ミリタリー

新兵器ではありつつも過大評価された兵器・近接信管

画期的兵器 近接信管

近接信管

第二次世界大戦において実用化された兵器は数多く存在しますが、その中でも画期的なものとして挙げられるのが「原子爆弾」に「レーダー」、そして「近接信管」でした。

「近接信管」は通称としては「VT信管」とも呼称されていますが、これは火砲などの砲弾をその対象物に命中させなくても、ある距離の中に到達した時点で爆発させることのできる信管のことを指しています。
アメリカ海軍の軍艦に搭載された対空砲の砲弾として実用化され、その効果を飛躍的に高めたものとして知られるようになった兵器技術でした。

電波の利用

アメリカ海軍は「近接信管」を開発するにあたり、電波を使用することを考えました。

そして大きく「電波を発信する仕組み」、「発信した電波を受信する仕組み」、「信管を起爆させる仕組み」をこの当時の技術にあった真空管を利用して実用化に取り組みました。

しかし、この実用化には、それらの仕組を砲弾の中に納まる大きさにする同時に、砲弾の射出時の熱や衝撃に耐えうるものとする必要がありました。
加えてそれらを安定して動作する設計として、大量に生産可能でなくてはならないという、非常に困難な課題に取り組んだ末、実戦配備するに至りました。

マリアナ海戦での戦果

※マリアナ沖海戦 アメリカ軍の攻撃を受ける空母瑞鶴と駆逐艦2隻

「近接信管」はその性能から、1944年6月に行われたマリアナ沖海戦でのアメリカ海軍の圧勝劇に大きく貢献した兵器と喧伝されました。

しかし、実際にはこの海戦にアメリカ側が勝利した要因は、アメリカが持っていた高性能なレーダーと航空機(戦闘機)の性能の高さが最大のポイントだったと考えられます。

これは、この海戦当時の対空砲弾は凡そ8割り従来型のものであり、「近接信管」は残りの約2割にしか過ぎなかったこと、そもそもアメリカ側が撃墜したとされる日本軍機378機中、対空砲によるものは19機に過ぎなかった言われているためです。

技術力の誇示

では「近接信管」がマリアナ沖海戦の立役者のような伝えられ方をしたのがなぜかと言えば、単純に当時のアメリカ海軍の技術力の誇示というのが真相のようです。

これは「近接信管」を画期的な兵器として「魔法の信管(Magic Fuse)」と評したことからも窺うことができます。

一説によれば、「近接信管」の開発にはアメリカ中の物理学者の3%にも上る人員が投入されたとも伝えられており、その費用面からも効果があったことを宣伝する必要があったのだと考えられます。

第二次大戦中の投入

「近接信管」は従来の対空砲に比べて、約3倍から7倍もの命中率の向上が図れたとされています。これを考えると画期的な兵器であったことは間違いのないところと言えました。

ただし、今日のような40ミリ機関砲など小さな砲弾への実用化は出来ず、当時は5インチ砲弾の大きさが技術的に必だったこともあり、機能と発想では優れていたものの、限定的な効果に留まったものと思われます。

因みに日本では、戦後になるまでアメリカが「近接信管」を実戦に用いたことに気付いていなかったとされています。

また、陸上における使用は、不発だった場合に回収されてその存在が明らかになることを恐れ、1944年12月のヨーロッパ西部戦線におけるドイツ軍のアルデンヌ攻勢時まで行われなかったと伝えられています。

ミサイルにも搭載

目標物を識別する方法は当時と異なるものの、現在においても近づくだけで炸裂して敵を攻撃するという考え方は有意なものとして、砲弾だけに留まらずミサイルなどにも用いられるようになりました。

地対空、艦対空、空対空などの各種のミサイルに近接信管が採用されており、ミサイルの周囲に電波を出すと、その反射によって敵を感知して起爆させる仕組みになっています。

 

 

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