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平壌を走るボルボ「北朝鮮問題にスウェーデンが絡む理由」

※在平壌スウェーデン大使館

アメリカのトランプ大統領が北朝鮮の金正恩委員長と緊張状態に入り、一時は米朝衝突の可能性すらあった去年と打って変わって、今のところ、北朝鮮はアメリカ、日本、韓国と対話の方向でことを進めている。

さて、そんな北朝鮮だが、実はこれらの3ヵ国とは正式な国交はない。平壌にはアメリカ大使館もないし、日本、韓国も外交官を派遣しているわけではない。

では、北朝鮮はどのようにアメリカや日本、韓国とコミュニケーションをとるのだろうか?

その答えの一つは実はスウェーデンなのである。

実際に2009年10月に北朝鮮に拘束されていた2人のアメリカ人ジャーナリスト、ロウラ・リー氏とユニ・リー氏が解放されるまで、拘束されていた2人の安否を確認していたのは実は在北朝鮮スウェーデン大使なのである。
今回は、なぜ北欧にあるスウェーデンが北朝鮮とアメリカの仲介役をするまでになったのかを調べてみた。

すると、その歴史には北朝鮮に渡った1000台のボルボが深く関わっていることが分かったのだ。

国交樹立前

※スウェーデンの国旗

さて、北朝鮮とスウェーデンの関係は実は朝鮮戦争までさかのぼる。

当時、スウェーデン赤十字社は野戦病院を北朝鮮で運営していた。
朝鮮戦争休戦後も、スウェーデンは南北間の衝突を回避し、停戦状況を監視する中立国監視委員会(NNSC)のメンバーの1ヵ国でもあったのだ。

ただし、スウェーデンと北朝鮮の関係はこれだけで終わることはなかった。

当時のスウェーデンの左派勢力は北朝鮮の国家承認を主張、北朝鮮もスウェーデンの首都ストックホルムに情報局を設置するなど、それなりに交流が進んでいた。

国交樹立と貿易協定

さて、このように他の西側諸国よりも深い関係を北朝鮮ともったスウェーデンであるが、正式な国交樹立は1973年に行われた。

その後、驚くことだが、両国の間では貿易が盛んにおこなわれるようになったのだ。現在の北朝鮮といえば、貧困のイメージがあるが、当時は韓国よりも裕福であるイメージが日本でもあった。

スウェーデンが北朝鮮との貿易が盛んに行われた理由は、当時のスウェーデンが、北朝鮮も経済復興に成功し有望なマーケットと見ていたからである。これは民間企業も同じで、ボルボを含むスェーデン企業の多くが当時は自社製品を北朝鮮に輸出したいと考えていた。

そしてボルボ1000台を含む様々なスウェーデン製品が北朝鮮へと輸出されたのだ。

平壌を走るボルボ「北朝鮮問題にスウェーデンが絡む理由」

※1972年からのVolvo 144のセダン 北朝鮮は1970年代初頭に144型を1000台輸入。 wikiより

実はボルボの代金は支払われていない

さて、スウェーデンと北朝鮮の貿易は一見すると発展するように見えたが、実はスウェーデンにとって困った問題が起きてしまったのだ。

なんと、北朝鮮側はこの貿易で輸入したスウェーデン製品の代金を支払っていないのだ。

当然貿易は中止になったが、当時スウェーデンでは7千万USドル相当の製品を輸出していたが、その殆どが支払われておらず今でもそのままだ。

それでもスウェーデンは得たものがなかったわけではない。それは北朝鮮政府からの信頼である。

平壌にあるスウェーデン大使館はアメリカと北朝鮮の仲介役をたびたび務めるようになったのだ。実際に、上記のアメリカ人ジャーナリストが拘束されている間も、スウェーデン大使が面会に訪れ、医薬品の提供から家族への手紙の取次まで行っていた。つまり西側と北朝鮮の仲介役でもあり、北朝鮮国内にいる西側の人達を守る役割も担っているということだ。

2001年には当時のスウェーデン首相であったペーション氏が北朝鮮を訪問した。

彼は歴史上、最初に北朝鮮を訪問した西側の首脳となったのだ。

このように1000台のボルボは、実はスウェーデンと北朝鮮の深い関係の象徴であった。2010年頃までは平壌市内でこれらのボルボは走っていたそうであるが、近年はメンテナンスが難しくなったのか、ほとんどその姿が確認されることはないそうだ。

しかし、北朝鮮問題で、スウェーデンが今後も重大な役割を担うことには変わりはないであろう。

関連記事:
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場末の政治評論家

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高校時代、なぜか日本史と世界史だけは点数がよかった高校時代。
その後、何の間違えか、有名大学に入学し、行政書士試験に受かり、
TOEICでも800点台をとってしまう。
親から将来を期待されいたが、元来行政書士実務と歴史、アメリカ政治
と興味の幅が狭かったため、就職活動は大苦戦。何とか都内のIT企業で
営業につくも、そこでも大苦戦。実は発達障害があることがわかり、
生き方を変える必要が出てきてしまった。
今は行政書士登録に向けての準備と、歴史・政治ライターとしての活動を
続けています。

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