もう一つの消えた超巨大恐竜
1979年といえば、コロラド州で現在では無効名となっているウルトラサウロスが発見された年だが、時を同じくして、ニューメキシコ州ではもう一つの超巨大恐竜が発見されていた。
皆様は「セイスモサウルス」という名前に聞き覚えはないだろうか。
20世紀の間はウルトラサウロスとともに最大級の恐竜として名を馳せていたため、一度は名前を聞いた事がある方も多いだろう。
そのセイスモサウルスだが、現在は無効名となっており、公の場で使われる事はない。
今回は、ウルトラサウロスと最大の恐竜の座を争いながら、ともに名前が消えたもう一つの巨大恐竜を紹介する。
地震を起こした?超巨大恐竜
1979年、ニューメキシコ州で巨大竜脚類の骨が発見された。
発見された化石は当時としては史上最大級であり、その恐竜が歩く度に地震のような地響きを立てていたであろうという想像から「地震トカゲ」を意味するセイスモサウルスと命名された。(ウルトラサウルスのようにセイスモサウルスも最初は仮の名前として発表されたが、外部からの横槍によって解明を余儀なくされたウルトラサウロスとは違い、セイスモサウルスは当初の予定通りに名前が決まった)
発見当初は全長50メートルはあると言われながらも、研究が進むにつれてどんどん小さくなるという業界の「あるある」の洗礼を受けたセイスモサウルスだが、それでも推定される全長33メートルは現代でも規格外なサイズだった。
研究とともに深まる疑惑
発見された化石は胴体と尾椎のごく一部とはいえ、セイスモサウルスに関してどのような事が分かるのか。
学者もファンもこれから控えている復元と研究を楽しみに待っていた。
ブラキオサウルス(正確にはジラファティタン)のように完全な骨格が発見されている恐竜は稀であり、一部しか化石が発見されていない恐竜は基本的に骨格が似たような恐竜をモデルにして復元とイメージが作られる。(それ故ウルトラサウルスのような「キメラ恐竜」が生まれる事も多々ある)
セイスモサウルスも骨格が似ているディプロドクスをモデルに復元した訳だが、発見されていたセイスモサウルスの骨とディプロドクスの骨があまりにも「似すぎている」事から研究が進むにつれて両者が同一種ではないかという疑惑が深まっていた。
イベントの裏で判明した衝撃の事実
2002年、幕張メッセで「世界最大の恐竜博2002」というイベントが行われた。
当時中学生で遠方に住んでいた筆者は不参加だったが、このイベントの目玉は世界初となるセイスモサウルスの骨格展示だった。
イベントのマスコットキャラクターに「セイモくん」と命名されたり、パンフレットの表紙を飾ったりするなど、セイスモサウルスはイベントの顔として来場者の人気者になっていたが、イベントの裏で進んでいた研究で衝撃の事実が明らかになる。
ディプロドクスによく似ていると言われたセイスモサウルスだが、両者の数少ない違いは尾骨の形状が違う事だった。
フック状になった独特の尾骨はセイスモサウルス独自の特徴とされて来たが、研究の結果、実は骨折したディプロドクスの尾骨がくっついた跡であり、セイスモサウルスはディプロドクスだった事が、イベント中に明らかになってしまった。
実際にセイスモサウルスが無効名であると発表されたのは2004年であるため、世間や来場者が混乱するような事態にはならなかったが、偶然とはいえ、イベント中にセイスモサウルスという恐竜が存在しないと判明したのは皮肉というか、運命のイタズラとしか思えない大事件だった。
無効名=消滅ではない
セイスモサウルス発見前から知名度が高く、ファンの間で高い人気を誇っていたディプロドクスだが、セイスモサウルスと言われていた恐竜がディプロドクスだったと判明したため、全長30メートルオーバーの超巨大恐竜の仲間入りを果たすなど、更なる飛躍を遂げる。
一方、無効名となったセイスモサウルスはウルトラサウロスに続いて業界から姿を消す事になり、最大級の恐竜として名前が出る事はなくなった。
ファンの目線で見ると、馴染みのあった恐竜がいなくなるのは淋しいが、忘れてならないのはセイスモサウルスと呼ばれていた恐竜の化石は僅かな部分しか発見されておらず、世間が思っているほど研究が進んでいないという事だ。
一昔前、ブロントサウルスとアパトサウルスは同一種の恐竜であるという説が一般的であり、ブロントサウルスは名前が消えた恐竜の代表格として違う意味で有名だった。
その後の研究が進み、ブロントサウルスとアパトサウルスの相違点が確認された事から、ブロントサウルスが復活したというのは記憶に新しい。
勿論、学名の復活は簡単に起きる事ではないが、今後の発見と研究によってはセイスモサウルスが復活する可能性はゼロではない。(当然ながら、この話はセイスモサウルスに限らず無効名となった恐竜全てに該当する)
数字にするとかなり低いパーセンテージであり、10年経っても20年経っても進展がない可能性の方が高いと言わざるを得ないが、今後の研究のアップデートを気長に待ちたい。
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