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【第二次世界大戦の原因?】1929年の「ウォール街大暴落」と「世界恐慌」とは

今から約100年前の1929年頃、アメリカから発生した「世界恐慌」は、後に起こった第二次世界大戦の遠因とされています。

近年でも「リーマンショック」や「コロナショック」など世界的な株価の大暴落がありましたが、なぜ、1929年の株価大暴落が世界大戦へとつながる要因となってしまったのでしょうか。

1929年の「ウォール街大暴落」

画像 : 1929年10月25日、金曜日のニューヨーク証券取引所で、株券の売りが前日から続いてパニック状態になっている証券ブローカーたち public domain

1929年10月、ニューヨーク株式市場で大規模な株価暴落が発生しました。

この暴落は「ウォール街大暴落」と呼ばれ、アメリカ国内だけでなく、世界中に大きな経済的混乱を引き起こしたのです。

特に、10月24日の「ブラックサーズデー」と、続く10月29日の「ブラックチューズデー」は、歴史的な大暴落として記憶されています。

当時、第一次世界大戦の戦場にならなかったアメリカは、自動車生産や住宅建設などを中心に経済が好調であり、銀行は融資を緩和し、株価が急速に上昇していました。

画像:筆者作成 アメリカ工業分野株の平均価格 ※世界史入門 下 (三一新書) より抜粋し、グラフ化

株価が右肩上がりのため、人々は借金をしてでも株を購入し(信用取引)、投機はますます過熱していきました。

しかし、実体経済では生産能力が需要を大幅に上回り、在庫が余る状況になっていました。

「ウォール街大暴落」が起こったはっきりとした原因は不明ですが、大きな要因としては、この商品の生産過剰状態が投資家たちの売りを呼んだと考えられています。

世界恐慌の発端

世界恐慌が起こった原因としては様々な説がありますが、一般的にはこの「ウォール街大暴落」がきっかけで、世界恐慌が始まったとされています。

画像 : 1929年の大暴落の後でウォール街に集まる群衆 public domain

不安に駆られた預金者たちは、銀行から一斉に預金を引き出そうとし、多くの銀行が対応できずに倒産。

これにより企業への融資が止まり、企業が倒産、工場が閉鎖され、労働者の解雇が相次いだのです。

失業者は急増し、1933年にはアメリカの失業者数が全人口の約10%に達しました。

この恐慌は、工業だけでなく農業にも深刻な影響を与えました。
トラクターの導入などによる機械化で農業生産が効率化し、過剰生産が進んでいたところに、恐慌が追い打ちをかけ、農産物の価格が急落したのです。そのため、農業経営者の多くが破産したのです。

また、当時のアメリカ大統領フーヴァーは、政府が経済に積極的に介入するべきではないという「自由放任主義」を信じていました。

「市場に任せておけば、景気は自然に回復する」と、政府の介入を控えた結果、対応が遅れ、恐慌の影響はさらに深刻化したのです。

アメリカの恐慌が世界へ波及した理由

画像 : イギリス世界恐慌 カラー public domain

では、アメリカの株価暴落が、なぜ世界全体を巻き込む恐慌へと発展したのでしょうか?

その理由は、第一次世界大戦後のヨーロッパの戦後復興が、アメリカからの投資によって支えられていたからです。

アメリカがドイツに巨額の資金を供給し、ドイツはその資金で経済を立て直し、イギリスやフランスに賠償金を支払うという仕組みがありました。この仕組みの中で、イギリスやフランスはアメリカへの戦時借款を返済していたのです。

ところが、世界恐慌が発生し、アメリカがドイツへの資金供給を引き上げたことで、ヨーロッパ全体の経済が停滞しました。

特にドイツは、第一次世界大戦の敗戦国として、多額の賠償金支払いに苦しんでいた上に、アメリカの資金供給が停止したため、さらなる経済的困難に直面します。

保護貿易主義とブロック経済

アメリカは恐慌への対策として関税を引き上げ、輸入を制限する「保護貿易主義」を採用しました。一方、イギリスやフランスは本国と植民地を中心とした経済圏を形成し、他国の商品を排除する「ブロック経済」を展開しました。

この結果、日本、ドイツ、イタリアなど、植民地を持たない国々は、植民地獲得のために積極的に海外進出を目指すようになり、国際社会の緊張が高まっていきました。

こうした国際的な経済圧力と植民地拡大への動きが、最終的に第二次世界大戦の大きな引き金となったのです。

第二次世界大戦後の国際秩序

画像 : ダンバートン・オークス会議 (後のサンフランシスコ会議で採択された国連憲章のもととなった)public domain

第二次世界大戦後、国際社会は新たな国際秩序の構築に向けて動き出しました。

1945年6月、サンフランシスコ会議で国連憲章が採択され「国際連合」が発足します。
国際連合は、世界大戦という大きな悲劇を二度と繰り返さないために、国際平和と安全の維持、そして各国間の協力と発展を目的として設立されました。

本部はニューヨークにおかれ、加盟国は1票の投票権をもちます。
議事は基本的に多数決で決定されますが、常任理事国である「アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国」のいずれか1国でも拒否権を行使すると、その議案は否決されます。

しかし、時には拒否権の行使によって紛争や問題の解決が遅れ、長期化することもありました。そのため、近年ではこの拒否権制度に対して改革を求める声が高まっています。

画像 : ブレトン・ウッズのランドマーク、マウント・ワシントン・ホテル。ブレトン・ウッズ協定はここで締結された wiki c Sven Klippel

また、経済面では1944年、ブレトン・ウッズ体制が構築されました。この体制は、国際金融システムの安定を維持し、各国が経済成長を実現できるよう支援することを目的としており、その一環として国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)が設立されました。
この体制においては、アメリカドルと各国通貨の交換比率を固定する「固定為替相場」が採用され、1973年頃まで続きました。(現在では、ほとんどの国で変動相場制が採用されています)

さらに、ブロック経済の再発を防ぐため、自由で公正な国際貿易を促進するための、関税および貿易に関する一般協定(GATT)が策定されました。現在、GATTは世界貿易機関(WTO)に組み込まれています。

終わりに

第二次世界大戦は、世界恐慌を背景に各国が自国経済を優先させ、国際的な対立が深まった結果として勃発しました。

その後も、リーマンショックやコロナショックといった経済危機がありましたが、1929年のような大規模な世界恐慌は回避されています。これは、アメリカを中心とした国際経済連携がそれなりに機能したと言えるでしょう。

しかし、経済体制は常に変化を求められており、災害やパンデミックといった新たな課題にも、今後も各国が協力して対応することが求められます。

参考:『世界史入門 下』河野健二
文 / 草の実堂編集部

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