古代文明

アドルフ・ヒトラーとオカルティズムについて調べてみた

アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler,1889年4月20日-1945年4月30日)、この男ほど名の知れた独裁者はいないだろう。
それ故に数多くのエピソードが残るが、彼がオカルティズムに傾倒していたという噂は有名である。激動の生涯だったためにこうした噂も後を絶たないが、本当にヒトラーはオカルトに傾倒していたのか調べてみた。

アドルフ・ヒトラーとオカルティズム
※Adolf Hitler 1938

オカルティズムとの出会い

ヒトラーは若い頃からオカルティズムに触れていたという話があった。
彼が画家を目指すもその才能が開花することなく放浪生活を送っていた20代のことだ。後年になってもヒトラー自身はこの頃の話を避けていたようだが、その時期に神秘主義者との出会いがあったとする説がある。
そのことを裏付けるような内容として、この頃のヒトラーは公立図書館において聖書、他の宗教の経典、占星術書など西洋・東洋を問わずにこうした書物を読み漁っていたようだ。

また、時期を同じくしてオーストリアに一人の神秘主義者が現われた。

1889年に「新テンプル騎士団」を設立し、1907年には聖堂(テンプル)立てたアドルフ・ヨーゼフ・ランツという人物である。


※Adolf Josef Lanz(1874年7月19日~1954年4月22日)

中世の「テンプル騎士団」の名を踏襲しながらも、実際には反ユダヤ主義アーリア人至上主義者の集まりであった。ランツはプロバガンダ活動に力を入れ、「オスタラ」という人種差別的な雑誌を発行する。
1909年、その雑誌を手にしたのが若きアドルフ・ヒトラー青年だったらしい。
少なくとも、この時期にオカルティズムや人種差別への関心が生まれたことは否定できない。芸術家として描いていた未来を否定され、将来に希望を持てなくなった青年には興味を抱くに値する話だったのだろうと思える。

スポンサーリンク

ナチ党におけるプロバガンダ

アドルフ・ヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP・ナチ党)がドイツを支配下におさめた1993年、ナチス・ドイツは「第三帝国」という用語を用いたが、正式な国名は「ドイツ国」だった。
つまり、神聖ローマ帝国の支配下にあった時代、ドイツ帝国時代に続く第三の帝国という意味が込められていたらしい。

ヨーロッパにとって「世界」という言葉がまだ地中海沿岸ほどの意味しか持たなかった古い時代、アレキサンダー大王のマケドニアや神聖ローマ帝国のように「帝国」とは最強の国家を表す名称であった。しかし19世紀末には、すでに帝国という存在は事実上過去のものとなり、その中でヒトラーは強大な「君主」であることをドイツ国内外にアピールしたかったのだろう。

そして、もうひとつの代表的なプロバガンダが「ハーケンクロイツ」鉤十字とも呼ばれ、古代よりヒンドゥー教や仏教、または西洋における幸運の印として使われてきた。

ドイツの考古学者、ハインリヒ・シュリーマントロイの遺跡の中でこの印を発見し、古代のインド・ヨーロッパ語族に共通の宗教的シンボルとみなしたためだという。これが後にアーリア人種の象徴として採用されたようだ。
ヒトラーは、こうした歴史的にも伝統のある言葉や印を積極的に取り入れることでドイツや自らを神格化させようとしたのではないだろうか。それにより、こうしたプロバガンダがヒトラーのオカルティックなイメージ作りに役立ったのだろう。

ナチスの影の動き

映画「インディー・ジョーンズ」シリーズでは、主人公のインディアナ・ジョーンズとナチスが不思議な力を持つ遺物を巡って争うエピソードがある。モーゼの十戒を収めた「聖櫃(せいひつ)」だったり、イエス・キリストの「聖杯」など、いかにもありそうなストーリーだ。

日本でも映画「ローレライ」において、ドイツ軍の潜水艦が特殊装置でアメリカ海軍の艦船をことごとく撃沈するエピソードがある。

見るものにそう思わせてしまう怪しさもナチス=ヒトラーは持っているが、その中でも「都市伝説」や「陰謀論」に近いオカルトのエピソードをまとめてみた。

ロンギヌスの槍


※キリストの脇腹を槍で刺すロンギヌス
イエス・キリストの脇腹を刺したと言われる「ロンギヌスの槍」は、いつしか『運命の槍』と呼ばれ、その槍を手にしたものは勝利を手に入れるが、手放してしまうと死亡してしまうというものであった。
1938年にナチスがオーストリアを併合した際にハプスブルグ家の財宝の中からヒトラーはこの槍を手に入れたという。しかし、連合軍がドイツに攻め入った混乱でこの槍はアメリカ軍に奪われてしまった。その約3日後にヒトラーは自らの命を立ったという。戦後、アメリカがこの槍を極秘に本国に持ち帰ったという噂もあった。

地球空洞説


※気象衛星ESSA-7が写した写真(1968年)

ナチスは地球空洞説に興味を示していたともいう。地球空洞説はSFや冒険小説で昔から多くのエピソードが描かれてきたが、古代の超文明の子孫が隠れ住んでいたという説があった。その報告を受けたヒトラーは1936年より数回にわたりチベットへ調査隊を送っていたようだ。チベットには理想郷シャンバラが存在するとされ、これが地球空洞説の地下都市ではないかと推測されたためである。

南極の秘密基地

極めつけは、「南極の秘密基地にヒトラーが冷凍保存されている」というものである。

ナチスとしては南極のような土地に戦略的価値を見出してはいなかったが、万が一のためにこの氷の大陸に逃亡先として基地を建設していたというのだ。ベルリン陥落の際にドイツを逃れたヒトラーは南米経由でこの基地にたどり着き、「第四帝国」の建設が実現するまで冷凍睡眠により生き残っていると。

その噂との因果関係ははっきりしないが、1946年12月、アメリカ海軍は南極での人工衛星用基地の建設目的で軍艦13隻という大部隊を送り込んでいる。「ハイジャンプ作戦」と呼ばれるこの作戦は第二次世界大戦の翌年に行われた。そのような時期に南極で人工衛星用基地を建設といっても信じがたい話だ。
もしかしたら、何らかの軍事作戦のために南極まで行ったと考えたほうが自然である。

戦後のナチス

第二次世界大戦でドイツが連合国に降伏したのは1945年5月だった。
遺体こそ本人と断定されなかったものの、ヒトラーは4月30日に総統官邸地下壕において自殺、多くの将校が連合国によって逮捕された。

ニュルンベルグ裁判においてナチ党のNo.2であるヘルマン・ゲーリング(死刑執行前日に服毒自殺)をはじめとした名だたる人物が有罪判決を受けることとなったが、なかには連合国の目を逃れて南米に渡ったものも多かった。

その影には、戦時中から実行されていたある計画が関わったと言われている。
すなわち「戦後の速やかな国外脱出とナチス再建」というものだ。スターリングラードの戦いに敗れたドイツは敗戦の色を濃くしていた。そのことを悟ったマルチン・ボルマンは、ナチスの莫大な財宝を資金として使い、大勢のナチ党員を海外に脱出させようとしたのだ。そのようなことができたのもボスマンが総統秘書長、副総統、ナチ党官房長として絶大な権力を持っていたからである。


※マルティン・ルートヴィヒ・ボルマン(Martin Ludwig Bormann 1900年6月17日 ~1945年5月2日)

事実、一部のナチ党員は大西洋を渡り、ナチスに好意的だったアルゼンチンへと逃れている。そのことにより、一部では南米でナチスの生き残りが秘密結社を誕生させたのではないかとの噂が流れたが、実際は単なる国外逃亡に過ぎなかったようだ。
ドイツ空軍の爆撃王、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルは、戦後に別ルートでアルゼンチンに招かれ、各地で拘束されたり逃走を続ける元ドイツ軍人を援助すべく「ルデル・クラブ」を結成したが、こうした運動も秘密結社説を流行らせた原因だったらしい。その後、ルーデルは実業家になりアルゼンチン空軍の設立にも協力。その指導者として名を残した。

最後に

ヒトラーがオカルティックなものに傾倒したという確かな証拠はない。
しかし、自らオカルト的なイメージを作り上げ、民衆を扇動した可能性は考えられる。テレビもインターネットもない時代、そうした噂が世界を動かすこともあったのだろう。

そのことを自覚していたヒトラーは、自らナチスとミステリーを結びつけ、味方には力を、敵には恐怖を与えたのだ。
そう考えると現代に生きる我々も、ヒトラーの手のひらで踊らされているのかもしれない。

 

gunny

gunny

投稿者の記事一覧

gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で


関連記事

  1. ラスプーチンの怪奇な能力について調べてみた【ロシアの怪僧】
  2. 第一次世界大戦前における各国の立場【WW1シリーズ】
  3. キューバについて調べてみた【カリブ海の宝箱】
  4. 太平洋のナポレオン、カメハメハ大王について調べてみた
  5. 神か?人間か?ギルガメシュについて調べてみた
  6. 【英雄サラディン】イスラム教について調べてみた
  7. 中世の騎士について調べてみた
  8. 超古代文明の宇宙人統治説について調べてみた

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

新着記事

ピックアップ記事

・キヒロの青春【第一話】から読む



スポンサーリンク

草の実漫画サイト

PAGE TOP