ミリタリー

世界初の航空母艦同士による海戦・珊瑚海海戦

史上初の航空母艦同士の海戦

珊瑚海海戦

※珊瑚海海戦

珊瑚海海戦(さんごかいかいせん)は、戦史上初となった航空母艦同士で戦われた海戦です。

太平洋戦争開始後に連戦連勝を続けていた大日本帝国海軍にとって、辛勝ではあったもののその勢いを削がれることに繋がった海戦でした。

この海戦は1942年(昭和17年)5月にアメリカとオーストラリアの分断を企図した日本軍が、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーを制圧しようと南下したことろを、アメリカを主力とした連合国が迎え撃った戦いで、戦術的にはかろうじて日本の勝利、戦略的にはポートモレスビーを守った連合国の勝利と評されています。

オーストラリアの分断

太平洋戦争開戦初頭、1941年(昭和16年)12月のマレー沖海戦で、イギリスのレパルスやプリンス・オブ・ウェールズらの戦艦を撃沈した日本は、戦争の早期終結を目指してオーストラリアを孤立させることを検討しました。

陸軍は当初、オ—ストラリアの占領は無謀と見てその攻略に反対の立場でしたが、最終的に海軍の案に従い、パプアニューギニアのポートモレスビーを攻略してオーストラリア北部を支配下に置く作戦を承諾しました。

そのため艦隊は陸軍の輸送船団とその掩護艦船と、航空母艦の機動部隊で編制されました。

日本側が先手

日本軍の暗号を解読した連合国は、オーストラリアの孤立化を防ぐためにアメリカの2隻の航空母艦レキシントンヨークタウンを迎撃に向かわせました。またホーネットエンタープライズの2隻の航空母艦も、結果珊瑚海海戦には間に合わなかったものの同海域へと向かわました。

日本側では航空母艦・翔鶴瑞鶴を中核とした機動部隊と、軽空母・祥鳳が投入されていました。珊瑚海海戦の初日となったのは5月7日の早朝でした。

空母・瑞鶴、翔鶴から飛び立った偵察機が5時30分頃にアメリカ軍の航空母艦、巡洋艦、給油艦の発見を報告しました。

この報を受けて両空母から「零式艦上戦闘機」18機、「九九式艦上爆撃機」36機、「九七式艦上攻撃機」24機が発進しました。しかし着いた先には給油艦と駆逐艦のみしかおらず、誤報でした。

祥鳳の撃沈

※魚雷が命中した空母祥鳳

日本側はそれでも「九九式艦上爆撃機」の36機に攻撃を指示し、この攻撃で駆逐艦を撃沈し、給油艦も航行不能に陥れました。

アメリカ側でも日本の航空母艦を巡洋艦と誤認するなどの情報が錯綜していましたが、ようやく正しい情報を掴み、空母・ヨークタウン、レキシントンから「F4Fワイルドキャット戦闘機」18機、「SBDドーントレス急降下爆撃機」52機、「TBDデバステーター雷撃機」22機を軽空母・祥鳳の攻撃に向けました。この攻撃で祥鳳は撃沈されてしまいました。

5月7日の午後には連合軍の巡洋艦・駆逐艦を発見した日本側が、瑞鶴から攻撃機を発進させたましたが、天候の悪化で攻撃に至らず、逆にレーダーでこの攻撃を探知したアメリカ側の戦闘機が迎撃に出て、日本側の損失8機、アメリカ側の損失2機と連合国が優勢に戦いを進めました。

珊瑚海海戦 損害と結果

海戦二日目の5月8日早朝、翔鶴の偵察機がついにアメリカの航空母艦を発見しました。しかし同時にアメリカ側も日本の航空母艦を発見、双方が互いに攻撃隊を発進させる展開となりました。
しかし天候は今度は日本側に味方し、先に発進したアメリカ側の攻撃が遅れました。

アメリカの攻撃は後方にあった翔鶴に集中し、雷撃は交わしたものの、飛行甲板への爆撃を受けて中破の損害を被りました。

※日本軍の攻撃を受け炎上するアメリカ海軍空母レキシントン

一方で日本は、ヨークタウンに爆撃を命中させ、レキシントンには爆撃と雷撃を各2発ずつ命中させる戦果を挙げました。

この2日間の戦闘で結果、日本は軽空母1隻、アメリカは正規空母1隻を失い、中破が各正規空母1隻とレーダーを備えたアメリカに対して日本が辛勝を得た結果となりました。

しかし同時に日本の戦略目標であったポートモレスビー攻略は失敗し、その意味では日本の敗北でもありました。

 

アバター

swm459

投稿者の記事一覧

学生時代まではモデルガン蒐集に勤しんでいた、元ガンマニアです。
社会人になって「信長の野望」に嵌まり、すっかり戦国時代好きに。
野球はヤクルトを応援し、判官贔屓?を自称しています。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「ポケット戦艦」と呼ばれた軍艦について調べてみた
  2. 切腹してから散弾銃で…元号法制化に命を賭けた影山正治の壮絶な最期…
  3. 『実践女子学園の創設者』 下田歌子 ~日本女子教育の礎を築いた生…
  4. ティーガーⅡ について調べてみた【ドイツ陸軍の切り札】
  5. オリンピックに懸けた日本人達 ~「マラソンの父」金栗四三の軌跡~…
  6. 戦争へ世論を導いた「影の実力者」、徳富蘇峰について調べてみた
  7. 絶望的戦況で戦った「評価されるべき」日本の現場指揮官たち
  8. 闇に消えた旧日本軍の隠し財産【隠退蔵物資】~国家予算の4倍の物資…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

高野長英とは ~幕末に顔を変えて逃亡 潜伏した医師

外国船の打払令を痛烈高野長英とは (たかのちょうえい)は、江戸時代の末期を生きた医師であ…

開戦から80年…真珠湾攻撃の暗号「ニイタカヤマノボレ」ってどこの山?

時は昭和16年(1941年)12月8日、大日本帝国がアメリカをはじめとする連合国軍に対して宣戦布告、…

台湾の新型コロナウイルス対策方法 「買い物の実名登録制度、感染者のGPS監視」

拡散防止の取り組み現在(2021年9月)ここ台湾では第二級の警告が継続して発令中である。今回…

柳川一件 〜江戸初期の幕府を揺るがした国書偽造事件

国書偽造の告発柳川一件(やながわいっけん)は、江戸初期の第三代将軍・徳川家光の治世におい…

もう中華系だからとは言わせない!HUAWEI端末の本気

家電に詳しい人でも「HUAWEI(ファーウェイ)」の名前は聞いたことはないかもしれない。しかし、…

アーカイブ

PAGE TOP