宇宙

JAXA「SLIM」の太陽電池パネル 「月の公転で発電再開の可能性」

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月20日、小型月着陸実証機「SLIM」による月面への軟着陸に成功したと発表。

日本の月面着陸は世界で5番目の快挙だ。

一方で課題もあり、ムーンスナイパーに搭載している太陽電池パネルが発電できない状態が判明。

その後、JAXAは「LEV-1」から送られたムーンスナイパーの画像を解析した結果、「ムーンスナイパーの太陽電池パネルが西を向いている」ことを発表した。

月の公転により太陽光が差し込むようになれば発電できる可能性があることを明らかにした。

本稿では、以降公式名である「SLIM」を愛称である「ムーンスナイパー」と表記する。

SLIM

画像: SLIMの着陸イメージ credit by NASA

太陽電池の発電開始の可能性

ムーンスナイパーの太陽電池パネルは、機体の想定とは異なる姿勢での着陸だったため、太陽光を十分に受ける方向を向いていないと考えられた。

そして、データ解析の結果、パネルは西を向いていることが判明。

月は地球の周りを公転しているため、今後月面での太陽の方向が変わり、太陽光がムーンスナイパーのパネルに正面からあたるようになれば、発電を再開できる可能性があるとJAXAはコメントしている。

ムーンスナイパーの太陽電池パネルが発電できない事態は想定外だったが、月の動きを利用して再発電できる望みはまだあるようだ。

JAXAは現在、太陽電池パネルの復旧に向けて準備を進めているとしている。

また、JAXAはバッテリー残量が12%になった時点で、ムーンスナイパーの電源を切断したことも発表した。

これは、発電が再開した際の運用を考慮した措置だと説明されている。

月面での発電に成功できるか、今後の推移が注目される。

小型ロボット型探査機

ムーンスナイパーから射出された、小型ロボット型探査機「LEV-1」と「LEV-2」はそれぞれにミッションが与えられているが、両機とも「自律移動制御技術」によって、自立行動を実現しているのが特徴だ。

この技術は、カメラやセンサーから得た情報をもとに、ロボットの位置、姿勢、周囲の状況を把握し、最適な移動経路や速度を決定するものだ。

「LEV-1」と「LEV-2」の活動は、月面の探査や資源開発に役立つ自律移動制御技術の実証につながると期待されている。

LEV-1

LEV-1は、月面を跳躍しながら移動し、画像やデータを収集する。

跳躍型探査機により、月面のさまざまな地形を効率的に移動することができる。

ムーンスナイパーの月面着陸後の姿勢や状態を地球に送信したことにより、太陽電池パネルが太陽の方向に向いていないことが判明した。

現状、LEV-1は、ムーンスナイパーの周辺の状況を調査しながら、月面を移動していると考えられる。

LEV-1の役割

・月面の低重力下での跳躍型探査技術を実証する
・ムーンスナイパーの月面着陸後の姿勢や状態を調査する
・月面の重力や地磁気のデータを収集する
・「LEV-2 」の観測・動作データの通信を中継する

LEV-1の特徴

・跳躍型探査機
・カメラと走行データの収集装置を搭載

LEV-2

LEV-2は、ムーンスナイパーから分離されたもう1つの小型ロボットだ。

月面を自律移動しながら、カメラで画像を撮影したり、走行データを収集したりする。

現状、LEV-2も、ムーンスナイパーの周辺の状況を調査しながら、月面を移動していると考えられる。

LEV-2の役割

・月面の低重力下での超小型ロボットの探査技術を実証する
・ムーンスナイパーの月面着陸後の状況を調査する
・調査結果をLEV-2経由で地球に送信する

LEV-2の特徴

・変形型ロボット
・車輪とクローラーを組み合わせた走行機構
・カメラと走行データの収集装置を搭載

月着陸後のムーンスナイパー探査機に関するまとめ

SLIM

画像 : 着陸したと思われる神酒の海の位置 wiki c Silvercat

現時点でJAXAおよびムーンスナイパーが達成したこと、問題点は以下の通りだ。

達成したこと

・月面への着陸に成功。
・月面へのピンポイント着陸技術を実証することに成功した可能性大。
・JAXAは、100m以内のピンポイント着陸が達成できたかどうかは、送信データの詳細解析後に発表するとしている。
・2台の小型ロボット探査機を着陸直前に射出し、無事着地に成功。
・着陸時に撮影した画像や飛行データを地球に送信することに成功。

直近の課題

・ムーンスナイパーの太陽電池が復旧するかどうかを検証する。
・ムーンスナイパーの復旧に成功した場合、月面の観測や岩石の採取を行う。

このように、ムーンスナイパーの月面着陸は、日本の宇宙開発にとって大きな成果となった。

さいごに

現時点ではまだ太陽電池が機能していないため、ムーンスナイパーの運用は制限される。

ムーンスナイパーの太陽電池が復旧すれば、ムーンスナイパーが搭載している特殊なカメラが利用可能になり、本来の実力をフルに発揮できるようになるだろう。

JAXAは1月25日、記者会見でムーンスナイパーの詳細な情報を公表する予定だ。

※小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果・成果等にかかる記者会見

参考 :
Not dead yet: Japan prepares for possible recovery of SLIM moon lander | Space

 

lolonao

lolonao

投稿者の記事一覧

フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 木星の衛星「エウロパ」で生命の可能性 【ジェイムズ・ウェッブ宇宙…
  2. 【土星の六角形の謎】研究者のシミュレーションが示した新たな答えと…
  3. 【5次元漫画 パラダイムシフト】約2年ぶりの更新 「最新話 宇宙…
  4. 【史上初】 火星を飛行したヘリコプターが損傷し、ミッション終了へ…
  5. 日本の月探査機「SLIM」 月で2度目の越夜を達成! 『これまで…
  6. 【欧州の大型廃棄衛星が今月地球へ落下!】 燃え尽きるまでの軌跡を…
  7. 【火星の夜空は緑色だった】 欧州宇宙機関がその理由を突き止める
  8. NASAが警戒する危険な小惑星5選 「地球に衝突する可能性はどれ…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

幽霊は自分自身?脳の錯覚か 「人工的に幽霊を作り出す実験」

幽霊とは一般的には「死んだ人」「成仏出来ない魂」といわれている。今回は幽霊の歴史や、本当に存…

黒田官兵衛・長政に仕えた「黒田八虎」~監禁された官兵衛を救った男たち

大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公でもある黒田官兵衛。彼は類稀なる頭脳で豊臣秀吉に仕え、秀…

ウィンチェスター・ライフルの歴史【西部劇の名脇役】

『駅馬車』『シェーン』『OK牧場の決斗』『拳銃無宿』『荒野の用心棒』これらのタイトルを懐かし…

トリノの聖骸布「浮かび上がるのは嘘か、真か」

最も重要で、最も謎に満ちた聖遺物イタリア北西部の都市トリノ。世界的な自動車メーカー「フィアット」…

【手と足に特化した妖怪伝承】 日本各地に伝わる異形の世界

人類は進化の過程で、四足歩行から直立二足歩行へと歩行様式を変化させた。この変化により「手」が…

アーカイブ

PAGE TOP