日本史

日本酒と日本神話について調べてみた【ヤマタノオロチを酔わせた八塩折の酒とは?】

和食ブームの影響で外国人からも人気が高まっている日本酒。その歴史は古く、縄文時代中期頃から酒造りをしていた痕跡がある。
日本人は古来より節目となる行事において酒を飲み、特に神事には欠かせないものであった。
そして現代。日本神話に登場する「ヤマタノオロチ」を退治したという日本酒が再現されているので、日本酒が登場する日本神話・伝承について詳しく調べてみた。

スサノオのヤマタノオロチ退治

日本酒が登場する日本神話・伝承で最も有名なのが素戔嗚尊(スサノオ)ヤマタノオロチ退治ではないだろうか?

素戔嗚尊とヤマタノオロチの詳細については、次の関連記事をご覧いただきたい。
https://kusanomido.com/study/history/japan/nara/24975/

スサノオのヤマタノオロチ退治

※スサノオのヤマタノオロチ退治

スサノオは「ヤシオオリノサケ」という酒を造らせてヤマタノオロチに飲ませ、ヤマタノオロチが酔っ払って動けなくなったところを襲い、退治する。

ちなみにその尻尾から得られたのが「三種の神器」の一つ「草薙の剣」だ。

スサノオはこの剣を姉のアマテラスに献上し、その後、アマテラスから孫に授けられ地上に下り、天皇家の神器として受け継がれていることになる。

そして景行天皇の皇女で伊勢神宮の斎宮だったヤマトヒメから弟のヤマトタケルに手渡された。

平安時代の熱田神宮に伝わる記文(由緒)によれば、その時、アマテラスはヤマトヒメに神懸りして「この剣は、そなたが前世でスサノオであったとき、出雲国でヤマタノオロチの尾より取り出して、私に献上した剣です」と伝えている。

ヤマトタケルはスサノオの生まれ変わりであり、時を経て「草薙の剣」が元の持ち主のもとへ還ったという、なんともドラマチックな展開だ。

ヤマトタケルの熊襲健討伐

こうして草薙の剣を手にした日本神話の英雄ヤマトタケルだが、彼にも酒の力をかりて敵を討ち取ったというエピソードがある。

ヤマトタケルがまだ小碓命(おうすのみこと)と名乗っていた16歳の頃。

父である景行天皇より、九州で反乱を起こした熊襲健(クマソタケル)兄弟を討つように命じられた。

ヤマトタケルはヤマトヒメから策を授けられ、女物の着物を羽織った美少女になりすまし、熊襲健の宴の席に潜り込むと隠し持った剣で兄健を刺殺。

さらに弟健にも襲いかかり、弟健はそこで美少女が若い男であることに気づいた。
己を殺そうとしている相手に彼が名を問うと、「景行天皇の子、小碓命」と名乗り、弟健は「汝こそ倭(やまと)の健(たける)なり」と言ったという。

以降、小碓命はヤマトタケルと呼ばれるようになる。

もしかしたらこの時も、アマテラスはスサノオのヤマタノオロチ退治を参考にしてヤマトヒメに神懸かり、酒の力を利用するようアドバイスしたのかもしれない。

平安の鬼 酒呑童子退治

さらに時は流れて「御伽草子」に登場する酒呑童子(しゅてんどうじ)の話も紹介しておこう。

酒呑童子とは、平安時代に京を騒がせた鬼である。

悪行を繰り返す鬼に困った時の帝は、武将の源頼光にこれを討つよう命じた。

その時、京都を守護する住吉神社、八幡神社、熊野神社の神々が頼光に酒呑童子を倒すための秘策として「神便鬼毒酒」(じんべんきどくしゅ)という酒を与えた。

この酒は人間が飲めば神の加護を与え、鬼が飲めば鬼の神通力を失わせる霊力の備わった神酒であった。

頼光は酒呑童子に宴と称してこの酒を飲ませ、泥酔し、神通力を失ったところで襲いかかり討ち取った。

この酒呑童子の出自には越後の美少年説など、幾つかの説がある。

その一つである比叡山に伝わる伝説では、酒呑童子はスサノオに退治されたヤマタノオロチの子供とされている。

スサノオに退治されたオロチは死なずに近江に逃げ、そこで富豪の娘と結ばれた。
二人の子供(酒呑童子)は比叡山に預けられたが、父譲りの大酒飲みがやめられず、山を逃げ出して鬼になったという。

父親のヤマタノオロチと同じく、酒を飲まされ討たれてしまったというオチである。

実在している「ヤシオオリノサケ」とは

では、最後に。

現代に再現された、ヤマタノオロチを酔わせたという伝説の酒「ヤシオオリノサケ」とはどんなものなのだろうか?

ヤシオオリノサケは、漢字では「八塩折之酒」と表記される。
「八」は「たくさん」、「塩」は「熟成した醪を搾った汁」、「折」は「繰り返し」という意味。
つまり、醪を搾った汁に麹と蒸米を入れて発酵させ、それを何度も繰り返して発酵させて造られた酒であったと考えられる。

一般的に日本酒の仕込みには水と米を使用するが、上記のように水を使わず仕込みの全てに酒を使う製法もあり、「貴醸酒」の造りとして1973年に国税庁醸造試験所(現在の醸造研究所)が開発している。
ちなみにこの製法は、平安時代に編集された「延喜式」に記されている製法「しおり式」を基にしている。
しおりの「おり」と前述した「折」は同じ意味。

島根県松江市にある國暉酒造㈱は、この製法を応用して「八塩折の酒」を再現し販売。

八塩折の酒は、貴醸酒のように琥珀色でとろみがあり濃厚な味わいの酒だ。
日本酒度(甘口辛口を表すもの)が-60度なので、かなり甘口だということを想像してもらいたい(一般的な日本酒は+10度から-10度。-にいくほど甘口)

一本300mlで5,400円と、日本酒としては高めではあるが、伝説のヤマタノオロチを酔わせたという極上の日本酒に、あなたも討ち取られてはいかがだろうか?http://www.kokki.jp/yashi5.htm

関連記事:
天照大御神(あまてらすおおみかみ)について調べてみた【天岩戸隠れ】

 

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