■蜂須賀正勝 / 高橋 努
はちすか まさかつ / たかはし つとむ川並衆筆頭
木曽川での運送に携わる土豪。美濃の要地・墨俣に砦(とりで)の築城を命じられた豊臣兄弟は、正勝に協力を求める。
※NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイトより。
本作では『武功夜話』の記述にのっとり、川並衆(かわなみしゅう)と呼ばれる水運業者の元締めに設定された蜂須賀小六(正勝)。
それならまだよい方で、『太閤記』などでは野盗の親玉という設定にされてしまったため、後世の子孫が風評被害に苦しめられたそうです。
一体なぜこんなことになってしまったのか……今回は蜂須賀小六正勝にまつわる創作と実態について紹介。大河ドラマ「豊臣兄弟!」を楽しむ参考になればと思います。
そりゃ「下賤の方が面白い」から

画像:月岡芳年 『美談武者八景、矢矧の落雁』。矢矧橋における蓮葉兒六将勝(蜂須賀小六正勝)
蜂須賀小六は大永6年(1526年)、尾張国海東郡蜂須賀郷(愛知県あま市)にある蜂須賀城主・蜂須賀正利(まさとし)の長男として誕生しました。
小さいとは言え城主クラスの家柄であることから、川並衆ましてや野盗設定(アレンジ?)はちょっとひどいんじゃないでしょうか。
しかし最初から有力者の家に生まれるより、下賤の身分から出発した方が、百姓から出発した秀吉の仲間として親近感が持てそうです。
ちなみに秀吉と小六の出会いについて、月岡芳年「美談武者八景」はこのように書いていました。
矢矧(やはぎ)の落雁(らくがん)
栴檀は二葉よりして香(かんば)しく梅花(ばいか)は未莟(つぼみ)■に匂ひなり此花(このはな)開(さく)や冨士根(ふじがね)の頂より高き功(いさおし)は朝鮮(こま)大明(もろこし)まで武名を■■き日吉丸が稚立(おさなだち)矢矧に落る雁金(かりがね)の一度路傍に伏(ふす)と云共(いえども)やがて雲井に羽を伸さるべし
【意訳】栴檀は双葉より芳しく、梅の花は蕾から香り立つと言う。その花が咲けばたちまち富士山よりも高く功名を立て、朝鮮半島や中国大陸にまでその名を轟かせた日吉丸(秀吉の幼名)が幼いころ、矢矧橋のたもとで落雁を眺めながら路傍に寝ていた。その姿は伸ばした手足が雲に届くほど豪胆な大文字である。
……そこへ通りがかったのが、蜂須賀小六率いる野盗の一団。ガキんちょ一人と無視したところ、これに腹を立てた日吉丸が、小六に食ってかかった……というエピソード。
確かに最初から城主格であった設定より、話としては面白いけど……これが子孫に対する風評被害につながったとか。確かに「犯罪者の子孫」呼ばわりされるのは心外ですよね。
実は守護大名の子孫だった?

画像:日吉丸との出会い。月岡芳年「本朝智仁英勇鑑 蜂須賀小六正勝」より
とまぁそんな小六ですが、実は尾張国の守護大名・斯波氏の子孫だった可能性があると言います。
蜂須賀家の祖先は斯波高経(しば たかつね)の子・蜂須賀景成(かげしげ/かげなり)であり、小六はその子孫と言われるものの、諸説あって定かではありません。
【蜂須賀氏略系図】
……斯波高経-蜂須賀景成……蜂須賀政員(まさかず)-蜂須賀正隆-蜂須賀正永-蜂須賀正成-蜂須賀正利-蜂須賀正勝(小六)……
実際に蜂須賀家は斯波氏の子孫を自称しており、もしそうであれば分家とは言え、守護代の織田家よりも格上の立場と言えるでしょう。
落合芳幾「太平記英勇傳」においてもこの説が採られているので紹介します。
八菅與六正勝(はちすが よろくまさかつ)
斯波尾張守高経の後胤世々海東郡八菅村に住す……
※当時は徳川政権に対する批判につながる可能性がある、戦国時代以降の人物を直接描くことが許されていなかったため、あえて名前をもじっています。
しかしそんなことを言っても時は戦国乱世ど真ん中、そんな理屈は通用しません。かくして小六は美濃斎藤氏に仕え、のち織田信長そして秀吉に仕えたのでした。
終わりに

画像:落合芳幾「太平記英勇傳 八菅與六正勝(蜂須賀小六正勝)」。いかにも野盗感たっぷりに描かれている。
……豊公(ほうこう。秀吉)幼稚(おさな)かりしとき正勝の家にあそび若(もし)先(さきん)じて世に出(いで)なば相ともに救はんと約し其身信長に事(仕え)て正勝を召たり以下今川をうち竜興を攻尚四国責に功なるを以て阿波一国をぬいて十七万石余を食(はみ)たり
※落合芳幾「太平記英勇傳」八菅與六正勝
【意訳】秀吉が幼いころは小六の家で遊び、先に出世した方が互いに助け合おうと約束した。後に信長に仕え、今川義元を倒して斎藤竜興を攻め、さらに秀吉政権下では四国征伐に武功を立てる。その武功によって秀吉から阿波(徳島県)一国を与えられ、17万石の大名にまで出世した。
今回は秀吉に仕えて活躍した蜂須賀小六正勝について、その出自を紹介してきました。
大河ドラマ「豊臣兄弟!」で採用されるであろう『武功夜話』は偽書の疑いがあり、それに基づく川並衆という設定はいかがかとは思うものの、こういうエンタメは面白さが肝心です。NHKとしてもあくまでフィクションを謳っている以上、大いに楽しむのがよいでしょう。
果たして本作の蜂須賀正勝はどんな活躍を魅せてくれるのか、高橋努の熱演に期待しています!
※参考文献:
・小和田哲男『豊臣秀吉』 中公新書、1985年11月
・桑田忠親『太閤家臣団』新人物往来社、1971年10月
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部
























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