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台湾にも原住民がいた 【政府認定16民族】

台湾原住民族

台湾原住民族は、中国大陸からの移民が盛んになる17世紀以前から居住していた、台湾の先住民の名称である。

中国語で先住民と表記してしまうと、「すでに滅んでしまった民族」というニュアンスになってしまうため、この表記は台湾では用いられない。
日本では「原住民(族)」を使う場合、「現地の呼称や少数民族の意見を尊重するため」と注釈をつける例もある。

政府認定16民族

現在、台湾政府が認定している原住民は16族である。後に原住民として認定されたという例もある。

原住民としての定義はいくつかあり、植民地化前にすでに一つの民族として成り立っており歴史との関連性があること。独自の文化、社会制度、法律、後代に受け継ぐことのできる土地があり発展の見込みがあることなどがあげられる。

ここでは、主な原住民について人口の多い順番にいくつか取り上げたい。

アミ族

アミ族 民族衣装.JPG

総人口は216,559人。「Amis」と呼ばれ、北方の人という意味がある。台湾の中央山脈より東、有名な場所だと花蓮が最も多く、南は屏東、北にも住んでいる。
アミ族の80歳以上の人々の多くは日本語教育を受けており、日本語が話せる。中には日本名を持っている人や日本兵の父親を持つ人たちもいる。

筆者が会ったことのあるアミ族は、背が高く色白で整った顔立ちの人たちが多かった。
彼らの伝統産業は農業と漁業であり、小米(アワ)や米を育て主食である。

日本でも餅米を使った赤飯が祝い事の時によく食べられているのと同様、アミ族も餅米を重要な儀式の時に食べる。赤飯のような餅米を蒸したhakhakや、餅状にしたTorontoというものを食べている。現代ではそれらの料理が台東の名物となっている。

民族衣装と信仰

アミ族の民族衣装は色鮮やかで美しい。

初期の時代では、木の皮(繊維)やバナナの繊維を織り合わせて布を作っていた。
色は赤や黒色、白色、藍色、緑色など明るい色が使われ、快活なイメージである。

アミ族の中でも「頭目」と呼ばれる位の高い人物、巫女など神聖な仕事に携わる人物は長い上着を羽織り、民族衣装の帽子もその人物の階級を表す。
アミ族の人たちは天地万物には魂が宿っており、その魂が人や動物の形を成すと信じている。

天上には天神、太陽神、月神、地上には河神、海神、土地神、動物神、多神信仰の概念を持っている。

伝統信仰の他には、キリスト教の宣教師が布教したためキリスト教を信じる人たちもいる。

パイワン族

パイワン族の民族衣装 男女で違った衣装を身につける

総人口は104,382人。主に台湾の南に分布している。
パイワン族はの時代に外国と貿易の経験がある。彼らも独自の言語を話し母語はローマ字で表記される。キリスト教の宣教師が彼らの祖先に字を教えたためである。

パイワン族の高齢者の多くも、日本語を話し読み書きまでできる。

パイワン族の外見的な特徴は、皮膚は浅黒く目鼻立ちがはっきりとしている。体型は身長はあまり高くなく、年齢を重ねるごとに肥満体型になりやすいようである。身体能力が高く語学学習にも長けている。歌がうまいのも特徴の一つでとにかくハイスペックな民族である。

家族や血の繋がりを重んじ、団結力を重んじる。

彼らの伝統産業は農業と狩りである。米とアワを育て主食として食べる。アワを使って酒を作り、アワを蒸して肉を中に詰めた、cinavuというチマキのような食べ物を作る。これは絶品だ。

Cinavuは縁起物として食べられることもあり、「祝福を願う」という意味がある。

民族衣装

蛇の模様をあしらった柄

パイワン族の民族衣装は刺繍がとても美しい。刺繍の中には蛇が描かれているものが多く、猪や鹿のツノ、貝殻を使った装飾品はもはや芸術品である。

母から子、孫へと民族衣装は受け継がれる。パイワン族の中にも階級があり衣装を見るとどこの家の人物か特定することができる。下の階級の家系の者が、上の階級の家系の衣装を着ることは許されない。

多くの男性は刺青をしている。昔は家系図やその人物の家族についての物語を自分の体に刺青として彫っていた。

パイワン族の階級は5つある。

頭目(族長といったところか)貴族巫師と祭司(宗教儀式を執り行う家系)士族庶民である。

かつては階級を巡って部落ごとに多くの抗争や衝突があった。

年配者の体に見られる刺青

台湾政府の原住民への対応

台湾原住民は、学のない山の人々として蔑視され冷遇された時代があった。迫害された時代もあったようだ。

現在の台湾総統である蔡英文(さいえいぶん)は、それについて初めて謝罪した。
今では、原住民の文化を守る取り組みがなされている。各民族の部落には観光スポットがあり、その暮らしや文化、食生活などが体験できる。

それだけでなく日常生活でも原住民には色々な優待制度がある。例えば今回のコロナワクチンもそうである。原住民は優先的に順番が回ってきたようだ。

台湾人には結婚後に女性が男性の姓に変えるという習慣は基本的にはない。戸籍状は旧姓のままである。例えば台湾人の男性と原住民の血を引く女性が結婚したとしよう。彼らの子供は一般的には父親の姓を名乗るのだが、母親が原住民の家系である場合、子供は多くが母親の姓を名乗る。そうすれば優待が受けられるのである。

例えば高校受験、台湾人の子供と原住民の子供どちらも結果50点取ったとしよう。原住民の子供は原住民の身分というだけで80点取ったとみなされる。つまり上乗せ30点だ。これを使わない親はいないだろう。

台湾の16の原住民それぞれに歴史と文化がある。現在、多くの若者たちが伝統を守ろうとして言語や技術を学んでいる。

台湾に訪れる機会があったなら、ぜひ原住民の文化と伝統に触れてみてもらいたい。

 

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草の実堂編集部

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