海外

【台湾の合法ハーブ】ビンロウ(檳榔)の効果と危険性

檳榔(ビンロウ)とは

ビンロウとは、太平洋・アジアおよび東アフリカの一部で見られる椰子科の植物である。

ヤシの木よりも背が低いが、その姿からはほぼ見分けはつかない。

ビンロウ

画像 : ビンロウの木 wiki c

その実は「噛みタバコ」の様な使われ方をする。

台湾では合法薬物といったところであろうか。Wikipediaの中国語版では「台湾のガム」と記されている。

2002年台湾国民健康局の調査によると、国民に成人のうち男性は16.6%、女性は9.1%がビンロウを噛む習慣がある。つまり台湾全土で200万人がビンロウを噛んでいたということになる。

特に東部から西部にかけてビンロウを噛む人が多いという。

若者から労働者、知識層まで、いろいろな身分の人がビンロウを愛用している。

そしてビンロウ産業は台湾の二代農業経済作物となっており、多くの農家がビンロウを生産している。そしてタバコよりも価格が安いことから多くの一般市民にも好まれ、愛用されている。

台湾の田舎に行くと、派手なネオンのビンロウ店が町の至るとことに見られる。

なぜかビンロウ店は多くがガラス張りで、肌を露出気味な女性が夜遅く深夜まで販売している。

男性の購入者が多いからであろうか。

ビンロウ

画像 : ビンロウ店

そして道のあちらこちらにヤシの繊維の様な物が落ちているのに気づく。それは噛んだ後のビンロウで、繊維は飲み込む事ができず噛んだ後に吐き捨てなければならない。

その吐き捨てた繊維が町の景観を損なうことから問題となり、ビンロウと一緒に吐き出す用に紙コップを販売するようになった。それでも直接吐き捨てる人が多く、すぐに販売されなくなったという。

ビンロウを噛んでいる人も日常茶飯事に見掛ける。その口は赤く染まり、流血しているかのようにも口紅を塗っているかのように見える。

日本人からすると異様な光景である。

ビンロウの効果

画像 : 台湾で売っているビンロウ。2個包んだものは「双子星」と呼ばれるタイプ。wiki c

長距離トラックの運転手はビンロウを噛む人が多く、いくつかの効果がある。

主には「リラックス効果、気持ちを高める、満腹感を得られる」などである。

興奮作用があるので心拍数が上がり体が暖かく感じる。そしてタバコの様に習慣化し癖になる。

禁煙がかなり難しいように、禁ビンロウもかなり困難と言われている。

では、ビンロウはどんな味なのか?

「ビンロウを口に入れると、まずミントの様な爽やかな味がする。この爽やかさが終わり噛み続けていると苦味がでてくる。食べ終わった時は、眩暈に襲われたような感覚があり、酒に酔っているかのように心地よい。」

「ビンロウは特に味はしない。食べ始めると明らかに自分が興奮していることが分かる。頬は赤くなり、汗をかき始める。」

逆の効果もあるようだ。

「初めてビンロウを噛み、食べ終わった時に死にたくなった。まるで喉を鎖で繋がれているかのように不快な気分になった。」

味の感じ方や反応は人それぞれ違う様である。

檳榔の害

中毒性のあるものは、体に害を及ぼすものが多い。

ビンロウも例外ではなく、WHOに調査により発癌性のある物質の一種に指定されている。
喉頭癌や食道癌の原因になる他、ビンロウの繊維はとても荒く、噛み続けると口腔内の粘膜を痛める。

そしてビンロウは歯を傷める。着色もひどくビンロウを噛んでいる人はすぐに分かる。

ビンロウ

画像 : ビンロウ愛用者の口腔内

繊維によって歯は研磨され、どんどん小さくなる。そして歯は薄くなっていき虫歯ができやすくなる。

言わずもがな、歯周病の危険も大いにある。

体に有害なビンロウだが、現代のストレス社会でストレスを発散するため使用する人は多い。

この「合法薬物」は、今でも多くの人のストレスを和らげる一方、それらの人の身体を蝕んでいる。

関連記事 : 【台湾の合法ハーブ】ビンロウの数千年の歴史 ~神聖な植物だった

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 中国詐欺グループの手口について調べてみた 「電話詐欺、裏口入学詐…
  2. 『750年前の南宋時代ちまきが発掘』 端午の節句「ちまき」の起源…
  3. 台湾の新型コロナウイルス対策方法 「買い物の実名登録制度、感染者…
  4. 「更年期か?おばさん」SNSでの一言で罰金1万円。台湾の“公然侮…
  5. 伝説の5人の狙撃手たち 【戦場の死神】
  6. 台湾の社会問題とは 「高齢者社会と飢餓問題」
  7. モンゴルのトゥス・キーズと韓国のポジャギ 「母の愛を改めて知るア…
  8. ハワイ島 オーラが見える洞窟の行き方【マウナラニ】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

『或る女』のモデル、佐々城信子 ~「魔性の女」とされた波乱の生涯

大正時代、有島武郎が発表した小説『或る女』のモデルとなった女性・佐々城信子(ささき のぶこ)。…

三河一向一揆で大活躍!徳川家康に仕えた土屋重治の忠義と最期【どうする家康】

時は永禄6年(1563年)に勃発した三河一向一揆は松平家臣団を震撼せしめ、信仰と忠義の板挟みになった…

歴史から学ぶ、正しい謝罪方法とは? 「三木武吉、三遊亭円楽の見事な対応」

謝罪は難しい芸能人のスキャンダルが話題になるたびに「上手く切り抜ける方法は何だったのか」と考える…

【焼失と再生】戦火を超えた奈良のコスモス寺『般若寺』とその歴史

奈良県奈良市般若寺町に位置する般若寺。春の山吹、夏のアジサイ、夏から秋にかけてのコス…

後白河法皇は本当に「日本一の大天狗」だったのか? 「平安末期・権謀術策を用いて君臨」

鳥羽法皇から軽視された青年時代平清盛をして「日本一の大天狗」と言わしめたとされる後白河法…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP