ミリタリー

新聞が巻き起こした戦争・イエロージャーナリズムと米西戦争

米西戦争 の原因

米西戦争

米西戦争(べいせいせんそう)は、アメリカスペインとの間で行われた1898年に発生した戦争です。

アメリカ海軍の軍艦メイン号がハバナ湾で謎の爆発を起こしたことがきっかけとなって始まった戦争でしたが、元々キューバを植民地としていたスペインと、そのキューバに対し砂糖製造などで莫大な投資を行って
いたアメリカとの利害関係の衝突が本来的な原因といえる戦争でした。

この戦争にあたって、開戦に向けたアメリカ世論の形成に大きな役割を果たしたものが「イエロージャーナリズム」と呼ばれた当時の新聞報道でした。

新聞が引き起こした戦争とも言われる米西戦争について調べて見ました。

新聞の拡張競争

※黄色新聞の記事

当時のアメリカではニューヨーク・ジャーナル紙とニューヨーク・ワールド紙の2つの新聞が発行部数の拡張にしのぎを削る状態にありました。

こうした状況下、読者の関心を引こうとセンセーショナルな話題や内容の掲載競争が行われるようになり、次第に捏造された記事が紙面を飾るようになったとされています。

現在から見ると、ゴシップ系の週刊誌などに近いメディアだったと言えるかもしれません。

こうした内容を競った結果、当初の発行部数はワールド紙が15,000部、ジャーナル紙が1,500部にすぎなかったものが、米西戦争のマニラ湾での戦いが発生した時点では、何と160万部にまで部数が伸びたと伝えられています。

イエロージャーナリズムの語源

※イエロー・キッド(The Yellow Kid)

イエロージャーナリズムという名称の語源は、当初ワールド紙に掲載されていた人気漫画の主人公の「イエローキッド」から取られたもので、ジャーナル紙がその漫画の作者を引き抜いて自紙への漫画掲載を行わせ
たため、ワールド紙は別の人物を起用して同じ「イエローキッド」を書かせて掲載することになり、この両新聞の争いを評して名付けられたと伝えられています。

こうした部数拡張競争の中において、キューバにおけるスペイン人の非人道的な行為を誇張・捏造して報道することにより、アメリカの世論はキューバへの軍事介入を支持する勢力が多数を占めるようになりました。

この世論の後押しを受けてアメリカ政府・軍も戦争への傾斜を強め、1898年2月、ハバナ湾にあったアメリカ海軍の戦艦メイン号が謎の爆発を起こした事件を、スペインの謀略と見做して同年4月には戦争へと突入しました。

フィリピン・グアムの占領

※太平洋での戦い wikiより

アメリカはスペインの植民地であったフィリピンに太平洋艦隊を差し向け、1898年5月にマニラ湾海戦でこれを破りました。

フィリピンにはスペイン陸軍も駐留していましたが、フィリピンの独立運動家と結んだアメリカが共同でスペイン軍を攻撃し降伏させると、自らがスペインにとって代わりフィリピンを植民地として統治しました。

またスペイン領であったグアム島に対しても、1898年6月20日に軍艦からの艦砲射撃を行いこれを占領しました。

スペインの敗北

アメリカはキューバにおいても陸海軍を投入してスペインを排除しようとしました。

戦いの舞台となったのはキューバのサンチャゴ湾周辺で、湾内にはスペインの艦隊と陸軍の守備兵が配置されていました。
先ずアメリカは陸から攻めて要所サンファン高地を陥落させました。これを受けてスペイン艦隊は湾外へと逃れようとしましたが、アメリカ大西洋艦隊の攻撃を受けて壊滅し、アメリカが制海権を掌握しました。

残されたスペイン軍は陸のサンチャゴ要塞に籠り防衛を試みましたが、同年7月17日に降伏しスペインは継戦能力を失って同年8月に戦闘は終結し、続く12月に和平条約を締結しました。

これによりアメリカはスペインからフィリピン、グアム、プエルトリコを獲得すると同時に、キューバを保護下に置き、実質的な植民地とすることに成功しました。

 

アバター

swm459

投稿者の記事一覧

学生時代まではモデルガン蒐集に勤しんでいた、元ガンマニアです。
社会人になって「信長の野望」に嵌まり、すっかり戦国時代好きに。
野球はヤクルトを応援し、判官贔屓?を自称しています。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 毛沢東はどんな人物だったのか?① 「中国共産党中央委員会主席とな…
  2. 【独裁者の素質】14の指標チェック 「あなたはいくつ当てはまる?…
  3. 『シリア・アサド政権が崩壊』 主導した「シリア解放機構」って何?…
  4. 台湾の新型コロナウイルスの対応と現在
  5. 初めて日本に訪れた台湾人に聞いてみた 「日本の感想」~後編
  6. 日本の社畜文化とコロナ 「風邪でも休みにくかった日本人」
  7. 紅の豚における虚構と現実 「ポルコの飛行艇のモデル」
  8. 近年の中国における改正「反スパイ法」 ~今後の日本への影響は?

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【娘と馬が夫婦になって父が激怒】 東北地方に根ざした「オシラサマ信仰」とは

オシラサマとはオシラサマは、日本の東北地方、特に青森県や岩手県に深く根付いていた民間信仰の一種で…

現地取材でリアルに描く 『真田信繁戦記』 第1回・甲斐脱出編

『どうする家康』真田信繫登場NHK大河『どうする家康』は、豊臣秀吉との対立という新たな展…

栗山利安 〜黒田官兵衛の股肱の臣

黒田家の股肱の臣栗山利安(くりやま としやす)は、通称を善助(ぜんすけ)と言い、黒田孝高…

【光る君へ】 道長の陰謀?「光少将」藤原重家が出家した理由とは

平安時代、娘たちを次々と入内させて皇室の外戚となり、権力の絶頂を極めた藤原道長。もちろんその…

【2024年にAIが達成?】 恐ろしい3つのブレイクスルーとは 「殺人ロボット、ディープフェイク、汎用人工知能」

人工知能(AI)の進歩は目覚ましく、私たちの生活や社会に大きな影響を与えつつあることは、すでにご存知…

アーカイブ

PAGE TOP