鎌倉殿の13人

讒訴にも屈しない!高橋侃が演じる結城朝光と梶原景時の三番勝負【鎌倉殿の13人】

源頼朝(演:大泉洋)の懐刀として陰に陽に活躍、時には汚れ仕事もいとわなかった梶原景時(演:中村獅童)。

讒訴(ざんそ。相手を陥れるための訴え)によって多くの御家人たちを粛清へと追いやり、頼朝武士団におけるパワーバランスを調整してきた景時ですが、中にはそれを毅然と跳ね返す者もいました。

結城朝光。菊池容斎『前賢故実』より

今回はそんな一人である結城朝光(ゆうき ともみつ)を紹介。景時とは頼朝の生前からしばしば対立するのですが、果たして勝利を収めるのはどちらでしょうか。

頼朝の烏帽子子として活躍

結城朝光は平安末期の仁安3年(1168年)、下野国(現:栃木県)の大豪族である小山政光(おやま まさみつ)と寒河尼(さむかわのあま。実名不詳)の間に誕生しました。

この寒河尼は頼朝の乳母を務めているため、朝光は頼朝と乳兄弟の間柄でもあります。

幼名は一万丸(いちまんまる)、頼朝が挙兵した治承4年(1180年)の10月2日に元服。頼朝と政光のから一文字ずつもらって朝光と改名しました。

また元服に際して頼朝から成人の証である烏帽子をかぶせてもらい、これで頼朝が烏帽子親、朝光が烏帽子子とさらに絆を深めます。

養和元年(1181年)4月7日、朝光は北条義時(演:小栗旬)らと共に頼朝の寝所を警護する親衛隊に抜擢。側近として活躍しました(後に結城の所領を拝領したため、結城朝光と称することに)。

幼いころから朝光に薫陶を与えた頼朝と、その期待に応えるべく忠勤に励んだ朝光の絆は、時として実の親子以上のものだったのではないでしょうか。

尊敬している畠山重忠を弁護

そんな朝光は「坂東武者の鑑」として名高い畠山重忠(演:中川大志)を尊敬していたのですが、その重忠が文治3年(1187年)に謀叛の疑いをかけられてしまいます。

どんな時も冷静沈着、剛毅果断で御家人たちから慕われた畠山重忠。歌川貞秀筆

あの畠山殿が、そんなことをするはずがない!梶原景時の讒訴に対して、朝光は毅然と反論したのでした。

重忠天性禀廉直。尤弁道理。敢不存謀計者也。然者。今度御氣色。依代官所犯之由。令雌伏畢。其上殊怖畏神宮照鑒之間。更不存怨恨歟。謀叛條。定爲僻事歟。被遣專使。可被聞食其意者。

※『吾妻鏡』文治3年(1187年)11月15日条

【意訳】重忠殿は道理をわきまえた天性の正直者、謀叛など企もうはずがありません。今回の騒動は重忠殿本人ではなく、代官の不祥事が発端ではありませんか。どうか謹慎している彼の元へ使者を派遣して、その真意を問いただして下さい。

果たして重忠の潔白が認められ、その謀叛を讒訴した景時は面目を失ったと言います。

東大寺で荒ぶる僧兵たちを鎮める

また、こんなこともあったとか。

頼朝が東大寺再建供養に参列していた建久6年(1195年)3月12日、式典の会場で御家人たちと僧兵らがもめごとを起こしました。

「……平三(景時)」

騒ぎを収めるべく頼朝は景時を遣わしたものの、高圧的な態度で火に油を注ぐ結果に。そこで頼朝は朝光を派遣します。

僧兵らを説得する結城七郎朝光(イメージ)

朝光傳嚴旨云。當寺爲平相國回祿。空殘礎石。悉爲灰燼。衆徒尤可悲歎事歟。源氏適爲大檀越。自造營之始。至供養之今。勵微功成合力。剩断魔障爲遂佛事。凌數百里行程。詣大伽藍縁邊。衆徒豈不喜歡哉。無慙武士猶思結縁。嘉洪基之一遇。有智僧侶何好違乱妨吾寺之再興哉。造意頗不當也。可承存歟者。

※『吾妻鏡』建久6年(1195年)3月12日条

【意訳】東大寺はかつて平家のために焼き払われて灰燼に帰したところ、鎌倉殿が再建に尽力なされて今日の再建を見ました。我ら坂東武者は皆ありがたい仏縁にあずかろうとご奉仕しているところを、どうして学問も教養もあろうあなたがたが台無しにしようとされるのでしょうか。

朝光の言い分に感服した僧兵たちは、自らの行いを恥じ入って大人しくなりました。これで事態は解決、朝光は「容貌美好、口弁分明(イケメンで弁舌さわやか)」と高く評価されたものの、景時はまたしても面目を失ってしまいます。

かかる火の粉を払うため、御家人みんなで力を合わせる

とまぁそんな具合に若い頃から人格者ぶりを発揮していた朝光ですが、景時としては面白くありません。両者の関係がギクシャクしていたことは想像に難くないでしょう。

そんな二人の決定的な対立は頼朝が亡くなってしばらく経った正治元年(1199年)10月25日。朝光は頼朝時代を懐かしんで、こんなことを口にしてしまいます。

朝光談于列座之衆云。吾聞。忠臣不事二君云々。殊蒙幕下厚恩也。遷化之刻。有遺言之間。不令出家遁世之條。後悔非一。且今見世上。如踏薄氷云々。

※『吾妻鏡』正治元年(1199年)10月25日条

【意訳】昔から「忠臣は二人の主君に仕えない」という。私は頼朝公から厚く御恩を受けているから、亡くなった時に菩提を弔うため出家したかった。ご遺言によって思い留まったが、今の世を見ると薄氷の上を歩くようだ……。

頼朝の跡を継いで鎌倉殿となった源頼家(演:金子大地)に対して、遠回しな批判をしているに違いない……そう確信した景時は朝光を讒訴。たちまちその粛清が決まったとか。

朝光に逃げるよう伝えたのは阿波局(あわのつぼね)。大河ドラマでは実衣(演:宮澤エマ)と呼ばれている阿野全成(演:新納慎也)の妻です。

「さて、どうしたものか……」

親友の三浦義村(演:山本耕史)に相談した朝光は、和田義盛(演:横田栄司)や安達盛長(演:野添義弘)の協力を得て景時に対する弾劾状を書きました。

「梶原めの讒訴によって命を落とした御家人は数知れず。彼らの無念を今こそ晴らすのだ!」

という訳で、連ねた署名は66名。錚々たるメンバーの気迫を前に頼家は景時を見捨ててしまいます。

梶原景時の最期。尾形月耕筆

やがて鎌倉を追放された景時は正治2年(1200年)1月20日、梶原一族ことごとく滅ぼされてしまったのでした。

終わりに

かくして十数年以上にわたる景時との確執を制した朝光は、その後も鎌倉幕府の重鎮として活躍。承久の乱でも武功を立てるなど、存在感を発揮しました。

建長6年(1254年)2月24日に87歳の生涯に幕を下ろし、今でも称名寺(現:茨城県結城市)に眠っています。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では頼朝が亡くなってからの登場ですが、是非とも頼朝の生前から活躍・主従の絆を描いて欲しかったものです。

果たして劇中ではどのようなキャラクターに描かれ、活躍するのか。今から楽しみですね!

※参考文献:

  • 七宮ケイ三『下野 小山 結城一族』新人物往来社、2005年11月
  • 野口実『東国武士と京都』同成社、2015年10月
  • 松本一夫『下野中世史の世界』岩田書店、2010年5月
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角田晶生(つのだ あきお)

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