闇淤加美神(くらおかみのかみ)とは、日本神話の中に登場する神々の1人である。
私たちの生活の中でも、特に必要不可欠である「水」の神であることから、全国でこの神さまをお祀りしている神社は多い。
今回は、この闇淤加美神について調べてみた。
火の神から生まれた水の神 クラオカミ
イザナギとイザナミは、日本神話の中で最初に出てくる神様で、日本神話の中では日本列島を作ったのがこの二柱の神々であったとされている。
イザナギとイザナミは結婚し多くの神を生んだが、イザナミが最後に産み落とした神は迦具土神(カグツチノカミ)と言う火の神様だったので、その炎に身体を焼けかれ、イザナミはそのまま死んでしまった。
そのことに嘆き悲しんだイザナギがカグツチの首を刎ねたところ、その死体からはたくさんの新しい神々が生まれたのだと言う。
首を刎ねられたカグツチの血液から生まれたのが、闇淤加美神(クラオカミノカミ)である。
淤加美(オカミ)とは、“龗”と書き、龍蛇を表す古語であり、水の湧き出るところ、という意味をも持つ。
この記事ではわかりやすさを重視し、ここからは“クラオカミ”という表記で統一していきたいと思う。
クラオカミは龍神であるということになるが、女神という点を強調された神様である。
このことから、美しい女性に化身した龍神、あるいは龍神に仕える巫女が神格化したのではないか、とも言われている。
クラオカミは、あまた存在する水神の中でも、とりわけ格式の高い女神であり、雨を司る。
そのため、農耕には欠かせない存在であり、水=潤う・何かを育てるといったイメージが派生して、商売繁盛や縁結びの神様としても御利益があると言われている。
水の神は各地の庶民信仰の中で生まれたものが多いと言われているが、クラオカミはイザナギ・イザナミにルーツを持つれっきとした出自があるために、水神の中でも別格の扱いを受けていると言える。
また、火の神から生まれた水の神である、という点も特筆すべきところである。
火と水とは正反対の性質を持っており、一見なんの結びつきもないように思えるが、一説によると火の神から水の神が生まれたのは、荒れ狂う火を鎮めるためなのではないかと言われている。
水は何かを育てるだけではなく、鎮静の力も持っているということである。
クラオカミとタカオカミ
ここで、クラオカミを語る上では欠かせない、タカオカミ(高龗)についても紹介したいと思う。
こちらの二柱の神々の関係については諸説ある。
その中のひとつは、同じ神格であるという説。もうひとつは一対の神格である、という説だ。
神格とは、その神様の格式や階級、地位を表すものである。
タカオカミは『古事記』には登場せず、『日本書紀』の中で、イザナギがカグツチを3つに斬った時に生まれた、と記されている。
その中で、タカオカミは、高い峯にあり雨が司る神であると言われ、クラオカミは日の届かない山の谷間に流れる川の神である、とされている。
また、タカオカミとクラオカミを別々に祀っている神社も存在する。
クラオカミには、娘である日河比売(ヒカワヒメ)が居る。
このヒカワヒメは、霊験あらたかな川に奉仕する巫女であると言う説や、母・クラオカミと同じく水の神であるという説がある。
またその名前から、埼玉県にある氷川神社に関わりがあるとも言われている。
この神社は、全国に280社あると言われている氷川神社の総本宮である。
クラオカミを信仰する貴船神社
タカオカミ、クラオカミを信仰する神社は多くあるが、その中でも特に紹介したいのが京都府にある貴船神社(きふねじんじゃ)である。
こちらはパワースポットとしても有名であり、タカオカミ、クラオカミが共に祀られている。
1300年前にはすでに存在していたと言われており、かつては日照りが続くと貴船神社で雨乞いが行われていたようだ。
また、絵馬発祥の地だと言われており、かつて雨乞いの際には生きた馬が奉納されていたが、時代とともに生きた馬の代わりに絵馬が使われるようになったのだと言う。
奥宮と言われる場所には、巨大な龍穴と呼ばれる場所が存在する。
誰も見ることが許されない場所であるが、奥宮へ足を運ぶだけでも、タカオカミ、クラオカミのパワーを感じることができるだろう。
水と女神
この記事では、雨や川を司る水の女神、クラオカミについて調べてみた。
世界各国でも、水と美しい女性像を結びつける神話や伝承は多い。
ギリシャ神話の中では、水を司る精霊のウンディーネ、海の魔物であるセイレーン、クラオカミと同じ『古事記』の中には、海の神の娘として豊玉姫(トヨタマヒメ)が登場する。
どうやら、水と女性は切っても切れない関係のようだ。
それは水が命を生み育むものであるということ、雨や洪水などたくさんの多面性を持つ物質であること、などが理由なのかもしれない。
全国でタカオカミ、クラオカミを祀る神社は多くあるので、近くに立ち寄った際には、ぜひ参拝をしていただきたいと思う。
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