9月7日、石破首相が辞任の意向を表明し、次回の自民党総裁選に立候補しない考えを示した。
参議院選挙での歴史的大敗や党内からの強い退陣圧力、そして国民の信頼喪失が背景にあったが、決定的な要因は何だったのか。
参議院選挙の惨敗と党内圧力

画像 : 辞任を発表した石破氏 CC BY 4.0
7月20日の参議院選挙で、自民党は公明党とともに過半数割れの惨敗を喫した。
この結果、衆参両院で少数与党となり、石破政権の基盤は大きく揺らいだ。
選挙直後から、党内では「石破おろし」の動きが加速。複数の都道府県連(茨城、栃木、愛媛など9県連)が退陣を求める文書を提出し、若手議員や青年局も「即時退陣」を求める声を上げた。
特に、自民党新潟県連や北海道連は、選挙結果の責任を明確にし、「けじめ」として石破首相の辞任を強く要求した。
党内では両院議員総会の開催を求める署名活動も進み、執行部の刷新を求める声が日増しに高まった。
日米関税交渉と政策の限界

画像 : 赤沢亮正経済再生担当大臣とトランプ大統領(2025年4月16日、オーバルオフィスにて)出典:内閣官房ホームページ (CAS)CC BY 4.0
石破首相は、米国との関税交渉の妥結を理由に一時続投の意向を示していた。
7月23日、赤沢亮正経済再生相が帰国し、交渉の詳細を報告したが、鉄鋼・アルミニウムへの高関税が継続するなど、結果は日本にとって厳しいものだった。
石破氏は「合意の実行が重要」と強調したが、国民生活への影響や経済政策の不透明さが批判を招いた。
党内からは「政策課題への対応が不十分」との声が上がり、関税交渉を成功裏に終えたとしても、政権の求心力を取り戻すには至らなかった。
党内分裂と世論の乖離
石破首相は「党内世論と世論は別」と述べ、SNS上での「#石破やめるな」の投稿(24万5000件以上)を背景に続投を模索した。
7月25日には首相官邸前で「石破辞めるな」と訴えるデモも発生し、一部国民から支持を受けた。
しかし、党内では麻生太郎、菅義偉、岸田文雄の歴代首相との会談後も支持が広がらず、森山裕幹事長の辞任示唆が政権の不安定さを露呈。
党内分裂を避けたい石破氏の思いとは裏腹に、旧安倍派や高市早苗氏支持派による「ポスト石破」への動きが加速し、求心力はさらに低下した。
退陣の決定打「裏金問題と国民の不信」
最終的な決定打となったのは、自民党の「裏金問題」への対応の遅れと、それに伴う国民の信頼喪失だ。
鈴木宗男氏などは裏金問題のけじめがつけられていないと批判し、国民の怒りが選挙結果に反映されたと指摘。
石破政権は、過去の負の遺産を背負いながらも、抜本的な党改革や信頼回復策を打ち出せなかった。
党内からの退陣要求が強まる中、8月8日の両院議員総会で総裁選の前倒しが議論され、石破氏の続投は困難との認識が広がった。
9月7日、ついに辞任を決断。記者会見で「国民の負託に応えられなかった」と述べ、総裁選不出馬を表明した。
今後の自民党と日本の行方

画像 : 自由民主党本部 Lombroso CC BY-SA 4.0
石破首相の退陣により、自民党は臨時の総裁選を通じて新たなリーダーを選出する。
高市早苗氏や小泉進次郎氏らの名前が挙がるが、党内は依然として分裂状態にあり、野党との連立交渉も不透明だ。
国民民主党の玉木代表は「民意を無視した続投は理解しがたい」と批判し、共産党の田村委員長も「自公政権へのノー」と選挙結果を強調。
石破政権の終焉は、日本の政治に新たな転換点を迎える契機となるか、注目が集まる。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
この記事へのコメントはありません。