2022年からアメリカのハイテク企業が大規模人員削減(レイオフ)を続けてきたが、この動きは2024年に入ってもまだ続いている。
NASAのジェット推進研究所(以降JPL)は、人員削減で社員の約8%が解雇するという。
NASA ジェット推進研究所(JPL)の人員削減
2月7日(日本時間)のJPLの発表によると、今回の削減は技術部門と支援部門の両方に影響を与え、約530人の社員と40人の請負業者が対象となる。
JPLは、声明の中で「これは苦しい決断だが、NASAと国のために重要な仕事を続けるために、予算配分を守るために必要な調整だ」と述べている。
JPLは、カリフォルニア州ロサンゼルスの北に位置し、NASAから資金提供を受けながらカリフォルニア工科大学によって運営されている。
火星探査車「キュリオシティ」や「パーサヴィアランス」のミッションなど、NASAの主要な科学プロジェクトを多く推進してきた。
この画像は、ミッション開始から684ソル(ソルは火星の1日)目にあたる2023年1月20日に、探査機のロボットアームに搭載されたワトソンカメラによって撮影された。
パーサヴィアランスの主な任務の一つは、火星のサンプルを将来地球に持ち帰るための収集と保管だ。
サンプルは、火星の生命史や地球との関係について、新たな手がかりを提供することが期待されている。
JPLは、火星の生命探査を新たなレベルへと引き上げるために、野心的な火星サンプルリターン(MSR)キャンペーンを推進しているのだ、
火星サンプルリターン計画の予算は近年急増しており、昨年、独立調査委員会は「2030年の計画通りに実施された場合、80億ドルから110億ドルの費用がかかる」と見積もった。
これらの数字は、火星サンプルリターン計画の費用を抑制しようとする議会の一部議員を警戒させた。
例えば、上院は2024年度予算案で、火星サンプルリターン計画に3億ドルのみを割り当てた。
これは2023年度に認められた予算から、63%減額された金額である。
JPL所長のローリー・レシン氏は、書簡の中で、以下のように述べている。
「この指示を受けて、JPLは従業員を守るために、採用凍結、火星サンプルリターン計画の契約削減、および研究所全体の負担予算削減を実施した。さらに今月初めに一部の貴重な派遣社員を解雇することで、支出をさらに削減した。」
NASAの声明
NASAのビル・ネルソン長官は声明の中で、JPLの人員削減について、
「非常に残念な決断であったが、現在の予算状況を考えると、避けられない措置であった」とコメントしている。
また、今回の削減がNASA全体にとって大きな損失であり、関係者全員が深い悲しみを感じていると述べた。
JPLは長年にわたってアメリカの宇宙開発におけるリーダーシップ的な存在で、今後もそうであり続けるという。
人員削減による影響が不安視される中、
・エウロパ・クリッパーによる宇宙探査
・NASA-ISRO合成開口レーダー(NISAR)による気候変動の研究
・地球近傍小惑星探査衛星(NEO Surveyor)による地球の防衛
など、今後もNASAの主要なミッションを推進する役割を果たし続けると強調した。
さいごに
2024年2月現在、NASAのJPLだけでなく、アメリカの大手ハイテク企業の多くが人員削減を実施している。
その背景には、世界的な景気減速やインフレなどの経済的な要因、AIなどの技術革新による業務効率化、そしてコロナ禍後の事業環境の変化などが挙げられる。
人員削減は、企業の競争力維持には必要不可欠な措置である一方で、従業員の雇用や生活に大きな影響を与える。
また、企業の技術力やイノベーションの低下にもつながる可能性がある。
今後、アメリカの大手ハイテク企業が、人員削減とイノベーションのバランスをどのように取っていくのか、注目していきたい。
参考 :
JPL Workforce Update
NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL) – Robotic Space Exploration
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