中元普渡とは?
中元普渡(ちょんゆぇんぷぅとぅ)とは、農暦の七月の期間に台湾で行われるいわゆる宗教行事である。
日本のお盆のような感じだ。
古代民間信仰では、収穫したばかりの新しい穀物を先祖に捧げるものであった。
「中元節」は道教の教えであり、「お盆」は仏教のものである。現在ではその二つの教えが融合された形で「中元普渡」となっている。
台湾では、大々的にこの宗教行事が行われている。
個人で小規模に、寺廟ごとに大規模に行われる。その時期にはスーパーでもお供え物が販売されている。
日本ではだいたい和菓子や果物といったイメージだが、台湾ではポテトチップスやコーラ、カップラーメンなど、日本の感覚的には宗教行事には若干不謹慎と思わせるような物まで供えられる。
スーパーではこの時期、販売促進のため多くの新商品が出回ったり、安く商品が販売されていたりする。
筆者はこの宗教行事に参加することはないが、スナック菓子を買いだめする絶好の機会と思っている。
中元普渡の宗教行事には多くの決まりごとが存在しており、加護を得るため、災難を身に招かないためにその決まりごとを守っている。
今回は、その中の興味深いいくつかの禁忌を解説する。
好兄弟
中元普渡の時期には鬼の門(死者の世界の扉)が開き、先祖が人間世界に戻ってくるとされている。
なので「鬼」とか「霊」とか言う言葉は、無礼に聞こえるので使ってはならないのである。
この時期は「好兄弟」という言葉を使う。
意味は読んで字の如く、良い兄弟、親友といったところである。
拝む時には
「好兄弟、長い道すがらお疲れさまでした。ようこそおいでくださいました!どうぞお召し上がりください。我が家に平安が訪れますように」
と唱えるのである。
自分の名前を言ってはならない
一般的に寺廟で吉兆を尋ねる時や決め事をする時は、名前や生年月日、住所などを言って神に伺うという。
ところが、中元普渡の時には名前を言ってはならないのである。
名前を好兄弟に知られると、名前を覚えられ探し出されて訪問される可能性があるからだ。
鶏肉、豚肉、魚をどうやって供る?
お供えの食べ物は、どれも調理済みのものが使われる。
だが、調理済みであれば何でも良いと言うわけではない。例えば鶏肉と豚肉は皮を取り除いてはいけない。魚は鱗のあるもので丸ごと一匹、鶏肉もまるまる一匹を使うのである。
なぜ丸ごとかというと、もし一部がなければ好兄弟が「誰かがすでに一口食べたのでは?」と誤解してしまうためである。
これらの物を一つの大きめの机に並べて供えて拝む。
その時、机の上にきれいな水を入れた洗面器を置き、その端には新しいタオルを用意しておく。
そうしておけば、あの世から苦労してやってきた好兄弟達が、顔や手を洗ってから食事ができるのである。
好兄弟が食べないもの
スナック菓子からコーラまで供えてしまうことから、好兄弟は「なんでも食べるのでは?」と思われがちだが、供えてはいけないものもある。
●レモン 人生が酸っぱくなってしまう。食べれば涙が止まらない。
●ゴーヤ 中国語では苦瓜といい、苦い人生になってしまう。中国語で苦労することを吃苦といい、苦い物を食べると表現される。
●レンブ 日本ではあまり馴染みのない果物だが、中国語で蓮霧と呼ばれ、霧がかかった人生になってしまう。モヤモヤが晴れないといった意味になる。
●骨が多い魚 骨が好兄弟を刺してしまうことを懸念する。
●種が多い果物 食べるのが面倒くさい。好兄弟が怒ってしまわないようにする。
●種や殻付きピーナツ 好兄弟が皮を剥くのを面倒くさがる。準備した者に誠意がないとみなされ、無礼な者と判断される。
この時期にはテレビなどでも、「一緒に好兄弟をお迎えしよう!」と、わりとPOPな感じのCMが放映される。
「お供えにはコレだね!」のような少々軽めのニュアンスである。
日本人は宗教行事に対しては厳かで神聖なイメージを持ちがちであるが、台湾では少し違うようである。
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