古代文明

世界の大洪水伝説 について調べてみた

大洪水伝説

聖書の洪水伝説

みなさんは、「大洪水伝説」と聞くと何を思い浮かべるだろうか? 一番有名なのは、キリスト教の聖書にある「ノアの方舟」ではないだろうか。

神が地上に増えた人々やネフィリムが悪を働いていることに心を痛め、「正しい人間」であるノアに、大洪水を起こすから方舟を作るようにと命じた。信仰心にあついノアとその一族は神のいうとおりの材料を用い、大きさも同じように作り、全種類の動物をひとつがいずつ乗せたのである。

洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものをすべて滅ぼしてしまった。その水は150日も続いたのだ。ノアの方舟はアララト山の山頂についた。ノアが鳩を放つと、オリーブの枝を咥えて帰ってきたことから、地上から水が引いたことを知り、方舟から降りて祭壇を作り神に祈った。神は契約のあかしとして虹をかけた。
というストーリーである。じつは、このほかにも世界中に大洪水伝説があったのである。

ギルガメッシュ叙事詩の洪水伝説


歴史の授業で習った人もいるであろう『ギルガメッシュ叙事詩』にも、大洪水について書かれている。

エンリル」という天空の神が登場する。エンリルは、増えすぎた人々が騒ぎ立てる音が原因で不眠症になってしまった。

いらだちを覚えたエンリルは、さまざまな天変地異を起こして人間たちに反省を促そうとした。ところが人々は反省するどころか、さらに騒ぎ立てたのである。現代日本でいえば、アパートの隣室からの騒音で不眠症になり、申し立てをしたところよけいうるさくなったというところであろう。
とうとう怒りが頂点に達したエンリルは、大洪水を起こして劇的にすべてを始末してしまおうと考えた。この計画は途中までうまくいっていたが、最後のところで出産の女神イシュタルにばれてしまう。彼女があまりの絶望に泣くのを見た知恵の神エアは、好意を持った一部の人間に方舟の作り方を教え、さまざまな動物も乗せるように指示した。こうして、人間や動物はギリギリのところで救われたのである。

お気づきかとは思うが、聖書の「ノアの方舟」とそっくりなのである。ギルガメッシュ叙事詩は紀元前3千年頃にメソポタミアで書かれており、おそらく世界最古のもの。つまり、旧約聖書からさかのぼること2千年以上前に書かれたのである。その後、この叙事詩は何世紀もの間、中東を中心としていたるところで書き広められていった。中東にある大洪水伝説は、形や言葉は若干の違いはあれど一様にみられる。それを考えると、古代オリエントの文献に見られる大洪水伝説は、このギルガメッシュ叙事詩に起源があると思われる。

 

竹内文書の洪水伝説


オリエント以外の地域にも大洪水伝説は見られる。その一つが、日本にも存在した。
竹内文献』というものがある。このなかでは、上古の時代だけで7回も大洪水が起こっている。

ノアの方舟伝説と同じ内容だとしたら、上古時代の人間はどれほど神を怒らせてしまったのだろう。

この文献は竹内宿禰の子孫、竹内家に伝わるもので、第8代天皇の孝元天皇の孫である竹内宿禰から数えて3代目の平群真鳥が神代文字で書いた太古文献をまとめたものである。

※武内宿禰(たけしうちのすくね/たけうちのすくね/たけのうちのすくね)

天地創造から全世界の超太古の真の歴史を伝えるものとされているが、貴重な文献であるのに原本はなく、「神代の万国史」というタイトルで編纂された活字本が残っているのみである。※神代の万国史は一般に販売されておらず、茨城県の皇祖皇太宮に申し込むと販売してくれます → こちら

神武天皇即位前4596年のことである。

「即位21年ウベコ月、天地大変、土の海となり5色人多く死す・ナンムモ、アミン」

とある。上古という大昔に「5色人」という言葉があるのに驚く。

上古の時代にはいわゆる「水の洗礼」による天変地異が何度かあったが、神は「二度と人類を水で滅ぼさない」という契約をしたとある。
これが、日本にのこる大洪水伝説である。

 

ウイチョル族、マサイ族の洪水伝説

ほかにも、世界各地に大洪水伝説があるので、紹介しよう。
メキシコのウイチョル族という民族にはこのような伝説が残っている。

開墾作業にいそしんでいた、とある男のもとへ女神が現れ

「5日と経たないうちに大洪水が起きる。あなたの身の丈の高さの箱を作りなさい」

と告げる。

予言通り、大洪水が起こるが箱は5年もの間、海に浮いていた。6年目になってようやく水は引きはじめ、男が入った箱はサンタ・カタリナ近くの山に漂着したという。

マサイ族にも似たような伝説がある。神が長期間に渡って激しく雨を降らせたので大洪水が起き、人間を含めて全動物が溺死した。

だが、敬虔なトムバイノットと彼のふたりの妻、6人の息子とその妻たち、あらゆる種類のひとつがいの動物達だけは船に乗り込んで無事だったというものであり、ノアの方舟に似ている。

大洪水伝説 の地質学的証明

世界中に大洪水伝説があることがわかったが、それらはただの伝説にすぎないのか? という疑問がわいてくる。

実は地質学的にも実証されているものがある。こんな発掘があった。

古代シュメールの都市ウルの地下約12メートルのところに洪水沖積層が見つかった。

厚さ約3メートル。遺物を含まない、細かい粘土質の砂層。

砂の層の下にウバイド時代の土器破片を含む層があったことから、紀元前3600~紀元前3500年頃の洪水沖積層と推定されている。しかも、同様の洪水沖積層の存在は、ウル以外のメソポタミア都市遺跡ウルク(厚さ1.55メートル)、シュルッパク(63センチ)、ニヴェ(20センチ)などでも確認済みである。

世界規模かどうかはさておき、メソポタミア一帯を大洪水が襲ったことは発掘調査によって実証されたのである。さらに、この洪水沖積層が見つかったシュルッパクは、ノアの家があったとされる町なのである。興味深い。

ノアの方舟に話を戻そう。ノアの方舟がたどりついたのはアララト山というところ。聖域でもあり、政治的に難しいため、詳しい調査はされてこなかったが、興味深い証言がいくつかある。

1959年、トルコ空軍のパイロット、A・クルティス中尉が高度約3000メートルから撮影した写真に、船縁だけが地上に露出しているような長方形の船型地形が鮮明に写っていた。ほかにも、アララト山頂付近を通過したパイロットたちは「方舟らしき建造物を見た」と証言している。

この建造物がノアの方舟であるのか、ただ偶然できた自然のものなのかは調査されておらず、謎のままである。

アララト山のノアの方舟らしきGoogle Earthの写真 ↓

ちなみにGoogle Earthで

39 26’26.69″N,44 14’04.67″E

で検索するとノアの箱船らしき場所に飛ぶことができる。

 

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. アバター
    • 匿名
    • 2018年 8月 22日 2:43pm

    洪水伝説は世界中にありますよね。
    ヨーロッパはギリシャ神話パンドラの箱、
    北欧神話、ユミルの大洪水
    南米のアステカ神話は5回も世界が滅んでいる

    所で旧約聖書ではノアの大洪水の後、バベルの塔で言葉がばらばらになる話しへ続きますが言語がばらばらになる前の言葉とか知りたいです。
    よろしければお願いします。

    1
    0
  2. アバター

    コメントありがとうございます。
    了解いたしました。その辺は自分も興味がありますので機会ある時にupしたいと思います。

    0
    0
  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. なぜ「鬼」と呼ばれるのか?子育てと安産の女神『鬼子母神』の由来
  2. 【手と足に特化した妖怪伝承】 日本各地に伝わる異形の世界
  3. 超古代に巨人は存在したのか? 【世界に伝わる巨人神話】
  4. ネアンデルタール人は なぜ絶滅したのか 「言葉を話し、現生人類と…
  5. 最高神ゼウスの兄弟関係について調べてみた《ギリシャ神話》
  6. 『江戸時代にUFO漂着?』宇宙人を思わせる世界の奇妙な怪異伝承
  7. 『御伽草子』に登場する「ものくさ太郎」のサクセスストーリーを紹介…
  8. 暑い夏には、よく冷やした瓜が一番!『今昔物語集』より、行商人と爺…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

アメリカはなぜ「銃所持」を認めているのか? 【市民の武装権】

今回の記事では「銃器の発展がもたらした政治体制の変化」に着目します。古代から現代までを時代順…

マルチビタミンの上手なとり方について調べてみた

マルチビタミンサプリひとり暮らししている人であれば、毎日の食事をどのようにするか迷うこと…

【邪馬台国の謎】女王卑弥呼は暗殺されていた!?『魏志倭人伝』の記述から考察

……其國本亦以男子為王 往七八十年 倭國亂相攻伐歴年 乃共立一女子為王 名曰卑彌呼 事鬼道能惑衆 年…

「子供をポンポン」暴言にショックを受けていた瀬名(築山殿)、実は自分の嫁(五徳姫)にも同じことを言っていた?【どうする家康】

「それはな、お瀬名殿。そなたがもう女子(おなご)として、終いということじゃ」「子を産まなくなった…

佐々木道誉 「室町幕府の最高実力者となったバサラ大名」※当代一の文化人

時代の変わり目には決まって強烈な個性を持った人物が現れる。バサラ大名・佐々木道誉(ささきどう…

アーカイブ

PAGE TOP