大正&昭和

一度ミスれば大事故!東京タワー建設で28万回繰り返された「死のキャッチボール」

東京都のシンボルとして日本国内外から愛されている東京タワー(日本電波塔)。

333メートルの高さを誇る東京タワーは、工費約30億円・工期約1年半(543日間)・工員のべ21万9,335人をもって昭和33年(1958年)12月23日に竣工しました。

当時の建設現場では、強風の中で職人たちがヘルメットも命綱もなく、足場30センチ幅での高所作業に従事していたと言います。

一歩間違えれば転落死……そんな極限状態の中、職人たちは「死のキャッチボール」と呼ばれる荒業を、28万回にわたって繰り返しました。

キャッチボールどころか立っているのもやっとの強風下で、一体何をしていたのでしょうか。

800度に熱した鉄塊を火箸で投げる

画像 : 東京タワーの鉄骨は、死のキャッチボールによってリベット結合された(イメージ)

東京タワーは鉄骨をリベット(かしめ鋲)で結合する部分があり、熱したリベットを鉄骨の穴にさし込んだ後、先端を叩いてつぶすことで抜けなくしました。

現場でリベットを結合するために、まずはリベットを火鉢で熱します。リベットが真っ赤(800度)に熱されたら、それを鉄の火箸でつかみとり、上空の作業場へ向かって勢いよく投げ上げるのです。

20メートルほど上空では、柄がついた鉄バケツでリベットを受け取り、素早く鉄骨の穴にさし込んで鉄骨をかしめました。

一度でも失敗すれば、灼熱の鉄塊が落ちて来ます。それが更に下へ落ちていけば……無事ではすまないでしょう。

まさに死のキャッチボールと呼ぶにふさわしい荒業です。これを幅30センチの足場・高所・強風・ヘルメットも命綱もないという過酷な環境下で、28万回も繰り返したのでした。

結果は一度もミスや事故が起きることもなく、成功裏にリベットをかしめ終えたのです。職人たちの集中力と技術力の高さが伝わりますね。

一人の犠牲者

画像 : 東京タワーに隣接する増上寺 イメージ

しかし東京タワーの建設事業全体を通してみると、犠牲者がゼロだった訳ではありません。

昭和33年(1958年)6月30日午前10時ごろ、鳶職員の一人がバランスを崩し、61メートルの高さから転落死してしまったのです。

「ある日、31歳の部下が、丸太を持って鉄塔を歩いている時、後ろから同僚が声をかけた。それで振り向いたら、丸太が鉄塔にぶつかり、バランスを崩して61m落下、即死した。隣の増上寺で手厚く葬ったよ」

※黒崎建設・黒崎三朗会長の目撃証言より。

61メートルと言えば、タワマン(天井3メートルとして)だと20階くらい、オフィスビル(天井4メートルとして)なら15回くらい。話を聞くだけでぞっとしてしまいます。

殉職された鳶職人の葬儀は、東京タワーからほど近い増上寺(東京都港区)で執り行われました。

東京タワーの建設を通じて、死者はこの1件だけでしたが、たとえ一人であろうと命の尊さは変わりません。

この事故以来、建設現場ではヘルメットや命綱の着用が義務づけられたのでしょうか。

鉄不足に戦車を利用

イメージ

当時はまだ戦後十数年、日本国内では良質な鉄材が不足していました。そこで朝鮮戦争後にスクラップとなったアメリカ軍の戦車約90両分が利用されたそうです。

特別展望台(地上250メートル)より上の部分に戦車の鉄が使われており、軍事兵器が平和目的に転用された事例として、現代に伝わっています。

アメリカとしても、旧式の戦車をわざわざ修理するより、くず鉄として売却したお金で新式戦車の製造資金にあてた方がよかったのでしょうね。

平凡こそ最高!東京タワーの名前が決定

画像 : 完成当時の東京タワー Public Domain

かくして誕生した日本電波塔の名前は、公募によって決定されました。

集まった応募は86,269通。最も多かったのは昭和塔(1,832通)、日本塔と平和塔がそれに続きます。他にも宇宙塔・プリンス塔などがあったそうです。

しかし名称審査会で徳川夢声(とくがわ むせい)が「平凡こそ最高なり!」と発言。結局223通(13位)の応募があった東京タワーに決定。まさに鶴の一声でした。

採用された名前の応募者が多いため、抽選で神奈川県の小学5年生児童に賞金10万円が贈られたということです。

平凡だけど、シンプルがゆえに陳腐化しない。改めて考えると、東京タワーという名前にはそういう魅力が感じられますね。

終わりに

画像 : 現代の東京タワー イメージ

今回は東京タワー誕生秘話「死のキャッチボール」などを紹介してきました。

その優美な姿から今なお高い人気を誇る東京タワーには、職人たちの技術と誇りが結集していたことがわかります。

現代ではとてもマネできないし、絶対マネしてはいけない仕事ぶりでしたが、そんなある種の狂気に惹かれてしまうのはなぜでしょうか。

日本人が培ってきたモノづくりの魂と執念が、人々を惹きつけてやまないのかも知れませんね。

※参考:
・東京電波塔研究会『東京タワー99の謎:50年間、世界一!』二見書房、2006年7月
命綱もメットもなし!ヤバすぎる…「東京タワー」建造時の壮絶秘話
鳶職の華麗なる技が東京タワーを組み上げた!「死のキャッチボール」とは?
文 / 角田晶生(つのだ あきお)校正 / 草の実堂編集部

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