7月20日に投開票された参議院選挙で、自民党・公明党の与党は改選66議席から47議席へと大幅に減らし、非改選を含めた参院全体の過半数(125議席)を割り込む歴史的大敗を喫した。
石破茂首相は続投を表明したが、党内からは退陣を求める声が噴出。にもかかわらず、世論調査では石破政権の支持率が上昇傾向にある。
この背景には、複雑な政治的・社会的要因が絡み合っている。
なぜ、自民党の大敗にもかかわらず、石破政権への支持が高まっているのか。その理由を以下に探る。
自民党敗北の背景と民意の分裂

画像 : 石破茂総理 CC BY 4.0
自民党の大敗は、複数の要因が重なった結果だ。まず、選挙戦での戦略の迷走が目立った。
石破首相は一貫して消費税減税に否定的だったが、選挙前に突如として現金給付案を打ち出すなど、場当たり的な政策が有権者の不信を招いた。
さらに、保守層の離反も大きかった。参政党や国民民主党といった新興政党が「日本人ファースト」や減税・積極財政を掲げ、自民党の岩盤支持層の一部を取り込んだ。
特に参政党は改選前1議席から14議席へと躍進し、比例区での得票率でも存在感を示した。
この結果、自民党は1人区で14勝18敗と苦戦し、比例代表でも過去最低の得票率を記録した。
一方、野党第一党の立憲民主党は改選前と同等の22議席にとどまり、反自民票の受け皿になりきれなかった。
国民民主党や参政党が保守層に訴求したことで、民意が分裂。
石破政権への明確な不信任票がまとまらず、与党大敗が政権への直接的な打撃につながらなかった。
石破首相の続投と国民の期待
石破首相は、参院選の大敗を受けても「比較第1党の責任」を強調し、続投を表明。
米国との関税交渉や物価高、災害対策など「国難」を理由に、政治空白を避ける姿勢を示した。この決意は一部の国民に「指導者の責任感」として受け止められた。
特に、米国の25%関税発動期限が8月1日に迫る中、外交交渉の継続性を求める声が支持率上昇の一因となった。
世論調査では、参院選後の支持率が19%から一部調査で25%前後に回復。特に、中道層や無党派層の間で「安定感」を評価する声が広がっている。
また、石破氏の個人的なキャラクターも影響している。
長年の政治家としての経験や、防衛・地方創生での実績が、危機管理能力への信頼感を生んでいる。
党内での批判が高まる中、「判官贔屓」的な感情も支持率を押し上げている可能性がある。
X上の投稿では「石破辞めるな隊」なる声も見られ、マスコミの一部擁護も後押ししている。
政局の不透明さと今後の課題
しかし、石破政権の先行きは不透明だ。
衆参両院で少数与党に転落した自民党は、予算案や法案成立において野党との妥協を迫られる。
立憲民主党の野田佳彦代表は「石破政権へのNO」を強調し、連立の可能性を否定。国民民主党も政策実現を優先し、与党との協力を明確に拒否している。
党内では麻生太郎元首相らが「続投は認めない」と退陣圧力を強めており、党則に基づく総裁選前倒しの可能性も浮上している。
さらに、経済的な不安定要素も大きい。
参院選での野党の躍進は、財政悪化懸念を強め、債券安や円安圧力を招いている。
市場の動揺は、政権の経済政策への信頼低下を反映しており、今後の臨時国会での予算編成が焦点となる。
石破政権が野党との連携を模索する中、政策の停滞は避けられない情勢だ。
支持率上昇の持続可能性

画像 : 参政党 神谷代表wiki © Mottinn
石破政権の支持率上昇は、短期的には「安定への期待」や「外交継続性の必要性」によるものだが、持続性には疑問が残る。
自民党内の分裂リスクや、野党との交渉難航が予想される中、国民の期待に応えられなければ支持率は再び低下するだろう。
特に、経済政策や関税交渉の成果が求められており、失敗すれば「スリーアウト・チェンジ」の声が一気に高まる可能性がある。
結論として、石破政権の支持率上昇は、選挙での大敗を上回る「危機時のリーダーシップ」への期待と、民意の分裂による野党の受け皿不足が背景にある。
しかし、党内対立や政策実現の難しさから、政権の基盤は脆弱だ。
今後の政局は、石破首相の政治手腕と野党との駆け引きにかかっているだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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