塩は人間の生命活動において、必要不可欠なものである。
日本においても古代から塩は重要視され、「塩」のついた地名も数多くある。そして塩の主要産地は沿岸部である。
しかし、なぜか山中にも「塩」のついた地名は数多くあるのである。
一番不思議なのは長野県である。
長野は海がない県であるが、なんと長野県が「塩」の地名が一番多くある県なのである。
地図検索で「長野県 塩」と入力すると、塩尻、塩田、塩野、塩川・・など多くの地名が表示される。
長野県以外でも、栃木、山梨、岐阜などの海なし県でも「塩」のつく地名が多いのである。
それは一体なぜなのだろうか?
塩の道
これには日本人の食生活が大きく影響しているようである。
日本の国土は主に山岳で、日本人の主食は古来より米である。しかし米には塩分は含まれておらず、塩を沿岸部から内陸の山間部へ輸送する必要があった。
そのために、古代から「塩の道」が発達していったのである。
つまり、山間部についている「塩」の地名は、かつては「塩の通り道」だったということを伝えているのである。
例を上げると、四国の讃岐山脈北側には「塩入」という集落があり、そこはかつては讃岐沿岸部でとれた塩を阿波の山間部に運ぶための入り口だったとされている。
長野県の「塩尻」は、かつては「塩の道」の終点であったころから、この地名がついたとされている。
他の説
他にもいくつか説がある。
長野県大鹿村の鹿塩温泉では「山塩」がとれる。ただし温泉(塩泉)からとれる塩なので、全国的な例は多くなさそうである。
また、土地の形などから「しぼんだ、しおれた」という意味合いでつけた地名に「塩」という当て字がつけられた、という説や、内陸部の人間は「塩」に対する憧れが強かったために「塩」という地名を多くつけたという説もある。
ただ、現在の長野~新潟間の千国街道は、かつては信濃で「糸魚川街道」越後で「松本街道」と呼ばれており、江戸時代は、信濃の松本藩が日本海産の塩を運ばせた主要ルートであったことがわかっているので、「塩の道」説がやはり正しいようである。
参考文献 : 地理の話大全
愛知県の山奥に塩津と云う集落があります。その昔鉱泉に塩が入りかなり賑わいをみたそうです。現在も温泉があり近くに塩田と呼ばれる所があります。集落も過疎には勝てず数軒のみですが温泉旅館は二軒営業しています。