兵馬俑の価値
中国の歴史遺産の兵馬俑(へいばよう)。 1974年から開始された発掘調査は現在も進行中である。
「世界の第8の不思議」と呼ばれ、今だに多くの謎は解明されていない。
毎年、兵馬俑を一目見ようと世界中から多くの旅行客が西安を訪れる。
旅行客たちはその数の多さと精巧な作りに感銘を受け、古代中国の歴史に想いを馳せる。
台湾に来た緑顔の兵馬俑
兵馬俑は現在8000体以上が出土しているが、その中で唯一「緑色の顔をしている兵馬俑」が存在する。
この兵馬俑は、見かけは一般の兵馬俑と変わらないのだが、その顔の色が緑色で非常に特異なものとなっている。髪の毛、ひげ、瞳は黒で着色されているが、その他の肌の部分は全て緑の着色が施されているのである。
元々、兵馬俑の顔には10種類以上の顔料が使われていた。しかし出土して空気に触れると約10秒ほどで劣化し始める。そこで2009年に色の劣化を防ぐためにドイツの技術を取り入れ、ある程度は顔料を保存できるようになった。
その多くは肌色で、残りは黒っぽいものや白っぽいものであったという。緑の顔は現在までに1体しか出土していない。
この緑顔の兵馬俑は基本的に出国禁止となっており、中国国内でも展示回数が極端に少ない。
そんな緑顔の兵馬俑だが、興味深い事に一度だけ出国を果たしている。その場所は台湾である。
様々な政治上のしがらみを括り抜けて、唯一台湾にて展示された。
兵馬俑の親指 盗難事件
兵馬俑の展示は、国外でもとても人気が高い。
現在の中国に対してはマイナスな評価が多いものの、こと中国の歴史に関しては歴史マニアの好奇心をくすぐるのであろう。
その好奇心が度を超してしまった者がいた。 それは2017年、アメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアのフランクリン研究所博物館で「始皇帝と兵馬俑展」が開催されていた時のことである。
この展示では10体の兵馬俑が展示されていた。その中には一体の将軍俑、一体の戦車兵俑、一 体の戦馬俑が展示され、その他にも170以上の始皇帝の宝物が共に展示されていた。
展示期間中の12月21日、閉館後の21時15分、マイケル・ロハナという24歳の青年は、こっそりと博物館に忍び込んだ。
彼はしばらくすると友人を2人呼んで、4箇所を見学した。 そして友人らが去った後もマイケルは1人で博物館に残り、スマホの電灯を頼りに鑑賞を続けた。兵馬俑と共に自撮りをしたりして時を過ごしていたようである。
そしてマイケルはある1体の兵馬俑を観察した後、あろうことかその親指をもぎ取って、そのままポケットに入れて持ち帰ってしまったのである。
博物館の監視カメラには、その一部始終がハッキリと収められていたが誰も気づかず、その後も何事もなく展示は進められた。そして2018年1月8日、博物館の人間がついに無くなった親指に気付いたのである。
とりえしのつかない事になってしまったと、博物館の人たちは震え上がっただろう。盗まれただけでなく「破損」してしまったのだ。
最悪の場合、国際問題に発展しかねない。
その後はアメリカ連邦調査局FBIが動く事になった。 監視カメラからすぐに人物を特定したFBIは、マイケルの家を訪ねた。
「君、何かFBIに提出するべき品物を持っていないかね?」
そう尋ねられたマイケルは、大人しく博物館から持ち帰った兵馬俑の左手の親指を提出したという。 しばらくしてこの兵馬俑の親指は修復された。だが、ただの粘土の人形のようにボンドで貼り付ければ良いという問題ではない。 あるメディアの報道では、破損した兵馬俑の価値は450万ドルであることが公表されている。
兵馬俑を管理する陝西省文化財交流センターは、この事件について以下のようにコメントした。
「兵馬俑は40年以上にわたって、60余の国で260回以上展示されて大成功を収めてきた。今回このような事が起きたことは前代未聞であり、非常に遺憾である。我が国の非常に貴重な文化遺産をこのような形で破損されたこと、この代償は金銭では補うことのできないものであり悪質極まりない事件である。このようなことは二度とあってはならない。犯人には然るべき刑罰を与えることを望む」
他には、博物館側のセキュリティの甘さについても指摘している。
親指を盗んだマイケルはその後起訴され、米国の地方裁判所で窃盗の罪で裁判となった。
以前、「兵馬俑の変装をしたドイツ人の若者」の記事を紹介したが、このように兵馬俑は外国人にとっても犯罪を犯してしまうほど魅力的な歴史遺産であり、世界的な宝なのである。
参考 : 兵馬俑手指被偷走 FBI已鎖定疑犯並進行抓捕
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