

・復活させたとしても、野生に適応できず結局人間で管理せざるを得ない

・そもそも現在も絶滅に瀕している動物を守ることが最優先である

また、無暗に絶滅種を復活させることは

「我々人類が本当に解決しなければならない問題が何なのかを見失う恐れがあるのではないか?」

と哲学的疑問を投げかけています。

ドードーの絶滅と復活に我々はどう向かい合うべきなのでしょうか…。

参考文献:絶滅動物物語 うすくらふみ(著)/ 今泉忠明(監修)小学館

 

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